「バラバラの情報を活用するために必要なものは?」-米Oracleフィリップス社長

Oracle OpenWorld Tokyo 2009 基調講演

米Oracleのチャールズ・フィリップス社長

 日本オラクル株式会社では、4月22日からプライベートイベント「Oracle OpenWorld Tokyo 2009」を開催している。最終日となる24日には、米Oracleのチャールズ・フィリップス社長が基調講演に登場。「Complete. Open. Integrated.-Oracle's Strategy to Bring Value to Your Business」と題した基調講演を行っている。

 フィリップス社長がまず指摘したのは、「情報量が爆発的に増えていること」。しかし、データ量が急速に伸びているものの、「急激な増加を予想していなかったためにバラバラに位置しており、意志決定や予想に使うことが困難。本当の意味で役に立つ情報がない」という状況を引き起こしてしまった。まさに、情報が増えれば増えるほど問題になる、という状況になってしまったのだ。

 しかし、情報は企業にとって必要不可欠なもの。情報化社会の現在では、「もっとも正確な情報を活用し、それによって意志決定をできるところが勝利を得られる。憶測に頼って、事実やデータを活用できない企業は負ける」(フィリップス氏)のだから、こうした状況を放置するのは、致命的になりかねない。入ってくる情報を一元的に管理し、処理していける情報インフラと、それを活用する仕組みが必要になるのだ。

Oracleの3つの戦略
Oracle Fusion Middlewareによる統合効果を強調する

 Oracleでは、こうした爆発的に情報が増える状況で顧客を支援するため、「コンプリート」「オープン」「インテグレーテッド」の3つの戦略を掲げて製品を展開している。「コンプリート」では、各業界でのベストプラクティスを提供できる強い製品をそろえているし、ミドルウェアのレイヤでも総合的な品ぞろえを提供することで、ユーザーがより大きなメリットを得られるようにしている。フィリップス氏が特に強くアピールしたのは、このミドルウェア分野。「インテグレーテッド」ともかかわる部分ではあるが、さまざまな役割を担うミドルウェア製品群を、Oracleが統合された形で提供することにより、ユーザーの負荷を軽減している点もメリットになるとのことで、バラバラの情報を結びつけるための道具として、コラボレーションツールの有効性なども説明した。

 「オープン」については、「Oracle Databaseは100以上のプラットフォームで動作していたが、1つの形式を共通して利用できたため、成功することができた。これからは、カスタマイズされた“職人芸の作業”ではなく、一貫性があり、再現可能な標準を利用することで、コストを下げられる。独自仕様は減らさなければならない」(フィリップス氏)と、標準準拠の必要性を強調。サードパーティ製品やレガシーシステムとも統合できるようにすることによって、情報共有が実現するとした。そして、あらためてオープンへのコミットを表明し、これからも継続すると述べている。

 「インテグレーテッド」では、「より多くの製品を導入したら、より多くを得られるようにしなければいけない。同じメタデータをポータルやBI製品で共用するし、また製品がお互いを認識できることも必要だ」と述べ、ユーザーに負担をかけることなく、統合されたソリューションを提供できることの重要さをアピールする

 かつては、パッケージ製品に対する評価が低かったこともあり、システムをスクラッチで作ることが主流だった。しかし、「コンプリート」などの3点を踏まえたOracleの製品・ソリューションであれば、それ以上のメリットを提供できるとフィリップス氏は主張する。「1からスタートするのではなく、市販されているものを活用したい。もっとも成功した自動車会社は部品を少なくし、複数車種で活用している。システムもこれと同じで、何千何百ものコンサルタントを雇って差別化できないシステムを作るのではなく、市販のシステムを購入してベストプラクティスを活用すべき。カスタマイズは今市場にないものや、差別化要素に限定すべきだろう」。

 また、「コンプリート」「オープン」「インテグレーテッド」を実現するために、同社では製品開発と買収の二本柱で事業を行っていると説明する。製品開発では毎年30億ドルを投資し、新たなイノベーションを生み出しているほか、今後も投資を続けるという点を強調。一方、5年で55社を買収し、それらの企業が持つイノベーションも社内に取り込み、完全なスタックの提供を目指している。フィリップス氏は「今週も興味深い買収を発表したが、今後もこれは継続する」と、米Sunの買収に触れ、この路線を継続すると話している。




(石井 一志)

2009/4/24 14:51