「データセンターとクラウドを単一アーキテクチャで」、マイクロソフトがSQL Serverのロードマップを説明

SQL Server 2008 R2のCTP 11月版を提供開始

サーバープラットフォームビジネス本部 業務執行役員 本部長の五十嵐光喜氏

 マイクロソフト株式会社は11月25日、次期データベース製品「SQL Server 2008 R2」のCTP 11月版を、同日より提供開始すると発表した。あわせて報道向けの説明会を開催し、サーバープラットフォームビジネス本部 業務執行役員 本部長の五十嵐光喜氏らが、SQL Server製品群のロードマップに関して説明を行った。

 マイクロソフトではこれまで、オンプレミス型の環境向けにSQL Serverを提供してきた。今後もそれは変わらないが、今後はクラウド環境向けのSQL Azureを加えた2本立てで展開。「SQLというデータベースプラットフォームを、クラウド、データセンターの双方に対してシングルアーキテクチャでお届けする」(五十嵐氏)方針で、製品開発を進めている。両製品の間ではほぼ完全な形で互換性を確保するため、自社のシステムがクラウドに展開しても、オンプレミスを中心としたまま運用を継続しても、双方を併用しても、きちんと対応できる点がユーザーのメリット。この点を強調した五十嵐氏は、「シームレスにテクノロジーを展開するため、今の投資を確実に保護できる点が強みだ」と話している。

 このうち、従来同様のソフトウェア製品として提供されるSQL Server 2008 R2では、クラウドとの互換性を確保するほか、プライベートクラウドへの対応を図る目的で、複数のデータベースサーバーを仮想的なコンピューティングプールとみなし、空いているサーバーに自動的に処理を割り振る「アプリケーション/マルチサーバ管理機能」を搭載。さらに、「高品質・高信頼性」「拡張性」「セルフサービスBI(ビジネスインテリジェンス)」の3点が大きく強化された。

今後のロードマップクラウドとオンプレミスでの互換性を確保する
大規模環境と超大規模並列処理をサポートする
Excel 2010と連携したセルフサービスBI機能を利用できる
予定されているラインアップ

 このうち「拡張性」では、最大256論理プロセッサまでのスケールアップに対応したほか、大容量メモリをサポート。スケールアウトについても、コンピュートノードを並列動作させる超大規模並列処理(MPP)アーキテクチャにより、数百TBクラスの大容量データであっても、効率的な処理を行えるようにしている。このMPPアーキテクチャは、Microsoftが買収したDATAllegroの技術を利用し、「Madison」の開発コード名で開発が進められていたもので、アプライアンス向けの最上位エディション「Parallel Data Warehouse」において提供される。

 また「セルフサービスBI」では、Excel 2010との組み合わせでインメモリBIであるPowerPivot機能(開発コード名:Gemini)を提供する。この特徴は、「エンドユーザー自体が、意志決定に必要なデータ分析を行える」(北川氏)点だが、機能自体も簡易なものでなく、オンプレミス、クラウドのSQL Server製品群やExcelデータシートなど複数のデータソースから必要な情報を取り込んでワークブックを作成し、横断的に分析可能。Excelの上限である100万行を超えるデータの分析も可能になっている。懸念されるセキュリティについても、SharePoint Server 2010との併用でワークブックをセキュアに共有できるようにするほか、管理者用のダッシュボードを用意し、適切な管理を行えるようにするとした。

 こうしたPowerPivotを提供する意図を、五十嵐氏は「SQL Serverのレポーティングサービス自体でも相当なことができるが、使い慣れたExcelを使って、さらなる高度な分析をしたい、エンドユーザー自身でも分析したい、といったニーズに対応するための機能だ。Excelはほとんどのお客さまがお使いであろうと思っており、その投資を最大限に生かすべく、こうした機能を追加コストなしで提供する」と説明。その価値を強調する。

 「高品質・高信頼性」については、製品自体の完成度を高めることはもちろん、CQI(Center of Quality Innovation)と呼ばれるパートナーとの実証作業を強化し、ミッションクリティカル分野での導入を推進する。具体的は、SQL Server 2008ではアウトプットされた資料を共有することに主眼がおかれていたのに対し、今回は検証に用いた設備を常設。「お客さまやほかのパートナーが同じように体験したり、案件に即して構成を少し変更して検証したり、といったことが可能になる」(五十嵐氏)とした。

 なおSQL Server 2008 R2のラインアップについては、アプライアンスとして提供される最上位の「Parallel Data Warehouse」、最大256論理プロセッサをサポートし、無制限の仮想化インスタンスが提供される「Datacenter」、基幹業務システム向けの「Enterprise」、部門システム向けの「Standard」、小規模システム向けの「Workgroup」、公開Webシステム専用の「Web」が用意される。提供開始は、2010年上半期中の予定だ。

 一方のSQL Azureはデータベース容量10GBの「Business」、同1GBの「Web」がラインアップされ、2010年2月より商用課金が開始される予定である。




(石井 一志)

2009/11/25 14:26