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発注者ビュー検討会に続き、「非機能要求グレード検討会」が6社により発足

性能やセキュリティなどの要件を見える化

左から、MDISの下間氏、NECの寺尾氏、NTTデータの重木氏、富士通の弓場氏、日立の中島氏、OKIの松下氏

非機能要求の例
 株式会社NTTデータ、富士通株式会社、日本電気株式会社(以下、NEC)、株式会社日立製作所(以下、日立)、三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(以下、MDIS)、沖電気工業株式会社(以下、OKI)の6社は4月14日、「システム基盤の発注者要求を見える化する非機能要求グレード検討会(以下、非機能要求グレード検討会)」を発足すると発表した。

 NTTデータからは代表取締役副社長の重木昭信氏、富士通からは経営執行役 上席常務の弓場英明氏、NECからは執行役員常務の寺尾実氏、日立からは執行役常務の中島純三氏、MDISからは取締役の下間芳樹氏、OKIからは常務取締役 CIOの松下政好氏、が登壇し、同検討会の活動内容について説明した。

 同検討会の目的は、システム開発における非機能要求の見える化と確認方法を検討すること。「性能」「可用性」「セキュリティ」「システム移行」「運用」「拡張」などのいわゆる非機能要求については、これまで案件ごとにユーザーと開発ベンダ間で意識のすり合わせが行われていたが、目に見えにくく、はっきりしたスペックがあるわけでもない非機能要求では、あとになってから意識のそごが生じやすい。そこで同検討会では、各種の非機能要求について、ユーザーが期待するシステムの特性を分類し、グレード表として整理を行う。

 これは災害対策(DR)を例に取ると分かりやすい。DRでは、サーバーレベルの二重化、サーバーを設置する部屋レベルの二重化、フロアレベルの二重化、地域レベルの二重化、国レベルの二重化など、守るべき資産の価値に応じて対策の度合いを決定するのが一般的だ。

 非機能要求グレード検討会が行うのは、「性能」「可用性」「セキュリティ」などにおいても、このDRの考え方のように、要求の度合いに応じた対策のグレード表を作成することである。「これにより、発注者と受注者で要求を定める場面で、選択肢の中から必要な要求を打ち合わせできるので、意識のすり合わせがしやすくなる」とNTTデータの重木副社長は語る。

 日立の中島常務も「これまでは機能要求のすり合わせばかりに目が向けられてきたが、そもそもシステムを構築する本来狙いは、非機能要求の中に存在するもの。ここで、発注者と受注者の間の合意が取れていないと、手戻りなどによるインパクトは、機能要求の場合よりも大きい。逆に非機能要求でしっかり合意が取れていれば、経営者の狙いを明確化することが可能になり、システム開発により目を向けて、もっとコミットしてくれるようにもなるだろう」と、同検討会の意義を述べた。


非機能要求は特に、発注者と受注者間での意識のすり合わせが難しい 期待される効果 非機能要求をメニュー化するグレードの概要

 定義する項目は大まかに「性能」「可用性」「セキュリティ」「システム移行」「運用」「拡張」の6つ、細かくはおよそ200項目ほどを現時点で予定しているが、最終的に何項目でどの程度の粒度とするかは、これからの検討課題。重木氏は「現時点ではっきりとはいえないが」と前置きした上で、「すべてを定義するのは難しいので、非機能要求の中でも特にインパクトの大きいものを優先していくことになるだろう。あまり細かくしすぎても逆に分かりづらくなる可能性があるので、ユーザーにとっての分かりやすさをめざす。グレードの段階は、項目によっては2段階だったり、5段階だったりもするだろう。200もの小項目を作るとすると、相関関係も出てくるはずなので、そこも含めてややこしくならないように調整したい」と語った。

 なお、主に機能要求についての合意方法を検討していた「発注者ビュー検討会」では、ユーザー企業にレビューを行ってもらうなどもしていたが、そのタイミングが成果物ができてからだったため、遅いとの指摘もあった。「そこで今回は、成果物ができ上がる前にできるだけ早くユーザー企業の協力を得られるように尽力したい」(重木氏)としている。

 また、非機能要求は開発におけるノウハウ中のノウハウといえる。この部分を各社が共通化することで競争力が低下するなどの問題はないのか。これに対して重木氏は「確かにそうだがそれよりも、自動改札システムダウンの事例を見るまでもなく、非機能要求におけるトラブルが社会に与える影響は、ITインフラの重要性が高まるに応じてどんどん大きくなっている。ノウハウを共通化することによるリスクよりも、こうした社会規模のリスクを考えなければいけない時代になっている」と説明。またNECの寺尾常務も「今回作成するのは、あくまでユーザーとベンダ間の意識のすりあわせを行うためのツール。実際に開発する際の技術や製品で差別化できるので問題ない」と語った。

 同検討会のロードマップとしては、2008年度上期に、6社の事例や知見を収集し、どのような表現方法がよいかを検討。同下期にそれらを取りまとめ、およそ1年後には「グレード標準案」として発表。2009年度上期の半年間で、関連団体への働きかけや出版物による普及展開を図る方針とのこと。



URL
  株式会社NTTデータ
  http://www.nttdata.co.jp/
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/
  日本電気株式会社
  http://www.nec.co.jp/
  株式会社日立製作所
  http://www.hitachi.co.jp/
  三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社
  http://www.mdis.co.jp/
  沖電気工業株式会社
  http://www.oki.com/jp/
  ニュースリリース
  http://www.nttdata.co.jp/release/2008/041401.html

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( 川島 弘之 )
2008/04/14 18:56

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