「パンデミックにも対処可能なセキュリティの自動化」、ジュニパーが提供するAdTMの狙い


 ジュニパーネットワークス株式会社(以下、ジュニパー)は、セキュリティ自動化ソリューション「Adaptive Threat Management(AdTM)」を6月にアップデートし、リモートアクセス対応を大幅に強化した。この背景には、どんな意味があるのかを、マーケティング本部 エンタープライズソリューションマーケティング マネージャ 小川直樹氏に聞いた。

マーケティング本部 エンタープライズソリューションマーケティング マネージャ 小川直樹氏

 AdTMは、同社が3月に発表した包括的なセキュリティ自動化ソリューションで、ダイナミックサービスゲートウェイ「SRXシリーズ」をはじめとするセキュリティアプライアンス製品を中核に、SSL-VPN「Secure Access SSL VPN(以下、SA)シリーズ」、IPS/IDSアプライアンス「IDPシリーズ」、NACソリューション「Unified Access Control(UAC)」、統合管理ツール「Network and Security Manager(NSM)」、可視化ツール「Security Threat Response Management(STRM)」といったソフトウェアから構成されている。

 これらはもともと、1つ1つが各分野で実績を上げてきた製品で、個々に強みを持つものではあるが、小川氏は「当社がエンタープライズに注力していく上で、実際にどうビジネスに役立つかという視点が求められるため、ソリューションカットでの発表を行っている」と述べ、メリットを顧客に分かりやすく伝える上で、統合ソリューションとしての提供を行ったと説明する。そのAdTMでは、ネットワーク機能やセキュリティ機能はもちろん、NSMやSTRMなどによって、高い管理性と広範な可視性を提供可能。統合管理によって管理者の負担を軽減するのみならず、ネットワークが直面している脅威を把握することで、適切な対応を行えるメリットが生まれるという。

新たなAdTMの強化点
強化されたWXシリーズの機能

 今回は、こうした特徴を持つAdTMのカバー範囲を、リモートアクセスやリモートオフィスにまで拡大している点が大きな特徴。従業員の多くが本社外で勤務している状況や、パンデミックなどに対処するための事業継続計画(BCP)を踏まえて、機能強化が行われた。具体的には、新たにコンポーネントとして取り込まれたWAN高速化アプライアンス「WXシリーズ」と、新製品のクライアント向けWAN高速化ツール「WXクライアント」によって、ユーザーはアプリケーションをより快適に利用できるようになる。また、IDPシリーズの機能強化、UACとSAシリーズの連携によるスパイウェア対策ソフト、マルウェア対策ソフトのプッシュ型配信機能も新たに搭載した。

 これらの機能にすべて共通するのは、IDとアプリケーションを認識して動作する機能を備えている点だ。小川氏は、「ユーザーがどこからでもアクセスしてくるのであれば、端末ベースではなくIDベースの管理が必要だし、アクセスを区別するために、アプリケーションを認識することも重要」と述べ、この重要さを説明する。

 AdTMの新版ではこうしたことを踏まえ、業界で唯一という、IDベースのWAN高速化を提供。また、IPSの技術を用いたアプリケーションの認識により、クライアントPCにインストールされているソフトウェアの状況を把握することもできる。小川氏は、「この機能を利用すれば、P2PやIM(インスタントメッセンジャー)を利用しているPCは重要情報にアクセスできないようにする、といったアプリケーションを見た制御が可能。さらに、クライアントPCにスパイウェア対策ソフトやWXクライアントが入っていない場合に、それをプッシュ配信し、セキュリティを上げたり、WAN高速化を適切に提供したりすることもできる」点がメリットになるとした。

AdTMの適用例

 「何かあったときに、IPSだったりマルウェア対策製品だったり、ポイントソリューションを取りあえず入れておけ、と考えてしまいがちだが、ソリューションとしてのメリットを提供できる点がAdTMの強み。AdTMの機能を見ると、すべての面で業界の先頭を切っているということはないが、今、必要とされる機能を網羅しており、すでにSAシリーズを持っているユーザーがUACを導入する、といった段階的な導入も可能だ。NSMによる管理性の向上や、すべてのイベントを可視化するSTRMによって、企業に管理者の負担をかなり軽減できるし、WAN高速化についても、ポイントソリューションとしてではなく、すべてまとめて提供できるという点で、競合と比べて差別化できるだろう。こうした点を市場に訴求したいきたい」(小川氏)。

 なお、最新のAdTMソリューションとして利用するためには、個々の製品ごとに必要なバージョンが設定されており、例えばWXクライアントは「WXシリーズ バージョン6.0」以降で利用可能。その他の製品も最新版が必要となり、8月中にはすべて提供される見込みである。




(石井 一志)

2009/8/11 11:00