ITコア、「Amazon EC2より安い」仮想化ホスティングサービス「GS10」

サーバー、ストレージ、I/Oの全層を仮想化

ITコア 代表取締役社長の山田敏博氏

 株式会社ITコアは10月1日、クラウド仮想化ホスティングサービス「GrowServer2010(以下、GS10)」を発表した。11月1日より提供開始する。

 GS10は、先進的な仮想化技術を採用したクラウド仮想化ホスティングサービス。「VMware vSphere 4」、データコアのストレージ仮想化ソフト「SANsymphony」、シーゴのI/O仮想化コントローラ「Xsigo VP780」を使用することで、サーバー・ストレージ・I/Oの全層で仮想化を行ったのが特徴。ITコア 代表取締役社長の山田敏博氏によると「全層仮想化したホスティングサービスは世界初」という。また高速化・高信頼化に加え、従来サービス「GS9」の1/5の低価格を実現したのも特徴だ。

サーバー、ストレージ、I/Oの全層を仮想化

データセンターにはビットアイル第4センターを採用
システム構成

 サーバーの仮想化にはVMware vSphere 4を採用。ハードウェアには、6コアOpteronを搭載した「HP ProLiant G6」を使用し、高速性かつ高信頼性を実現。一方、仮想化環境に欠かせない共有ストレージには、専用ディスクアレイなどのアプライアンス製品ではなく、データコアの「SANsymphony」で仮想プール化された汎用プラットフォームが利用される。

 SANsymphonyは、IAサーバーとWindows Server OSをベースにしたストレージを仮想化する製品。すべての容量を1つのプールに見せかけ、無停止での容量増設を可能にする。専用ディスクアレイを使う際のように、システム停止による影響範囲や難しいサイジングを考慮する必要がなく、「完全にオープンなストレージ選定を実現する」(データコア セールスアカウントディレクターの片山崇氏)という。GS10では、2台のSANsymphonyをFibreChannelで接続。それぞれにぶら下がるディスクで筐体間コピーを行い、さらに1日1回スナップショットを実行することでディスクの三重化を実現している。

 そしてサーバー、ストレージそれぞれのI/OをXsigo VP780で仮想化する。仮想化環境ではケーブリングの複雑さが1つの課題として指摘されている。物理サーバー上に複数の仮想マシンが稼働するとき、その数に応じてI/Oも多く必要となるからだ。VP780では20Gbps InfiniBandでI/Oを集約。物理サーバーあたり32ポートの仮想インターフェイスを提供することで、すっきりとしたケーブリングを実現する。

 仮想I/O環境では、NIC/HBAのサーバー間移行やオンデマンド増設のほか、1本のケーブル内で論理的にチャネルを分けることを可能にする。このため、物理サーバー上の仮想マシン、アプリケーション、あるいは顧客ごとに帯域制御を行い、CIR(最低保障帯域)/PIR(最大使用可能帯域)の設定と優先制御を行うことができる。

 ストレージに対する接続もすべてXsigo VP780を経由させる。2台のSANsymphonyへIP over InfiniBandを通して10Gbps iSCSIで接続。これによりサーバー、ストレージ、I/Oの全層における仮想化を実現している。

 全層仮想化によるメリットは、拡張の柔軟性、無停止のメンテナンス、InfiniBandによるパフォーマンスなどが挙げられる。

Xsigo VP780の概要I/O統合によりシンプルな構成・運用を実現。すべてをリモートから集中管理することもI/Oの統合、そして仮想化。アプリケーション、顧客ごとの帯域を保証

SANsymphonyの概要仮想サーバーと組み合わせることで、「I/Oの無停止」「高パフォーマンス」「ストレージの柔軟性」「容量の節約」「低価格」を実現するGS10における仮想ストレージ構成

Amazon EC2に匹敵する低価格

4種類のモデルを用意

 基本サービスメニューは、メモリ1GB・CPU1コア・実効30GB HDDで月額1万円(税別)の「S1モデル」、メモリ2GB・CPU2コア・実効30GB HDDで月額2万円(同)の「S2モデル」、メモリ4GB・CPU2コア・実効30GB HDDで月額3万円(同)の「S4モデル」、メモリ8GB・CPU4コア・実効30GBで月額5万円(同)の「S8モデル」の4種類。初期費は無料で、1カ月単位で利用可能。

 さらにGS9時代には有料で提供してきたオプションサービスも、ほぼすべてを無償化する。ファイアウォール、負荷分散、回線利用料、24時間監視、各種設定作業をすべて無料とし、ディスク容量追加も1万円/実効10GBから1万円/実効100GBに低価格化している。

 低価格の証明としてITコアの山田社長は、Amazon EC2との比較を紹介。「Amazon EC2では、1ドル=90円レートで換算すると、メモリ1.7GB、CPUコア1で6480円/月。加えてトラフィック量やディスクI/O量などに応じて従量課金がかかる。これに対してGS10のS1モデルは1万円/月で、従量課金は(HDD容量を増やすとき以外)一切必要ない。無償化したオプションサービスまで考慮すると、日本のホスティングで初めてAmazon EC2より低価格を実現している」とした。

 ITコアでは、11月1日のサービスイン以降、12月末までに仮想マシン数にして200台まで実績を増やし、2010年には1000ユーザー、仮想マシン3000台、月間6000万円の売り上げ規模を計画している。

GS9から1/5の低価格化を実現オプションサービスもほぼすべて無償化したオプションサービスも考慮するとAmazon EC2よりも割安





(川島 弘之)

2009/10/1 16:37