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ブレードサーバー戦略を探れ -メーカーは何を目指すのか-

第三回・日本IBM システムのインフラ化に不可欠な戦略商品


 日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)では、ブレードサーバー「IBM eServer BladeCenter」を「戦略商品」と位置づける。同社のシステム製品xSeries&IntelliStation事業部の岩井淳文事業部長は、「日本IBMではシステムをインフラ化するというビジョンを掲げている。それを実現するために、ミッションクリティカル業務だけを汎用機で運用しつつ、それ以外のサーバーはすべてブレードサーバーに置き換え、運用の効率アップや障害が起こった際の自己修復機能などを実現していく」と説明する。日本IBMが狙う「システムのインフラ化」に向けて、ブレードサーバーはどのような役割を果たしていくのか。


試用期間を終え、いよいよ導入期に

システム製品xSeries&IntelliStation事業部 岩井淳文 事業部長
 日本IBMの岩井事業部長は、ブレードサーバーは2つに大別できると話す。

 「1つは、クライアントパソコンで利用されているCPUを搭載し、集積度をあげるためのブレードサーバー。もう1つが、サーバー用CPUを搭載し、基幹システムでの利用を想定したブレードサーバー」

 2種類あるブレードサーバーのうち、日本IBMの製品は後者のタイプとなっている。

 「データセンターにブレードサーバーを利用しているケースもあるが、金融、官公庁、製造業と、業種業態の区別なく導入されている」

 現在の需要としては、「目標を越えるほどの実績ではない。が、伸び率で見るとほかのサーバーよりも高く、すでに試用段階を終え、本格的な導入期を迎えている」(岩井事業部長)段階だ。

 正確な出荷数は明らかにしていないものの、「調査会社の調査によっては、他社を1けた上回る出荷数を出している」という。日本IBMの四半期のサーバー出荷量のうち、2けたのパーセントをブレードが占め、「近い将来には、当社のサーバーのうち3~4割の台数がブレードとなるはず」だという。

 これは昨年、試用キャンペーンなどを打ち、ユーザーにブレードサーバーの利用をアピールした成果でもある。その成果もあって、「早くもリピートオーダーも出てきている」という。

 ターゲットとして、ラック型サーバーを導入している顧客層も狙い、ラックよりもさらに省スペース化を実現する「0.5Uのサーバー」としてアピールしていく計画だ。


ブレードサーバーの標準化をアピール

IBM eServer BladeCenter
 IBMはブレードサーバーについて、他社にない目標を掲げている。

 「ブレードサーバーは、ほかのサーバーに比べて標準化されていない部分が多すぎる。例えば、ネットワーク系のシスコ、ブロケードといったベンダーとの連携を迅速に進めていくためにも、新たなブレードサーバーの標準があってしかるべきだ」

 確かに、現在のブレードサーバーは、同じIAベースであっても各社各様に形も違えば、仕様も大きく異なる。同じ技術をベースにしているにもかかわらず、各社各様の個性が出せるのがブレードサーバーだ。個性を出しにくいIAサーバーにおいて個性が出せるからこそ、大手ハードベンダーもブレードサーバーへの注力を増している。日本IBM自身も、標準化されていないからこそ、ビジネスとしてうま味があるという点は否定しない。

 にもかかわらず、ブレードサーバーに、「標準化」の必要性を訴えるのは、「ブレードサーバーの上に載せる、シンプリフィケーションとオートノミックという二つの狙いがあり、情報システムのインフラ化を実現するためにはこの二つの要素が欠かせない」と考えるためだ。

 シンプリフィケーションとは、IT環境を単純化することを狙ったもので、それによって運用効率をアップすることを狙っている。

 「サーバー、スイッチ、ルーター、ストレージなど、煩雑なシステムをシンプルなものにすることで、トラブルも少なくなり、運用効率もアップする」というセールストークにあわせ、ラック型のボックスの中にサーバー、スイッチ、ルーターなどが詰め込まれ、多数のケーブルがつなぎあわされている様子を写真に撮ったものと、ケーブルが一本もなく、ひとつのボックスにサーバー、スイッチ、ルーター、ストレージなどがセットされたBladeCenterの写真を並べて、視覚でそのシンプルさをアピールしている。

 「実際にケーブルの配線上でトラブルが起こることも多いうえ、視覚的なインパクトが大きく、この写真のアピールは経営者層からシステム管理者まで、幅広い層にうける」そうだ。


オートノミックなど独自技術には大きな自信

 オートノミックは、日本IBMがここ数年アピールするポイントである。ブレードサーバーを利用し、オートノミックコンピューティングを実現することで、障害が起こることを予想するツールによって、障害が起こる予兆があった際に、障害のないブレードサーバーに自動的に切り替えるといった作業を無人で行っていくことが可能になる。トラブルによってシステムがダウンするといった事態を避けるために、ブレードサーバーは適しているというわけだ。

 「オートノミックを実現するための技術は、汎用機でつちかわれたもので、それをWindows、Linuxでも利用可能とすることで、他社にないアドバンテージをもつことができる」と岩井事業部長は独自技術に大きな自信を見せる。

 日本IBMでは、例え、ブレードサーバーが標準化されたとしても、IBM独自部分は保てると考えているようだ。この独自技術があるという自信が、ブレードサーバーの標準化が必要と訴える源泉なのだろう。

 ちなみに、日本IBMではIAベースのブレードサーバーだけでなく、Power5ベースのブレードサーバーも提供する予定だが、この製品でも同様に、シンプリフィケーションやオートノミックを強みとして、推進していく計画だ。


ストレージは外部に、にもこだわる

 ところで、日本IBMがほかのブレードサーバーベンダーと大きく異なる部分がもうひとつある。それはストレージに対する考え方だ。

 ストレージについては、サーバーの内部にもっているものと、外部にもつものに大別することができるが、日本IBMでは、「ブレードは外部にもつべき」という点に関しては一貫している。

 「先だって当社が実験に成功したような、サーバー自体は東京にあり、ストレージは台湾やニューヨークにある、といった具合に、世界レベルの分散システムを構築するといったことも、ディスクとCPUを分離しているからこそ実現できる。当社では汎用機、UNIXでもストレージは分離すべきとの考えをもっている。同様にブレードでもストレージの分離が望ましい」(岩井事業部長)



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/

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( 三浦 優子 )
2004/06/09 00:01

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