米CitrixクロスビーCTOに聞く、クラウドインフラでXenを利用するメリット


 ハイパーバイザー「Xen」を開発するオープンソースコミュニティ「Xen.org」は8月31日(米国時間)、Xen Cloud Platform(XCP)イニシアチブを発表した。企業内のプライベートクラウドと、Amazon EC2、Rackspace Cloud Server、GoGridなどのパブリッククラウドとの相互運用性の実現を目指すとしている。

 今回、XenSource出身の米Citrix バーチャライゼーションマネージメント部門 CTOのサイモン・クロスビー氏に、XCPイニシアチブを含むXen/XenServerの今後の展開について伺った。


―Citrix Essentialsは、XenServerだけでなくHyper-Vもサポートしています。将来的には、VMware ESXをサポートする予定はありますか?

米Citrix バーチャライゼーションマネージメント部門 CTOのサイモン・クロスビー氏

クロスビー氏
 Essentials for VMwareというのは検討したことがあります。しかし、現実的ではありませんね。というのも、VMware側が拒否するとおもわれるからです。

 ただし、ハイパーバイザー部分の互換性という面では、オープンソースコミュニティで話は進めています。互換性がないことで、仮想化分野に投資できないと判断されるのは、業界全体としていいことではありません。互換性を保つことで、すべてのベンダーが利益を得ることができます。


―XenServerは現在、Hyper-Vと100%の互換性を実現していると発表しています。それをVMware ESXとも行うということですか?

クロスビー氏
 そうです。Project Kenshoという取り組みをコミュニティで行っています。ちなみに、Hyper-Vとの互換性を進めたプロジェクトはProject Satoriと呼ばれていました。

 Project Kenshoは、さまざまな仮想化環境の互換性リスクを軽減するための取り組みで、OVF(Open Virtualization Format)という仮想マシンの共通フォーマットを利用することで、VMwareとの互換性を実現することになります。

 このOVFは仮想アプライアンスなどで利用されており、パッケージング化されたOVFファイルをそれぞれの仮想化環境にインポートして利用することができます。現在、標準化団体のDMTF(Distributed Management Task Force)で標準化を検討中です。

 今回発表したXCPイニシアチブでは、こうした標準技術を利用することで、社内のクラウドと外部のクラウドの相互運用性を実現するものです。


―XCPイニシアチブを発表した背景について、もう少し説明していただけますか?

クロスビー氏
 仮想化分野に関して、エンタープライズのデータセンターではVMwareに遅れをとりました。しかし、Amazon EC2などでXenが採用されているように、クラウド分野では先行しています。また、1万サーバー規模のSaaSで利用されるなどの実績もあります。

 われわれにとっては、クラウドをすばらしいものにするというところにチャンスがあるとみています。だからこそ、XenServerを無償化したりしているのです。

 企業の仮想化をみると、バーチャルプライベートサーバーという段階にあるのが現状ですが、これをバーチャルプライベートクラウドにまで進化させていきます。そこに、エンタープライズクラスのセキュリティ、リッチなエンタープライズクラスのサービス、ディザスタリカバリが可能になれば、エンタープライズクラスのワークロードをそこで処理できるようになるのです。


―今回のXCPイニシアチブでは、クラウド向けのAPIはどのように扱われるのでしょうか?

クロスビー氏
 クラウド向けAPIのニーズがあることは理解していますが、標準化するには早すぎる段階ではないでしょうか。Amazon EC2などをみていると、APIは日々変化しているのが現状ですから。

 われわれは、エンタープライズクラスの仮想化インフラを構築することを目的に行動しています。サービスレイヤーではなく、プラットフォームのレイヤーに今後も取り組んでいきます。



(福浦 一広)

2009/9/2 00:00