富士通、フィールドイノベーションを加速するクラウドサービスを発表


取締役副社長の富田達夫氏

 富士通株式会社は4月27日、クラウドサービスを提供すると発表した。サービス基盤となる「Trusted-Service Platform」を構築し、同日よりサービスを開始するほか、安全性を提供する「クラウドセキュリティセンター」の開設、クラウド移行に伴う最適化を行う「インテグレーションサービス」、クラウド内のシステム可視化を行う「マネジメントサービス」の提供などを順次行っていく。

 富士通では、クラウドコンピューティングの流れを「フィールドイノベーションの加速」によるものと見ている。「電子商取引を始め、電子政府・自治体、交通システム、トレーサビリティ、デジタル家電などあらゆるフィールド(社会)でICT利活用が進んでいる。そこから生み出される大量の情報を企業活動に活用し、新たな価値を還元する時代が、クラウドコンピューティング時代なのではないか」(取締役副社長の富田達夫氏)。

 こうした時代背景をとらえると、クラウドには「セキュリティ」「可用性・柔軟性」「オープンな開発・実行環境」「ユーザー環境の見える化」「グリーン」などが必須で、「これらがはっきりしないと、なかなかクラウドに入っていけない」(同氏)というのが、富士通のクラウドに対する考え方。

 「コンピューティング技術」「ネットワーク技術」「運用管理技術・ノウハウ」など、これまで蓄えてきた同社の強みをきっちり採り入れた上でクラウドを実現するというのが方向性であり、「それが当社が提供するクラウドの強みだ」(同氏)とも説明している。

富士通クラウドサービスのポートフォリオ

 そこで今回提供するのが、館林システムセンターにサーバーファームとして構築されたTrusted-Service Platform。数十万規模の仮想サーバー群をコントロールし、ストレージ・OS・ミドルウェアを含めてリソースのプール化を行い、必要なリソースを必要な時に柔軟に利用できる環境を整えたという。

 企業内のプライベートクラウド、公開サービス用のパブリッククラウド、いずれの用途にも対応し、「アプリケーションサービス」「システムリソース」「開発・検証環境」「ディザスタリカバリ環境」「データ保管サービス」などさまざまな利用形態でユーザーに提供する。

 すでに基本的なプラットフォームが館林システムセンター内に構築済みとのことで、サービス提供を行いながら今後も順次増強。10月をめどに完全版としてオープンする予定という。

 併せてセキュリティの維持のために「クラウドセキュリティセンター」も4月に設置。サーバーファーム内のクラウド環境に構築したシステムと、ユーザー企業内のシステムで情報資産保護の徹底、資産評価などの情報セキュリティガバナンスを支援する。

サービスプロダクトビジネスグループ長の石田一雄氏

 「ここでは、セキュリティ基準の評価指導などコンサルも加えつつ、当社センターをはじめ、連携するお客さまのシステムを含めたセキュリティ向上を図る。またセキュリティ技術についても、認証、暗号化、アクセスコントロールなど当社単体で決めるのではなく、他ベンダーにも声をかけて標準化を行っていく。お客さまのメリットは、運用リスクやセキュリティリスクを気にすることなく、クラウドを利用できる点だ」(サービスプロダクトビジネスグループ長の石田一雄氏)。

 さらにシステムの可視化も重要として、マネジメントサービスも提供する。「リソース稼働状況」「セキュリティ状況」「利用アプリケーション価値」「アプリケーション稼働資産」を可視化する各種ツールを用意し、ダッシュボードを提供することで「雲の中の状況を見える化したのが特徴」(石田氏)という。

 こうした技術、運用に関するサービスのほかに、5月には「クラウドサービスインテグレーション室」を組織化し、クラウド環境のデザイン・導入・構築・サービス移行などをトータルに支援するインテグレーションサービスも体系化を行った。

 「これにより、クラウド環境で利用する業務システムと企業内で運用する業務システムの切り分けなど、業務プロセスの可視化を行いながら、どんなサービスを利用すべきか、何をクラウド化すべきかなどのベストな選択を検討することが可能になる」(同氏)という。

Trusted-Service Platformの概要クラウドセキュリティセンターの概要

業務可視化を支援するマネジメントサービスインテグレーションサービスも体系化

 対象としては「基幹システム、フロントシステムのほか、センシング(農業/医療)やRFIDによるトレーサビリティ、河川・ダム監視などの画像といった新たな適用分野」を想定。「基幹システムのクラウド化を一挙に行うのはオススメしないが、まずはフロントからクラウド化していくことで、スピード感はかなり増していくと思われる」(同氏)とした。

 その上で「新たな適用分野の中でも、特に画像や映像は、クラウド化のニーズがリアルに存在している領域だという。「今回のサービスでネットワークとして利用するのは、先日発表した『FENICS IIユニバーサルコネクト』だ。モバイルにも幅広く対応しており、場所・端末・ネットワークの違いを意識せずに利用できるクラウド向けのネットワークとなっている。クラウドではこうした新たな適用分野にもフォーカスし、そこでの実践を従来型サービスビジネスに循環させていくのが重要となる。当社は、そのための技術力をすでに持っている。この点が当社の強みとなっていくだろう」(同氏)と、改めて強みを協調した。

 価格例は、Trusted-Service Platformの利用料が17万5000円/月から。セキュリティサービスが25万円/月からなど。




(川島 弘之)

2009/4/27 15:50