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徳島県上勝町とマイクロソフト、地域振興への取り組み状況を説明


この1年間の成果

上勝町ICT戦略検討委員会の委員長、横石知二氏は、徳島県のイベント会場から、Web会議システム経由で説明した
 徳島県勝浦郡の上勝町とマイクロソフト株式会社は11月7日、ICT利活用による上勝町の地域振興に関して、これまでの活動実績と今後の活動計画を発表した。上勝町とマイクロソフトでは、2007年10月より取り組みを開始しているが、すでに経費削減や定住者増加など、相応の成果があったとのこと。今後はこれをさらに拡大し、いっそうの地域振興を図るとしている。

 上勝町は人口2000名あまりの小さな町だが、従来よりICTを活用した地域振興を行っており、総務省が展開した「加入者系光ファイバ網設備整備事業」のモデル地域として、隅々まで光ファイバーによる高速回線が行き届いているほど。そうしたICT活用の一環として上勝町は、2007年7月に四国支店を開設したマイクロソフトと覚書を締結し、共同で取り組みを進めてきた。

 取り組みの主体となったのは、役場、商工会、第三セクター、県内企業、徳島大学、NPO団体、徳島県などで組織された「上勝町ICT戦略検討委員会」。マイクロソフトは、「当社が積極的な支援を行わないという状況になっても、しっかりと活動が5年10年と続いていくようにしたい」(同社 業務執行役員 最高技術責任者 加治佐俊一氏)という意図から、アドバイザーとしての参加にとどめ、側面から支援を行ってきた。

 具体的な施策としては、まず、パソコン利活用についての住民向けICT勉強会を、2008年2月より5回開催。毎回40名以上、多いときでは100名を超える参加者が集まるなど、非常に盛況だったという。また、インターネットを通じて、農家が売り上げを把握できるようにする情報システムの導入を促進した結果、2007年10月時点で58件だった導入数が、2008年10月には122件まで増加した。

 さらに、Web会議システムの導入による大きな経費節減も実現した。マイクロソフトのOffice Live Meetingを活用し、高松や東京と約4カ月間で8回のオンライン会議を実施した結果、交通費に換算して約72万円の経費削減効果があったとのこと。この効果について、上勝町ICT戦略検討委員会の委員長を務める、株式会社いろどり 横石知二代表取締役は、「徳島からすると東京はとても遠く、何人も行くと運賃だけでも経費がかかる。人件費も合わせると大きな節約効果がある」と話す。

 加えて一連の取り組みの中では、2007年10月以降の1年で、Uターン/Iターンを合わせて前年同期間比2.25倍の18名が町内へ転入するなど、人の面でも大きな効果を上げているという。この中には、上勝町へ事務所移転をする東京の個人経営者も含まれているほか、転入者の平均年齢が28歳と若いことから、課題であった後継者確保にも効果があったとした。「上勝町に住みたい、仕事したいという方が来てくれることはとても大事。また後継者を育てるという課題が実現できたことも大きな成果だ。(転入者が)町内でブログを発信するなど、情報を出すことで、地域へ溶け込むスピードが速くなる。ICTの活用で地域住民にとってもいいつながりができた」(横石氏)。


上勝町の笠松和市町長
 一方今後については、「上勝町ICT戦略3カ年計画(仮称)」を策定し、2009~2011年度の3年間で推進する計画。具体的には、ICT勉強会を継続するほか、主に高齢者に向けた巡回啓発セミナーの実施、パソコン教室の開設などによって、ICTリテラシーの向上を目指す。さらに、「産業情報発信プロジェクトチーム」を結成し、農業・林業・観光・市民活動の各分野で、インターネットによる情報発信を促進。加えて、情報を集約し、ワンストップで発信するためのポータルサイトを、2009年3月の公開を目標に作成するとのこと。あわせて、定住者を受け入れるための、住宅の用意も進めていく。

 一方で横石氏は、「これまでの活動が産業振興を中心に行われたきたことから、高齢者の安否確認や福祉などにも適用したい」との考えを示す。これについては上勝町の笠松和市町長も、「今の画像は鮮明で、遠隔医療でも、どこがおかしいかは本当によく分かり、専門医なら判定が可能。田舎でも安心、安全な医療システムができるのではないか」と述べ、医療分野への適用を検討する余地があるとした。また、「教育が最大のネック。これからはICTでやる仕組みを作れば、離島や過疎地域でも高等教育を受けられるようになるのではないか。そういった仕組みを作らない限り、若い人が出て行ってしまう。これから作らないといけない」(笠松町長)とも話し、教育面でのICT活用についても、可能性を探るとしている。

 「地方が生きていくためにはICTしかない、というくらい大事なこと。情報が入ってくることによって、理解ができ、気付き、行動に移せるのだから、情報がもっとも大事なツールとなることは間違いない。その点をマイクロソフトと引き続き取り組みながら、地域が元気になるように活動していく」(横石氏)。



URL
  上勝町
  http://www.kamikatsu.jp/
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  プレスリリース
  http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3576

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( 石井 一志 )
2008/11/07 15:17

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