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64ビットCPUはビジネスをどう変えるのか?!

第二回・インテル -5年以上かけ開花し始めた64ビット市場-


 インテルはすでに3年前からItaniumを投入。ずばりRISCサーバーおよびメインフレーム市場をターゲットに、市場開拓を進めている。サーバー市場においては、IAサーバーは圧倒的台数シェアを保持しているものの、金額シェアではRISCの割合が高い。つまり、ハイエンドサーバーと呼ばれる分野はいまだにRISCサーバーの比率が高く、IAサーバーは後塵を拝しているのが実情である。Itaniumファミリーはこの状況を変えるために投入された。果たして、インテルはどのような戦略をもってハイエンドサーバー市場におけるItaniumファミリー普及を実現しようとしているのか。


メインフレーム大国日本は欧米に比べ遅い変化

プラットフォーム&ソリューションズマーケティング本部 エンタープライズ・ソリューションズグループ 統括部長の平野浩介氏
 「日本は全世界の中で、いまだにメインフレームおよびRISCサーバーへの投資が多い国。こうした高額のサーバーは、金融業のバックエンドシステムなどいわゆる勘定系と呼ばれている、ミッションクリティカルな用途で利用されている。欧米では大手金融業の導入ユーザーが増えてきているものの、日本ではそこまで至っていない」

 インテルのプラットフォーム&ソリューションズマーケティング本部 エンタープライズソリューションズグループ・平野浩介統括部長は、日本のサーバー市場の現状をこのように分析する。

 調査会社のIDCジャパンによれば、2002年のサーバー市場の規模は7731億円。そのうち、1システムあたり5000万円以上するハイエンドサーバーの市場規模は3808億円。この大半をメインフレームおよびRISCサーバーが占めている。台数では圧倒的にIAサーバーが多いものの、金額ではRISCサーバーおよびメインフレームが占める割合が高い。

 ハイエンドサーバーが担うのは、ERP、バッチ処理、データウェアハウス、セキュリティ、そしてハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)と呼ばれる分野である。これらの用途はCPUリソースおよび大容量のメモリを必要とする。この領域については、「IAサーバーはまだまだ弱いのが実情」であり、その状況を変えるために多大なCPUリソースとメモリ空間をもったItanuimファミリーが投入された。

 スペックで比較すれば決してRISCに劣るわけではない。むしろ、「将来のロードマップで考えれば、ItaniumファミリーのEPICアーキテクチャは今後20年間通用することを想定して作られたもので、例えば3年後の発展といったことで考えると、ムーアの法則を大きく上回り10倍のパフォーマンス向上が実現するといった可能性をもっている。もちろん、RISCの性能も伸びていくだろうが、Itaniumファミリーのアーキテクチャはそれを大きく上回る性能の伸びを発揮することができる新しいもの」とItaniumファミリーの方が優位なのだ。


地道な支援活動を経てようやくソリューション揃う

 にもかかわらず、搭載サーバーではシェア逆転とはならないのは、なぜなのだろうか。

 「コンシューマとは違い、エンタープライズ分野では新システムの導入まで1年間かけて検証作業を行い、さらに導入についても新しいシステムとなれば1年かかかるという場合もある。即新しいシステムに移行するということにはならない」

 特に新しい64ビットCPUとなったことで、その上で動くアプリケーション、OSなどの64ビット対応も必要となる。

 「インテルでは1998年頃から、1万台近いマシンをソフト開発のためにISVに提供するなど、かなり地道なソリューションを揃えるための活動を行ってきた。ようやく最近になってその成果が出て、主要なソリューションはほぼ64ビット対応となった」

 主要なアプリケーションとしては、オラクル、DB2、SQLサーバーといったデータベース製品に加え、WebLogic、WebSphereといったアプリケーションサーバー、SAPのERPソリューション、さらにCA、ベリタスといった管理ツールといった分野まで、エンタープライズ領域で利用されている主要アプリケーションの64ビット化が実現した。

 システムインテグレーターへのアピールについても、「アライアンスマネージャーを置く施策が成果として現れ始めた。エンドユーザーにダイレクトでアプローチしているインテルの営業部隊とも連動し、客先で64ビットソリューションの需要がある場合には、システムインテグレーターにそれを伝えてビジネスに結びつけるといった仕掛けも行っている」と、実ビジネスに結びつく連動まで実施している。

 技術面での進化とはまったく異なる、地道な活動を時間をかけ繰り返してきたことで、最近になってようやくItaniumに関するニュースが増え始めたという。

 「実は今年の10月6日から、100日間で100個を超えるItaniumのニュースを作ろうという目標をワールドワイドで掲げていた。ニュースとしては、あるメーカーから新しいItanium搭載のハードウェアが登場したということもニュースのひとつだし、どこかの企業がItaniumを搭載したサーバーを導入したというのもニュースとなる。こうしたニュースが国内だけでもすでに50以上になるなど予想を超えるスピードで、この調子だと100日間で200個のニュースということになるのではないか」

 導入企業としても、これまでは欧米企業が引き合いに出されることが多かったものの、UFJ銀行、富士写真フイルム、カブドットコム証券など日本企業の名前が並ぶようになってきた。

 「日本市場はブレークスルーがあると市場が一気に変化するという特性を持っている。すでに導入作業がスタートしているものも含めて、2005年、2006年になれば導入企業は一気に増える可能性を持っている」と平野統括部長は期待する。

 長い時間をかけたItaniumの市場開拓の取り組みは、ようやく実を結びそうな段階に入ったところのようだ。


 しかし、ItaniumファミリーにはRISC、メインフレームといったターゲット領域での先達とは異なるライバルも存在する。それはIAサーバーで大きな実績をもつXeonプロセッサだ。Xeonも拡張ロードマップが公表され、進化が進んでいるだけに、ハイエンド領域となれば同じインテルのプロセッサ同士が市場の食い合いをするという事態も起こる。

 同じインテルのCPU同士の比較となった場合、「先ほどお話した通り、Itaniumは新たなEPICアーキテクチャのもと、20年間通用することを想定して開発しており、長期での利用を想定するとItaniumということになる。用途としてもERP、データマイニングといったCPU負荷が大きいものにはItaniumの方が適していると考えているが、最終的にどちらを選択するのかはお客様の選択次第。適材適所で選んでいただければいい」と説明する。

 また、Xeon自身が64ビット化される可能性については、「必要があればそういう可能性もあるだろうが、仮にXeonが64ビット化されたとしても、アーキテクチャの違いを考えると、拡張性ではItaniumの方が上であることは間違いない」という。



URL
  インテル株式会社
  http://www.intel.co.jp/


( 三浦 優子 )
2003/12/10 00:00

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