日本IBM、100ノード超の大規模DB環境を実現する「DB2 pureScale」

ノード追加による性能劣化を防ぐ新技術

ソフトウェア事業インフォメーション・マネジメント事業部長の下垣典弘氏

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は11月12日、大規模データベース(DB)管理用ソフト「IBM DB2 pureScale Feature for DB2 9.7 Enterprise Server Edition(以下、DB2 pureScale)」を発表した。12月11日より出荷開始で、参考価格は268万2000円(税別)から。

 DB2 pureScaleは、100ノード以上の超大規模DB環境でも高い処理能力を発揮するためのDB管理ソフト。「IBM Power 550 Express」「IBM Power 595」、および「AIX」のプラットフォーム上で稼動し、「DB2 9.7」のアドオンとして提供される。

 ソフトウェア事業インフォメーション・マネジメント事業部長の下垣典弘氏は、同製品の背景を次のように説明。「昨今、トランザクション処理が爆発的に増加している。それと同時に、インターネット拡大でサービスの停止は機会損失につながり、ゼロ・ダウンタイムでの事業継続ニーズが高まっている。そうした中、シェアード・ディスク型アーキテクチャで処理性能のスケールを図ってきたが、この技術には課題が多い。例えば、『ノードを追加しても思ったとおりスケールしない』『ディスク共有型であるにもかかわらず、データ分割しないとスケールしない』といった課題が浮き彫りになっており、この限界を超える新技術が求められていた」。

DB2 pureScaleの3つの特徴
100ノード以上でも拡張性を実証済み

 一般的に、分散コンピュータ環境において、DBの並列処理は4~8ノード程度が多く、10ノードを超える構成では、処理能力の劣化が著しいという。 DB2 pureScaleでは、メインフレーム環境で蓄積したノウハウに基づき、大規模構成でも高い処理能力を実現したのが特徴。検証では、「16ノードでも95%、100ノードを超える超大規模構成でも80%の性能維持を達成した」(下垣氏)という。

 キーテクノロジーとなるのが、ロック情報と共有ページを一元管理する技術。「Coupling Facility(CF)」のメモリ上にこれらの情報を集中化することで、スケールした際のオーバーヘッドを減らしている。また、ノード間通信に「Remote Direct Memory Access(RDMA)」を採用。データノードからRDMA経由でCFのメモリを直接更新可能にしたことで、超高速ノード間通信を実現したという。

 このほか、ノード追加時にアプリケーションを変更停止せずに拡張できるのがメリット。DB2 pureScaleは、データを処理するノードとそれらを管理するノードで構成される。管理ノードに、クラスタ管理と並列アクセスに適したソフト群「PowerHA pureScale」を組み込むことで、「アプリケーションのコード修正もDBの再チューニングも不要なノード追加を実現した」(同氏)という。

 加えて、処理ノードが障害を起こした場合でも、アプリケーションに影響を与えることなく、別ノードにワークロードを再分配することが可能。ノードの修理が終わったあとも迅速に元通りに復旧できる。「障害が発生したノードでロックするのはアップデート中のデータのみ。こうすることで復旧時間の迅速化が実現しており、復旧目標時間20秒未満を達成している」(同氏)という。

 用途としては、「ミッションクリティカルな業務やダウンタイムがビジネスロスに直結する業務」「ビジネス変化に柔軟に対応するシステムを求める企業」(同氏)とし、具体例として、一時的にトランザクションが急増する株・為替取引などの環境を挙げた。

拡張性と連続稼働のベースとなるテクノロジアプリケーションを変更停止せずに即時に拡張障害からの即時復旧

他社ソリューションとの比較

 販売施策としては、全世界で200人の販売体制を構築。従来の営業体制のほか、9月発表の「Oracleからの移行支援サービスオフィス」も窓口にする。また、大規模なシステム構築を得意とするパートナーへ技術研修を行うほか、Oracle対応のソリューションを持つパートナーへのポーティング支援なども今後展開する予定とのこと。

 参考価格は、PowerHA pureScale込みで268万2000円(税別)。12月11日よりダウンロード提供を、2010年1月15日より製品出荷を開始する。なお、使用量に応じた日単位の課金体系(年間最大90日まで)も提供する。




(川島 弘之)

2009/11/12 16:46