富士通、次世代クラウドサービスの拠点となる「館林システムセンター」を公開


館林システムセンター 新棟の外観。ハザードマップに従い、万が一洪水が起こった際にも水没する心配がない高床式建物となっている
サービスプロダクトビジネスグループ グループ長の石田一雄執行役員上席常務

 富士通株式会社は11月20日、新たにオープンした「館林システムセンター新棟」をマスコミ向けに公開した。

 館林システムセンターは、1995年、アウトソーシングビジネスを提供するための拠点として開設。現在ではデータセンターサービスを始め、SaaS/ASPサービス、各種業務を代行するBPOサービスなど、多岐にわたるアウトソーシングサービスの拠点となっている。

 サービス事業を担当するサービスプロダクトビジネスグループ グループ長の石田一雄執行役員上席常務は、富士通のデータセンター事業を次のように説明する。

 「富士通におけるサービス事業は、SIとインフラサービスなどを含み、2008年度売り上げの48%を占める1兆2000億円規模の事業となっている。そのうちデータセンターサービス事業の売り上げは1900億円で、大々的にはお話ししていないが、クラウドサービスもすでにスタートしている。ストックベースの長期成長型事業であるデータセンタービジネスは、為替リスクもない不景気な時期にも強い事業モデル。事業運営においてはツールを使って運用の効率化を行い、稼働台数は1995年当時の1600台に比べ15倍となっているのに対し、要員数は400人から3倍にまでしか増えていない。現在、3000社のお客さまに利用いただいており、企業合併が行われているにもかかわらず、客数は減っていない。10年以上連続利用されているお客様も多く、調査会社IDC Japan調べでは、5年連続国内ナンバー1シェアを獲得している」

富士通のサービスビジネス事業概況データセンタービジネスの状況と特性富士通のデータセンター事業の特性

 新設の館林システムセンター新棟は、次世代クラウドサービスの基盤センターとしての機能を持ち、第1弾として約1000台のサーバーで構成されるサーバーファームを設置しているが、施設は今後順次拡張していく計画だ。既存のデータセンターには汎用機を利用したホスティングサービスを実施しているが、新施設では汎用機は置かずに次世代データセンターとしての機能拡充を推進。これまでのデータセンター機能に加えSaaS、IaaS、クラウド、企業内クラウドなどへ対応するとともに、耐震性、高セキュリティ、環境への配慮などを行った施設となっている。

 敷地は12万6000平方メートルで、延床面積約2万3000平方メートル、地上5階地下1階。屋上は太陽光発電施設、冷却塔を設置、3階から5階がサーバールーム、1階と2階は電源設備と冷熱源設備、地下は免震設備が設けられている。

 サーバールームは3600ラックに相当する床荷重1.2トン、天井高3000mm、床下820mmで、最大ラック電力供給量20kVAを実現。ブレードサーバーに代表される高集積サーバー利用に配慮した施設となっている。

 セキュリティポイントは最大7カ所設けられており、入退室に際しては静脈認証とRFIDによる認証、入室後もRFIDを使って人の位置管理を行い、サーバーが納められたラックについても電気錠を配置するなど、最新の物理セキュリティ装置を実装している。

 環境についても配慮し、屋上には太陽光発電装置を設置。UPS、冷凍機、変圧器といった高効率電気設備の装備、サーバー室内の熱流体シミュレーションにもとづく最適なレイアウト設計、富士電機システムズ株式会社と共同で開発した、サーバーラックごとの電力、温度、風量の見える化と最適な空調制御を実現した「データセンター省エネ運転マネジメントシステム」や局所空調システム(特許出願済)を導入。電源や空調などITファシリティにおける電力使用量を、既存センター比約40%削減した。

次世代データセンターの概況最新鋭の高集積・高セキュリティの設備を備えている館林システムセンター新棟の環境配慮策
次世代データセンターの概況新棟の競争力の源泉となるソリューション
全世界にある富士通のデータセンター概況

 サービスの提供価格については、これまで富士通が得意としてきた高品質の日本企業向けのサービスだけでなく、米国でamazon.comが提供しているような標準的なサービスを低価格で提供するものなど、幅広いサービス価格を提供する予定だ。

 売り上げについては、今年度のデータセンター事業全体で10%伸張を見込んでおり、アウトソーシング事業全体では今後3年から5年で、1兆円に欠ける程度の規模にまで拡大していく。

 オープン直後ではあるがすでに3分の1のスペースは受注があり、通常は5年と言われる投資額をもっと前倒しで回収する見込みだという。

入館する際には、受付での手続きが必須となるサーバー室への入場にあたっては手のひら静脈認証によってチェック。撮影したデータと静脈認証を行った人数に差異がないかも確認し、誰かと一緒に入室する「共連れ」を回避する
屋上には太陽光パネルを設置。水平タイプのほかに、南の壁には厚さ1mmと薄型で軽量な壁に設置するタイプの太陽光発電パネルも設置され、屋上スペースを有功に活用し、自然エネルギー発電を実施している屋上には、サーバー室で暖められた空気を外気によって冷却し、エネルギー消費量を節約する冷却塔も設けられている館林システムセンターの東門入口部分の壁面には、ヒートアイランド対策として溶岩をスライスし、水を蓄えることで外気を冷却する配慮がなされている
地下は免震対策として、阪神大震災の1.5倍強の地震にみまわれてもシステムが安定稼働する対策がとられている新棟の司令部にあたる統合管制室は、4交代制で30人のスタッフが常時サーバーおよび館内の監視を行う3階から5階まで設けられたサーバー室では、既存施設の2.5倍となる20kVAの最大電力供給量を実現。5階のサーバー室は、3つあるうちの2つが既に稼働している
新棟はITを活用することで、IT機器、ファシリティにどの程度のエネルギーを使っているのか、それが時期によってどう変化しているのかなどを見える化。サーバーを冷却する際に利用するエネルギーの占める割合を減らすため、最適な空調設備を実現する最適な空調を実現する熱流体シミュレーションに基づいたサーバーラック設置を実現しているセンサーによって熱、風を監視し、冷風、熱風を効率的に処理するサーバー室床下の高さは82cmで、サーバー室奥に設置された空調室から出た空気の通り道と、電力と通信ケーブルを埋めた部分に分離されている
サーバーラックの温度と湿度については、サーバー室に設けられたセンサーによって常時監視されているサーバー室から出た熱を効率的に処理するためにターボ冷凍機を設置。8本の空調用冷水管を通って冷却する仕組みとなっている。ターボ冷凍機は1台で1フロア分を冷却するパワーを持ち、現在は2台が稼働中。今後の設備拡張を見越して、5台分の追加設置スペースを確保している750kVAのサーバー用UPSが6台設けられ、万が一電力会社からの電力供給が止まっても、サーバー及び冷却設備を動かす仕組みとなっている
電力供給トラブルが起こった時の対策として、敷地には自家発電用オイルタンクも用意されている



(三浦 優子)

2009/11/24 00:00