米Juniper、“Junos”を冠したソフトプラットフォームやプロセッサを展開

アプリケーション実行環境や統合クライアントなどを順次提供

Junosのソフトウェア体系が拡張される
Junos Spaceの構成の概要
Junos Space Business担当副社長兼ゼネラルマネージャー、マイク・ハーディング氏

 米Juniper Networks(以下、Juniper)は10月29日(米国時間)、新しいブランディング戦略を発表した。これまでネットワークOSとして展開されてきた「Junos」の名称をさまざまな製品、プラットフォームに冠し、幅広く展開する。具体的なコンポーネントとしては、新しいソフトウェアプラットフォーム「Junos Space」と、統合ネットワーククライアント「Junos Pulse」、プロセッサシリーズ「Junos One」、チップセット「Junos Trio」などが含まれる。

 Junosは、Juniperのルータやスイッチ「EXシリーズ」、セキュリティプラットフォーム「SRXシリーズ」などに共通して採用されているネットワークOS。ユーザーから見ると裏方の存在であり、Junosの名称を付けた製品は存在しなかったが、今回はさまざまな製品、コンポーネントにその名称が付加されることになった。

 そのうち、Junos Spaceは、Junosベースの製品に対して付加価値を提供するためのソフトウェアプラットフォーム。ネットワークアプリケーションを開発するためのJavaベースのSDK、オープンなAPI、実行環境となるアプライアンス、アプリケーションが含まれており、アプリケーションの開発から実行までを容易に行えるようになる。

 リリース時点では、MPLSのパス設定を容易に行える、ルータの設定支援ツール「Ethernet Activator」、ネットワークの可視化を支援するツール「Route Analyzer」、ユーザーのネットワーク情報をJuniperが吸い上げて解析するAdvanced Insight Service向けのゲートウェイソフト「Service Now」、といった3つのアプリケーションが用意された。このうち、Route AnalyzerはPacket Designというサードパーティによって開発されており、Juniper以外のベンダーからもアプリケーションを提供することで、JUNOSユーザーのメリットを拡大していくという。また、2010年第1四半期に追加される4つを含め、アプリケーションは継続して追加されるとしている。

 Junos Space Business担当副社長兼ゼネラルマネージャー、マイク・ハーディング氏は、「どこの企業にも、経験や技術が優れた管理者がいるわけではない。Junos Spaceは、ビジネス上の問題点を解決するために、そういった面を補完し、管理者を支援できるように作られた。お客さまやパートナーのITプロフェッショナルが使いやすいように作ってあり、効果的に利用できるだろう」と、提供の意図を説明した。

 利用にあたっては、アプライアンスを購入した上で、アプリケーションごとに追加料金を支払ってライセンスをアクティベートする形をとり、アプライアンスはクラスタ構成による拡張にも対応する。また、アプリケーションを管理するためのポータルも用意され、ユーザーは各アプリケーションの管理を一括して行えるメリットも提供されるとのこと。製品の提供は、年内にも開始される。

Junos Spaceで提供されるアプリケーションの1つ、Route Analyzerはパートナー企業が開発した。MIB情報を吸い上げて、ネットワークで何が起こってきたかを解析するとともに、将来の予測も可能という今後も、定期的にアプリケーションが追加される予定だ
Junos Pulseでは、さまざまなクライアント向けのソフトウェアを統合して提供する

 2つ目のJunos Pulseは、新しい統合ネットワーククライアント。「SAシリーズ」と連携するSSL-VPN、「UAC」ソリューションと連携するネットワーク検疫、「WXシリーズ」と連携するWAN最適化といった、Juniperが提供しているクライアントソフトウェアの機能を統合している。

 これについて、ハーディング氏は、「ウイルススキャンやエンドポイントのセキュリティなど、ほかのアプリケーションも統合可能。エンドユーザーが、ストレスなくアクセスできるようにするためのもので、これさえあれば、ほかには何もいらなくなる」と、ユーザーにとってのメリットを説明した。なお、製品ラインを複数持つベンダーでは、エンドユーザーの負担や管理負荷を軽減するために、エンドポイント製品の統合が盛んに行われており、Junos Pulse提供の背景にも、そういったベンダーと同じ意図があると見られる。

 また、プロセッサシリーズのJunos Oneと、そこに含まれるJunos Trioチップセットについては、「Junos」という製品ブランドがハードウェアコンポーネントに付けられたという点で、非常に興味深い。このうちJunos Oneは、これまで提供してきたプロセッサを再ブランディングしたもの。同ブランドの最新製品として、より多くのサブスクライバ(加入者)、サービス、帯域幅に対応し、それらを動的に調整可能な「3Dスケーリング」技術を利用できる、Junos Trioが発表された。なお、Junos Trioを搭載したルータ製品としては、イーサネットアクセスルータ「MXシリーズ」のエントリーモデル「MX80」と、MXシリーズ用のモジュラーカード3モデルが提供される。




(石井 一志)

2009/10/30 09:00