“クラウドの影”を解決するには?-アクセンチュアのクラウド戦略


システムインテグレーション&テクノロジー本部 テクノロジーコンサルティング統括 エグゼクティブ・パートナーの沼畑幸二氏
クラウドへの期待と解決すべき7つの課題

 アクセンチュア株式会社は8月20日、クラウド・コンピューティング(以下、クラウド)に関する説明会を開催。システムインテグレーション&テクノロジー本部 テクノロジーコンサルティング統括 エグゼクティブ・パートナーの沼畑幸二氏が、同社のクラウドへの取り組みを説明した。

 まず沼畑氏が指摘したのは、「現在の多極化した世界では、小刻みのスパイクと世界的なバブルの生成・崩壊が繰り返されるため、伸び縮みする経営が必要」ということ。しかしその経営を支える重要な要素であるITは、システムに依存している業務がある以上その運営を止められないという制約があり、新規投資の抑制という面でしか縮めることが難しいという。

 そこで注目されてきのが、柔軟なITの利用を可能にするクラウドだ。従来のシステム開発型と比べクラウドでは、システムを調達する、開発するというフェーズが省略されるため、「ITのスピード感が圧倒的に上がる」ことが特徴。また、購入するのではなく利用料を払うという仕組み上、「クラウドで作ると不要なシステムが残らないし、まずは5人から小さく始めましょう、ということも可能。ITの変動費化が実現する」(沼畑氏)。従って、伸び縮みに対応しやすい、柔軟なITが実現できるのだ。

 しかし、クラウドにも当然解決すべき課題があり、これを解決しないと、本当に使えるものにはならない。沼畑氏は、ガバナンス、ベンダーロックイン、既存システムとの連携、法規制への対応、パフォーマンス、セキュリティ、コストの7つを“クラウドの影”として挙げ、これらを踏まえないと業務停止のリスクから脱却できないとした。リスクが具現化するものとしては例えば、SLAの問題がある。現在の多くのクラウドサービスは99.9%の保証となっており、年間8時間くらいは止まる計算になる。これではまずいのであれば、何らかの対処によってサービスレベルを上げなくてはならない。

Managed Cloud Service Deliveredの概要
アクセンチュア自身が提供するクラウドサービスの例

 そこでアクセンチュアでは、こうした課題を解決するためのソリューションを用意している。同社がクラウドサービス事業者と顧客の中間に入り、マネージドクラウドとして提供する「Managed Cloud Service Delivered」がそれ。ユーザーがクラウドサービスに要求する品質レベルと実際の品質レベルの差を、アクセンチュアがアウトソーシングなどで培ってきたスキルとナレッジを用いて埋めるのだという。また、クラウドサービスを部品化してほかのサービスと統合した形で提供することも行う。沼畑氏はこれらのサービスについて「パブリッククラウドは、データ管理やセキュリティといった面で、顧客のニーズをすべて埋められていない。足りない部分は当社のノウハウで充足する」と説明する。

 また別の面では、アクセンチュア自らがクラウドサービスを提供することも行う。沼畑氏が例として説明したのは「化学物質統合管理クラウド」サービス。REACHなど国内外で法規制が進むこの分野で、企業がいちいちシステムを構築していたのでは大変なコストがかかる。しかし、同じサービスをクラウドサービスとして受ければ、コストを抑えられるのだという。また、「法規制的なものは今後も増えるが、個々のシステムとして作れば費用がかかる。これを、共同して持てばそれぞれの企業にメリットがあるだろう」とし、業界などに共通するニーズの高いものを集約して提供する方向もあるとした。

 いずれにしても、クラウドサービスではITの部品化が進むため、「部品化して工業的に作っていくことが必要」(沼畑氏)になる。その点、アクセンチュアでは、オフショアの開発拠点「Cloud Factory」を持ち、蓄積されたノウハウを活用しつつコンポーネントの開発を進めていく体制を有している点が強み。さらに、顧客のニーズに対して適切な部品、人材を組み合わせサービスを作っていける「Service Property」の体制を持ち、顧客のクラウド導入を支えていけるとした。


(石井 一志)

2009/8/20 16:23