日本IBM、企業内クラウドを数日で導入できる「IBM CloudBurst」

必要なハード・ソフトとサービスを一括提供

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は7月14日、プライベートクラウド(エンタープライズクラウド)を容易に導入できるソリューション「IBM CloudBurst V1.1」を発表した。価格は2448万7500円(税別)からで、8月18日より提供を開始する予定。

IBM CloudBurstの製品概要。必要なハードウェア、ソフトウェアに加えてサービスも提供する

 IBM CloudBurstは、プライベートクラウド環境を容易に導入できるようにするソリューション。プライベートクラウドとは、企業社内に構築するクラウド・コンピューティングシステムのことで、第三者が提供するサービスをインターネット経由で利用する「パブリッククラウド」と対比してこう呼ばれている。執行役員 未来価値創造事業担当の岩野和生氏は、「今はパブリッククラウドが大きく展開しているが、ガバナンスがきかないという問題がある」と述べ、今後、企業内のクラウドが注目されてくるだろうとした。

 今回提供されるIBM CloudBurstは、プライベートクラウドを構築するために必要なハードウェア、ソフトウェアをすべてそろえた上で、導入、設定、トレーニングなど、クラウド環境を稼働させるために必要なサービスもあわせて提供するもの。単に“入れ物”だけでなく、運用上必要なスキルトランスファーも含めたサービス部分も提供するため、わずか数日でクラウド環境が利用可能になるという。専務執行役員 ソフトウェア事業担当の三浦浩氏は「早くクラウドを使いたい、というのがお客さまの一番大きなニーズだ」という点を指摘。ターンキーのソリューションとして提供することの意義を強調した。

執行役員 未来価値創造事業担当の岩野和生氏専務執行役員 ソフトウェア事業担当の三浦浩氏IBM CloudBurstの特徴

 もっとも、同様の製品、ソリューションは各社から提供されるようになっており、差別化が求められてくる。三浦氏は、それらと比べた日本IBMならではの価値を「社内外で実績を持ったものを提供するということ」だと説明する。プライベートクラウド環境では「仮想化」「標準化」「自動化」という3つが大きな要素になるが、三浦氏は「仮想化についても大きな実績を持っているし、主にTivoli製品で提供する自動化についても、昨日今日始めたわけではない」と、実績をアピールした。

エンドユーザーに環境が提供されるまでの流れ

 自動化技術によって、IBM CloudBurstを利用するエンドユーザーは、セルフサービスポータル画面から簡単な手続きで使いたい環境を申請し、許可を得るだけで環境の利用を開始することができる。こうした、人手をほとんど介さない運用が可能になっているため、実際に、IBM CloudBurstを社内の開発・テスト環境に適用した事例では、ユーザーに提供するまでに平均5日かかっていたテスト環境の導入・構築時間が、平均20分以内に短縮。さらに、サーバーの台数を77%、運用管理者の人数を87%削減できたという。

 もう1つの標準化についても、岩野氏は「エンドユーザーに提供するサービスを適切に切り出し、『サービスカタログ』という形で標準化することになるが、そのノウハウも当社は持っている」と述べる。

 IBM CloudBurstは、当面クラウド環境のパイロット導入を想定しているため、標準で提供されるサービスカタログは、ソフトウェアの開発環境やデスクトップの一時利用といった用途で利用可能な、SUSE Linuxベースのコンピューティング環境のみ。いわゆるIaaS(Infrastructure as a Service)を、社内のユーザーへ提供することになるが、プライベートクラウドが本格的に利用されるようになれば、さまざまな社内のアプリケーションをクラウドから提供することも想定される。そうなった場合には、アプリケーションのサービスカタログ化が必要になり、その領域でノウハウを持つ日本IBMの強みが生かされてくるのだという。

 三浦氏もこの点について、「Linuxに加えてWindows環境が必要ということであれば、2日分のワークロードで環境を追加可能だし、自社アプリケーションを組み込みたいといったニーズについても支援可能だ」と述べ、トータルに支援体制を提供するとした。

 価格は、2448万7500円(税別)から。日本IBMでは、開発・テスト環境を必要とする企業を中心に訴求し、年内に15件の販売を目指す意向で、特別価格のキャンペーンや、月額料金での提供も予定している。




(石井 一志)

2009/7/14 14:58