日立、5Uシャーシに40台格納できる高密度ブレードPC「FLORA bd500」

高密度の発熱に耐える新設計のシャーシも

 株式会社日立製作所(日立)は5月18日、クライアントPCの高密度集約を可能とするブレードPCの新モデル「FLORA bd500」を発表した。5月19日から販売開始する。同製品では、現行モデル比で約2.3倍となる集約率を実現したのが特徴。これと併せて、シンクライアントに必要な周辺機器も1シャーシに統合した「オールインワンパック」を、中小規模・試行導入ユーザー向けに提供する。

 FLORA bd500は、シンクライアントなどの用途に向けたブレードPC。サーバー配線技術により、高信頼化と高密度基板実装を実現し、現行モデル「FLORA bd100」と比べて約40%の容積縮小を図ったのが特徴。5Uの専用シャーシ1台に40本、42Uのラック1台に最大320台まで格納可能とした。これは現行モデルと比べて約2.3倍の集約度という。

 一方でブレードPCの集約度を高めると、熱が問題となってくる。そこでシャーシに改良を加え、効率的な冷却を実現したのも、今回の肝である。まず、シャーシ背面下部の電源ユニットを冷却するために、シャーシの底面に電源冷却用ダクトを配置。厚さ8mmの通気口から電源に直接外気を引き込むことで、効率的な冷却を実現した。併せて背面の開口率も向上し、シャーシ内で発生した熱を効率よく放出できるようにしている。

FLORA bd5005Uのシャーシに40枚格納可能

FLORA bd500の特徴現行モデル比で約2.3倍の集約率となるシャーシ底面に電源冷却用ダクトを配置
エンタープライズサーバ事業部 クライアント本部長の林良裕氏

 また、サーバー実装技術を応用することで、主要ユニットはすべてモジュール化し、ホットスワップに対応した。電源は合計5台でN+1の冗長化、冷却ファンは合計5台で(1+1)×5の冗長化をサポート。これらの各ユニットを監視し、異常検知などのイベント発生時に対応動作をリアルタイム制御する「コントロールボックス」なるコンポーネントも実装している。

 このコントロールボックスでは、ブレードの利用状況に応じて、電源ユニットの稼働台数や冷却ファンの回転数をきめ細かく制御することが可能。例えばシャーシ内で、ブレードの稼働台数が多い場合は、5台すべての電源を稼働させ、ブレードの稼働台数が少ない場合は、2台の電源のみで運転させるといった動作を実現する。

 省電力ではこのほか、各ブレードにシステム管理者が省電力設定を配信できる省電力運用ソフト「SAVINGDA Pro」を現行モデルから継承。あらかじめ指定したスケジュールによって、夜間や休日など不使用の時間帯にハードウェアをシャットダウンや休止状態へ移行させることが可能となる。これらにより、「従来PCと比べて約65%の省電力化が可能」(エンタープライズサーバ事業部 クライアント本部長の林良裕氏)という。

コントロールボックスでブレードの利用状況に応じた省電力を実現SAVINGDA Proで省電力設定の配信を実現
エンタープライズサーバ事業部長の山本章雄氏

 クライアント管理ソフトとしては、現行モデルに引き続き、「FLORA bd Link」を用意。ネットワーク上のPCから、ブレードPCの電源オン/オフやリセットがリモートで行えるため、問題発生時にシステム管理者の手を借りずにエンドユーザー自ら復旧が可能という。

 今回は、このFLORA bd Linkの強化点として、Citrix XenDesktop 3.0に対応させた。クライアントとブレードPCをひも付けるブローカー「Citrix DDC」と組み合わせることで、ブレードPC方式、仮想PC方式、ターミナルサービスなどさまざまなシンクライアントが、単一ソリューションで実現可能となる。

 これにより、ユーザーが最初に方式を固める必要がなくなるのがメリット。「例えば、最初にブレードPC方式のシンクライアントを導入したあと、一般事務などの定型業務に追加導入したい場合に、ターミナルサービスを組み合わせるといったことが可能となる。ターミナルサービスは、リソースの共同利用による効率化が図れるなど、ブレードPCにはないメリットがあり、適材適所でそれぞれの方式を使い分けることで、TCOを抑えることが可能だ」(エンタープライズサーバ事業部長の山本章雄氏)。

 FLORA bd500の価格は、Celeron 585(2.16GHz)、1GBメモリ、120GB HDD、Windows Vista Business Blade PC Editionなどの最小構成で11万3400円から。XenDesktop 3.0のライセンスは別途必要。シャーシの価格は、34万9650円から。SAVINGDA Proの価格は、5250円/ライセンスから。FLORA bd Linkの価格は、1万5750円/ライセンスから。

 このほか、クライアント集約に必要な構成要素をFLORA bd500の1シャーシに統合したオールインワンパック製品を、中小規模・試行導入を検討するユーザー向けに提供する。40本のブレードPCのうち、4台にActive DirectoryやXenDesktop/DDC接続管理サーバーなどをインストールし、残りをクライアント用途に利用可能にしたもの。ソフトウェアの設定もあらかじめ済まされるため、ユーザーは最小限の設定で稼働させ、導入コストを削減できる。価格や具体的な構成内容などは未定。

 山本氏は「こうした製品群を提供するほか、今後、クライアント集約へのビジネスリソース集中を図り、市場創出に努める。その結果、2006年度から2008年度で売上160億円だったセキュアクライアントソリューション事業を、2009年度から2011年度には350億円にまで拡大する」と事業目標を語った。




(川島 弘之)

2009/5/18 15:56