「FCoEなどの最新技術こそ発展のチャンス、知名度向上のための努力も」-QLogic


コーポレートコミュニケーション担当シニアディレクターのSteve Zivanic氏(右)と、アジア太平洋地域セールス担当副社長のMartin Darling氏(左)
QLogicのポートフォリオ

 「ファイバチャネル(FC)のホストバスアダプタ(HBA)や、iSCSIコントローラなどに焦点を当ててきたが、今後は幅広いラインアップへ広げていきたい」―と語るのは、QLogicのコーポレートコミュニケーション担当シニアディレクター、Steve Zivanic氏だ。実はQLogicでは、これら以外にも、FCoE(Fibre Channel over Ethernet)のHBAにあたる統合ネットワークアダプタ(CNA)や、iSCSIルータ、SANスイッチ、HPC向けのInfiniBand製品など数多くのラインアップを持っている。今後は、これらの製品を積極的に拡販していくというQLogicに、最新状況と戦略を聞いた。

 実は、「最新技術こそ当社のチャンス」(Zivanic氏)なのだという。例えば、FCoEのCNAでは、他社にないユニークな特徴をQLogicの製品は持っている。FCoEは、インターネットや社内LANなどに接続するネットワーク、サーバー間のインターリンク、ストレージへのアクセスを一本化できるメリットが生まれることから、データセンターへの導入などで注目されている分野だが、適用する領域が広い分、技術的なバックボーンもより広いものが要求されてくる。

 Zivanic氏はこれを踏まえた上で、「競合ベンダーで、必要とする技術をすべて持っているところは少ない」という点を指摘。その上で、「QLogicでは、2001年からEthernetドライバを取り扱っているほか、FCでも15年の経験があり、ソフト、チップがそろっているため、すべてを統合したワンチップのCNAを作れる。また、対応する環境も幅広い」と述べ、自社の強みを強調した。さらに、IBMやNetAppといったハードウェアベンダーにOEM提供している実績を引き合いに出し、「日本のベンダーも同じような技術を取り入れ、市場シェアをつかんでいただきたい、と思っている」とも話す。なお、FCoEの市場については、調査会社の市場予測を上回る勢いで導入が進むと予測しているとのことで、今後の売り上げへの大きな貢献を期待しているという。

 一方、売り上げの多くを占めるエンタープライズ向け以外では、HPC分野でのビジネスにも力を入れているという。この中で大きなウエートを占めるのがInfiniBandのソリューションで、IBMがHBAの「12000シリーズ」やQDR(40Gbps)スイッチをOEMで利用し、ビジネスを拡大している。

EthernetとFCの双方で高い技術を持つからこそ、FCoEでも強みを発揮できるというInfiniBandのソリューションが、IBMに採用されている
NetXenの買収で得た技術などを利用し、CNOMを提供

 また3つ目のソリューションとなるのが、インテリジェントな10Gigabit Ethernet(GbE)アダプタだ。QLogicでは、4月に半導体ベンダーのNetXenを買収しているが、ここは、「10GbEのROMでは世界一の企業」(Zivanic氏)であり、その技術を利用してマザーボード向けのチップ「CNOM(Converged Network on Motherboard)」を開発した。これは、EthernetとFC、iSCSIの機能をシングルチップに収めたもの。10GbE×2、GbE×4という高密度のインターフェイスを提供できるのが特徴で、「競合では2~3以上のチップを利用しないと提供不可能」(Zivanic氏)とのこと。また同氏は、「日本では小型化を目指しているベンダーが多く、この技術を活用できるだろう」と述べている。

 では、こうした製品を展開する、国内のビジネスの体勢はどうか。ビジネスを拡大するためには、QLogicがさまざまな製品を提供できるという点をまず知ってもらうことが重要になるが、その周知のため、「日本でのスタッフを増やし、サービス体勢を整え、物流やオペレーションの効率を上げ、そして関係者からのフィードバックを吸収していきたい」(アジア太平洋地域セールス担当副社長、Martin Darling氏)という。きちんとした検証、サービス提供の能力を持った上で、市場、OEM先へのメッセージを発信する、というわけだ。

 また、「米国や欧州で成功しているからといって、日本で成功するとは限らない。日本向けの特別なコンテンツが必要と考えており、専用のマーケティング部隊を投入し、複数の手法で、当社が何を提供できるかを、はっきりと各市場に伝えていきたい」(Darling氏)との考えも強調する。

 具体的には、前述したように「扱う製品の幅が大きく広がったことを、はっきりと伝える」ほか、FC製品での長い実績をアピールする考え。「FC製品を扱う競合でも、スイッチは古くからやっているが、アダプタはまだ歴史が浅いところもある。当社はFCスタックに関して15年の歴史があり、さまざまなOS、環境のサポートについて実績がある。こうした点を伝えていきたい」(Darling氏)とした。また、「競合は予測値でスペックを示しており、実測した性能は低くなりがち。しかし当社はもともとエンジニアが設立した企業であり、実際に近い数字を提供できる。日本市場では、きちんとした技術、事実を持っていることも示していく」とも話している。

 なおDarling氏は、キャンペーンの例として、FCスイッチ分野での取り組みを挙げた。これは、FCスイッチを購入すると無償で管理ソフトを提供するというもので、これによって「5%のシェアを10%にまで拡大したい」(同氏)としている。


(石井 一志)

2009/10/9 13:00