チェック・ポイントがノキアの事業買収で得たシナジー、杉山社長が説明

まずはOSの統合、長期的にはハードウェア一新も

買収後の製品ラインアップ

 チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ株式会社(以下、チェック・ポイント)は5月12日、ノキア・ジャパン株式会社(以下、ノキア)のセキュリティアプライアンス部門の買収について説明会を開催。代表取締役社長の杉山隆弘氏などが登壇し、現在の統合状況や今後のロードマップの一端を紹介した。

 チェック・ポイントによるノキアのセキュリティアプライアンス事業の買収は、2008年12月に調印が行われ、この4月13日に日本を含むワールドワイドで完了している。これまで12年にわたり協業してきた両社だが、統合することで両社の顧客メリットを最大化する狙いで、「この統合でセキュリティアプライアンスにおけるリーダーを目指す」と杉山氏の意気込みも大きい。

 この買収で、チェック・ポイントの「UTM-1」「Power-1」に、ノキアの「IPアプライアンス」が加わることになる。中小規模向けのUTM-1、大規模向けのPower-1、単一シリーズで全規模をカバーするIPアプライアンスをラインアップすることになり、その幅はさらに拡大される。

 一見すると重複するようなポートフォリオだが、すみ分けとしては「UTM-1とPower-1はポート数を固定にすることで高いコストパフォーマンスを備えた製品として、それより若干コストパフォーマンスに劣るIPアプライアンスは、ポート数やパフォーマンスを購入後にもスケールできる拡張性の高さや、IPルーティング機能の充実さを備えた製品として訴求していく」(セキュリティ・コンサルティング本部 シニアマネージャーの安藤正之氏)。

UTM-1の製品概要Power-1の製品概要IPアプライアンスの製品概要
代表取締役社長の杉山隆弘氏
セキュリティ・コンサルティング本部 シニアマネージャーの安藤正之氏

 統合にあたって注意した点は、「1)人材の円滑な移籍を行うこと、2)ノキアユーザーの満足度を損なわないこと、3)パートナーには今まで通りの支援をすること、4)ノキア製品の特性をつかんだ上で互換性を実現すること」(杉山氏)の4点。1)についてはすでに、「4月14日にはノキアの人材・機器ともにチェック・ポイントの新宿オフィスに移籍を完了、すべてのサービスや会社としての機能を単一コントロール下で提供できる体制が整っている」(同氏)とのこと。ユーザーやパートナーへの支援もそのままチェック・ポイントが引き継いで、変わらず提供していく方針という。

 4)に関連した今後の製品ロードマップについても近々発表を予定しており、今回の説明では、「まず両社のOSや管理ツールの統合に取り組む」(安藤氏)ことが明らかにされた。12年間の協業ですでにセキュリティアーキテクチャ「NGX」の統合は済んでいるが、OSや管理ツールには依然差異がある。今後は「SPLAT」と「IPSO」の両OSを、それぞれの良さを生かした形で統合していくとのことで、一例としては、チェック・ポイントのソフトウェアによるアクセラレーション「CoreXL」と、ノキアのハードウェアによるアクセラレーション「ADP」を組み合わせることで、スループットのさらなる向上を目指すという。併せて、管理ツールも統合し、障害復旧機能の拡充や運用管理の単純化を図る。

 このほか短期的には、IPアプライアンスにNGXをバンドルした統合製品の発売を予定。これまでは別々に提供されてきたのだが、「1社から統合して提供することでより低価格が可能になる」(安藤氏)。また長期的にはハードウェアの統合も予定。これは最新の設計でラインアップを一新する大掛かりなロードマップで、「モデルレンジの拡大や次世代パフォーマンスの実現を目指して進めていく」(安藤氏)とした。

 最後に杉山氏は「買収により、1つの統合アプライアンス、1つのセキュリティソリューションを提供できるようになり、サポートインフラを大幅に拡張することが可能になった。UTM市場はセキュリティ指向のほか、パフォーマンスなどを重視するネットワーク指向の2つのアプローチが存在する。幅広いラインアップでこのどちらのアプローチにも対応できるようになった。これが他社と差別化する、明確で最大のシナジーだ」と、統合効果を語った。

OSの統合ロードマップ管理ツールの統合ロードマップハードウェアの統合ロードマップ





(川島 弘之)

2009/5/12 18:23