マイクロソフト、ITベンチャー企業を対象とした支援策を強化

経営関連のトレーニング講座のほか、最新技術のサポートを無償提供

今回発表されたITベンチャー向けの支援策
デベロッパー&プラットフォーム統括本部 ビジネスインキュベーション(LSE)シニアマネージャーの長井伸明氏

 マイクロソフト株式会社は12月1日、ITベンチャー企業向け支援活動において、ビジネスマネジメントのスキルアップ講座を無償提供する「マイクロソフトイノベーションアカデミー」、および同社の最新技術のサポートと検証環境を提供する「早期採用支援」を、同社大手町テクノロジーセンターで開始することを発表した。2010年1月より開始する。

 マイクロソフトイノベーションアカデミーは、ITベンチャー企業を対象に、最新技術や事業計画、財務管理、マーケティングなど、経営に関するトレーニング講座を無償で提供するもの。毎月2コースを開催し、1コースあたり30名の定員となる予定。

 早期採用支援は、同社大手町テクノロジーセンターでのソリューション検証環境と、最大1カ月間のメールベースのソリューション開発サポートを無償で提供するもの。同社のテクニカルセミナーを受講した企業の中から、面接により対象企業を選定する。

 同社デベロッパー&プラットフォーム統括本部 ビジネスインキュベーション(LSE)シニアマネージャーの長井伸明氏は、「これまでも、スタートアップ企業に対して、開発環境を無償で提供するプログラムなどを提供していたが、会社運営といったテクニカルな部分以外の支援を求める企業も多く、そうした企業を対象にビジネス関連のトレーニングを今回追加した」と、これまで提供されていなかった技術面以外のサポートを強化したと説明する。

最高技術責任者の加治佐俊一氏

 同社最高技術責任者の加治佐俊一氏は、「マイクロソフトでは、以前よりベンチャー企業の支援を大事だと考えており、特に現在のように景気が悪いときほどベンチャー企業の成長の機会が広がるとみている。また、Windows 7など新しいテクノロジーにより、来年末までに関連製品やサービスにおいて2.3兆円の市場が生まれるという予測もある。そのほか、Windows Azureにより、クラウドコンピューティングの世界が広がるなど、さまざまな動きが見込まれている」と、新技術による新たな成長の機会が生まれると指摘。

 「これまでITベンチャーに対する支援策として、開発統合環境の無償提供から、パートナーネットワークまで、さまざまな支援策を展開しており、今回発表した2つの支援策は、既存の支援策のすき間を埋めるもの」と述べた。

ジースポート代表取締役の黒田篤氏
埼玉県創業・ベンチャー支援センター 所長の鈴木康之氏

 説明会には、同社のITベンチャー支援策を活用した株式会社ジースポート代表取締役の黒田篤氏も出席。ジースポートは、昨年開催されたITベンチャー企業への支援施策「マイクロソフトイノベーションアワード2008」の最優秀賞を受賞した企業で、今回Windows 7のマルチタッチ対応製品を開発している。「製品開発にあたり、マイクロソフトから早い段階でWindows 7の情報を提供していただいた。また、米国で開発者から話を聞く機会も得られ、どのような機能が活用できるかを知ることができた」と、新技術の早期情報提供が有効であったと紹介。「今後、Windows Azureなどのクラウドアプリケーションを活用し、アプリケーションの幅を広げていきたい」と述べた。

 また、埼玉県で起業支援を行っている、埼玉県創業・ベンチャー支援センター 所長の鈴木康之氏も出席。「創業するなら埼玉」をキーワードに、これまでに1149社の創業支援を行っている。「われわれは、会社設立時の手続きや税金といった面で創業を支援できるが、技術的なものなどは民間の活力を生かしている。今回のようなマイクロソフトが提供する技術やネットワークは、創業したばかりの企業にとって非常に有効なもの。特に資金繰りが厳しいときに無償で開発ツールを支援するのはありがたい。こうした取り組みを生かし、今後も世界をリードするような企業を支援できればと考えている」と、起業支援を行っている立場から、マイクロソフトの取り組み内容を評価した。


(福浦 一広)

2009/12/1 17:26