Enterprise Watch
連載バックナンバー
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年

ブレードサーバー戦略を探れ -メーカーは何を目指すのか-

第四回・日本HP アダプティブエンタープライズを具現化する戦略商品


 「スタート時点から、当社のブレードサーバー戦略は他社と大きく異なっていた」と話すのは、日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)でブレードサーバーを担当する、エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 インダストリースタンダード・サーバ製品本部 プロダクトマーケティング部の山中伸吾氏。同社が当初から狙っていたのは基幹システムであり、逆にブレードサーバーが市場に登場した時点で注目されたハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)分野に関しては、「後付けで対応した」という。そして現在、「当社が推し進める、ユーティリティコンピューティング実現に向けた『アダプティブエンタープライズ』戦略を具現化するための、戦略的商品がブレードサーバー」として、ブレードサーバーを主要プラットフォームに位置付け、推進している。


スタート時点からエンタープライズ用途を想定

エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 インダストリースタンダード サーバ製品本部 プロダクトマーケティング部 正田三四郎部長
 日本HPがブレードサーバーを最初に製品化したのは、合併前の2002年2月、旧コンパック時代にさかのぼる。

 「その時点から、HPCよりもエンタープライズ分野での利用が適していると考えていた」と、山中氏は指摘する。

 「当社では最初の製品発表時点から、高集積タイプ、フロントエッジタイプ、スリーティア用と3階層の製品を提供する計画があると表明していた」(エンタープライズストレージ・サーバ統括本部インダストリースタンダード・サーバ製品本部プロダクトマーケティング部・正田三四郎部長)

 ただし、スタート段階はアプリケーションがそろっていなかったために、普及しはじめたのはOracleのRACなど、アプリケーションが出てきてからのことになる。それでも、山中氏が「当社としては、アプリケーションが出そろう前から、ホットプラグやECCメモリに対応させるなど、製品をそろえて準備していた」と述べたように、エンタープライズ分野での需要拡大に備えていた。

 スタート時点からエンタープライズ分野での利用にこだわりを見せていたことには理由がある。

 「日本HPでは、アダプティブエンタープライズというコンセプトをアピールしている。サーバーを自社で保有するのではなく、必要な時に必要なだけ利用するというユーティリティコンピューティングのキープロダクトこそ、ブレードサーバーだ。アダプティブエンタープライズに対しては、ビジョンが先行し現実が追いついていないという指摘もあるが、ビジョンを具現化したもののひとつが、ブレードサーバーであり、まさに当社にとって戦略的な意味合いをもつサーバー製品となる」(正田部長)


ユーザーにあわせ異なるセールストークを用意

日本HPが販売するブレードサーバーの1つ、HP ProLiant BL30p
 アダプティブエンタープライズを具現化する製品であるだけに、「ブレードサーバーには変化に強いという特徴がある。新たなサーバーの追加がしやすいことはもちろん、ハードウェアの管理だけでなく、アプリケーションの変更などを含め、トータルに管理コストを下げることができるのがブレードサーバーであり、今後増えていく付加価値の高いビジネスを展開するのに適したハードウェア」だと正田部長は指摘する。

 その意味で、企業にブレードサーバーを提案する場合には、「サーバー単体ではなく、システム全体のグランドデザインを提案して、その中へブレードサーバーが入って来るイメージ。ブレードサーバー単体だけでは商談は済まない」(山中氏)ことになる。

 そこで日本HPでは、販売にあたっては、ターゲットごとに説明を変えるという工夫をしている。経営者向けにブレードサーバーの説明を行う場合は、ブレードサーバーの詳細な技術などについてはふれずに、アダプティブエンタープライズという将来を見据えたコンセプトを示し、経営面から見た場合のメリットをアピール。

 逆に現場の担当者に説明をする際には、アダプティブエンタープライズではなく、サーバーを容易に増設できるといった、具体的な利用場面での特徴や、技術面を中心に製品説明を行っている。


他社にない使いやすさをアピール

エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 インダストリースタンダード・サーバ製品本部 プロダクトマーケティング部 山中伸吾氏
 エンタープライズでの利用というと、ブレードサーバーには「高密度」というキーワードがつきまとうものの、「実はブレードサーバーならではの良さは、使いやすさにある」と山中氏は指摘する。

 「高密度(=省スペース)を実現することはもちろん重要な要素。しかし、それに加えて使いやすく、メンテナンスや管理がしやすいのがブレードサーバーの強み」

 特に日本HPでは、管理、メンテナンスがしやすくなるよう、独自の工夫をしている。一点目が、管理性である。

 「ブレードサーバーの場合、故障したとしても、別のサーバーに切り替えることができるが、その後には故障したサーバーを見つけだし、メンテナンスしなければならない。管理の容易さというからには、たくさん並んだブレードサーバーの中から、故障したものを簡単に見つけだせるか、否かといった点にまでメーカー側が配慮をしている点にも注目して欲しい」(山中氏)

 二点目としては、「実際に利用しているユーザーから高い評価を得ている、遠隔操作技術」である。

 ブレードサーバーも数台のうちはいいが、数が増えてくると、ネットワーク経由で管理する必要がある。

 「当社では、Webブラウザ経由で遠隔操作ができる『iLO』という技術をもっている。メインのCPUとは別に専用のCPUを持っているため、起動画面での操作や、ブルースクリーンが出ている状況でのシャットダウンといったことまで可能。他社の製品でも似たようなことができるものもあるようだが、実際に使ってもらったユーザーからは『差は歴然としている』という評価をもらっている」(山中氏)と強い自信を見せている。


ソリューション販売ができる強みを生かす

 今年度は複数のメーカーが、エンタープライズ向けにブレードサーバーを導入し、競争が激化していく見通しだ。

 その中で日本HPでは、「企業システムも、タワー型のサーバーからラック型へ、そしてブレードサーバーへとサーバーのスタイルが変化することで、ビジネスのやり方そのものが変わってきている。つまり、新たなパラダイムシフトの変化が、ブレードサーバーによって起きようとしている」と将来のビジョンと共にブレードサーバーをセールスしていこうとしている。

 そして、「きちんと将来のビジョンを見せて、伝えて、お客様にブレードサーバーを利用していく際のイメージをもってもらう。おかげさまで、昨年、今年と前年比200%成長と出荷量も急速に伸張している。今年もその勢いが衰えていない。ソリューション販売ができる強みを生かし、ブレードサーバーの販売に拍車をかけたい」とソリューションビジネスのキープロダクトとして、ブレードサーバーに期待する姿勢を見せている。



URL
  日本ヒューレット・パッカード株式会社
  http://www.hp.com/jp/

関連記事
  ・ 日本HP、“ブレードサーバー市場のシェア30%を目指す”新施策を発表(2004/06/03)


( 三浦 優子 )
2004/06/16 00:00

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.