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「IAサーバーもまだまだ差異化できる」-富士通研究所が研究開発戦略を発表


 株式会社富士通研究所は4月17日、同社の研究開発戦略に関する説明会を開催。同社が目指す21世紀型グローバル研究所への取り組み、および2009年度の重点方針などの説明が行われた。


代表取締役社長の村野和雄氏
 同社が目指す21世紀型グローバル研究所について、代表取締役社長の村野和雄氏は、「20世紀はサイエンスとエンジニアリングを原動力に、半導体・情報革命が実現した。21世紀は、その新技術をビジネスモデルにつなげることが重要になっている。また、企業の社会的責任も求められている。われわれは、この両方を実現することで21世紀型グローバル研究所を目指している」と説明。

 それを実現するための10年ビジョンを新たに策定したことも発表。「10年ビジョンでは、ヒューマンセントリックなネットワーク社会の実現を目指している。すべてをつなぐことで価値を生み出し、その価値から人々に対して、“感動”“発見”“信頼と発展”をわれわれの事業領域において提供していく」と述べた。

 これを実現するため、2009年度においては、「主力事業の将来技術に対する研究貢献」と「未知の領域に対する研究開発、新事業の創出」などを柱に取り組むと説明。「主力事業に関しては、簡単・省電力をキーワードとしたIAサーバーの技術開発、他社に先駆けたフィールド実証実験などLTEの差異化技術の開発、仮想プラットフォームの開発などのクラウドコンピューティングなどを行っていく。また、未知の領域に対しては、センサー技術を応用したヒューマンセントリックコンピューティングや、エコロジカルバリューチェーンの構築などグリーンテクノロジーに対する研究開発を進めていく」とした。


主力事業の将来技術に対する研究貢献 未知の領域に対する研究開発、新事業の創出

高速インターコネクト技術

運用管理の簡単化技術
 説明会では、IAサーバーの差異化技術に関する取り組み状況が紹介された。「IAサーバーは、台数ベースで大幅に増加しているものの、サーバーそのものの金額は安く、導入コスト自体は横ばいのまま。しかし、台数の増加に伴い、運用管理コストが大幅に増加するほか、データセンター全体では電力や冷却コストが増加するという課題が存在する。IAサーバーそのものはコモディティ化しており差別化できないとの声があるが、こうした運用管理や、電源管理や冷却といったファシリティを含め、システムとしてみると差異化ポイントはまだまだある」(同社ITシステム研究所 所長の森下哲次氏)と、システム視点で課題の抽出と技術開発を行っていると紹介。

 ひとつの取り組みが、高速インターコネクト技術の開発。同社では、10Gigabit EthernetですべてのIT機器を統合するAll-IP戦略を進めており、この技術を応用したブレードサーバー向けの高速送受信回路を開発。サーバーブレードとエンクロージャのバックプレーンを10Gigabitシリアルで直接接続することで、実装面積で2分の1に、消費電力で4分の1まで削減している。この技術を利用したブレードサーバーは、Xeon 5500番台を搭載した次期製品として近日中に製品化される。

 また、運用管理に関しては、仮想マシンの動的配備を実現する技術を開発。これは、運用ポリシーに応じて複数の物理マシン上の仮想マシンを動的に再配置する技術で、Xenをベースに開発されている。たとえば、高信頼というポリシーを設定した場合、複数の物理サーバーに分散する形で仮想マシンを配置することで物理障害に対応。また、省電力というポリシーを設定した場合は、なるべく少数の物理マシンに集約し、残りの物理マシンの電源をオフにするといった配置が可能。現在、自社データセンターでの試行運用に向け作業中で、2010年には大規模データセンターでの活用を目指すとしている。


 そのほか、LTEへの取り組み状況も紹介。LTE(Long Term Evolution)は次世代携帯電話の通信規格のひとつで、最大で下り326.4Mbps、上り86.4Mbpsと高速なデータ通信が可能なのが特長。同社では、いつでもどこでもITリソースやアプリケーションを利用できる社会基盤として注目しており、いち早く研究開発に取り組んでいる。

 同社ネットワークシステム研究所 所長代理の福田英輔氏は、「LTEの開発において、システム面や既存インフラからの移行、コストや各国対応といった課題が存在している。システム関連では、NTTドコモと共同実証実験を行っており、最大240Mbps相当のスループットを実証したり、MIMOアンテナ多重数の適応切り替えの有効性などを立証した。また、地図情報kらスループットを予測して基地局設置の最適化を行ったり、端末ごとにパケットの送信順序を最適化するなどスループットの均質化技術の研究を行っている。また、3GとLTEの共用増幅方式を用いた共用増幅器を開発することで、既存3GからLTEへ容易に移行できる環境を構築したり、複数の周波数にチューニング可能なマルチバンドアンテナの開発など、コスト面で貢献できる技術開発を行っている」と、LTEでも差異化可能な技術を積極的に開発していると紹介した。


無線ネットワークエンジニアリング セル内スループットの均質化技術 システム移行が容易な共用増幅器

 なお、説明会終了後に行われた見学会では、同日発表された「自動データ消去機能を実現した安全USBメモリ」「手のひら静脈認証の高速撮影技術」などの最新技術が展示された。



URL
  株式会社富士通研究所
  http://jp.fujitsu.com/group/labs/

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( 福浦 一広 )
2009/04/17 18:20

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