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「ハイパフォーマンスネットワーキングを支えるのはJUNOSだ」-米Juniper APAC担当CTO


 米Juniper Networks(以下、Juniper)はもともとキャリアで実績のあるベンダだが、ここ数年はさまざまなベンダを買収し、企業向けのソリューション事業にも力を入れてきている。今回は、アジア太平洋地域(APAC)担当CTOのマット・コロン氏に、同社の方向性と強みについて話を聞いた。


アジア太平洋地域(APAC)担当CTOのマット・コロン氏
―Juniperでは、ハイパフォーマンスネットワーキング(HPN)という概念を打ち出していますね。

コロン氏
 さまざまな雑誌や業界フォーラムでの受賞によって認知されているように、当社がこの分野のリーダーである点を強調したいですね。直近では、Interop Toklyo 2007でコアルータの「T1600」がグランプリを受賞しました。こうしたイノベーションを提供するためには資金も必要ですし、またイノベーションを駆動するための実績も必要ですが、当社は双方で強い基盤を持っています。毎四半期に1億2000万ドルを投資している当社は、HPNを担う中心にいるといえます。

 IT予算は無限にあるわけではなく、有限の投資を有効に活用しなくてはいけません。そのため、業務サイドからは常に高度な技術の活用が求められますので、こうした最先端の技術は顧客のビジネスを支えていくためにきわめて重要です。予算を増大させずに課題に応えるためには運用コストの削減とイノベーションのためのゆとりを獲得する必要があり、その両面で当社はCIOのニーズに応えていくことをコミットしています。

 またこうした業界のニーズは当社のこれまでのビジョン、実践してきたミッションと合致しているのです。設立当初から、当社では製品開発に関して明確な理念を守ってきました。例えば、各機能ごとに専用のリソースを割り当てる方針を貫き、制御とパケット転送とサービスのリソースを分割して、おのおのを明確にしています。例えばコントロールプレーンに何かあってもフォワーディングプレーンに影響が出ないよう、サービスを追加する際にも影響が出ないように、リソース分割という基本方針を徹底してきたのです。

 もちろん、こうした技術的なアプローチと対応するビジネス上のアプローチも必要で、今日のCIOの要件に応えるビジネスアプローチも重要です。追加機能の利用に際して追加のライセンス料や経費がかからないようなビジネス上の制度も設けています。その、もっとも典型的な例がルータOSの「JUNOS」でしょう。


―それは具体的にはどういった点でしょう?

コロン氏
 JUNOSのソフトウェアがモジュラー型の構造になっていることが1つ。またもう1つの特徴として、“シングルトレイン”のリリースを続けていることが挙げられます。JUNOSの優秀性については、面白い実体験がありますのでお話ししましょう。8年前にJuniperに入社し、当初教育部門でトレーナーをしていたときの逸話です。JUNOSは従来のルータOSのアプローチとはまったくことなるものだったので、毎週のトレーニング監視時には、受講生は最初はぶつぶつ文句を言っていました。しかし1日目の昼くらいからはその特徴を実感し「ほかのメーカーはなぜこうしたアプローチを取らないのか」という調子に変わってくるのです。

 このように、JUNOSの基本コンセプトはユーザーに現実的な直接メリットを提供できます。モジュラー構造にしていることから、コードのある部分で障害が起こってもほかの部分に悪影響を及ぼさないという、高い可用性が実現できます。また、これはセキュリティの面でもメリットをもたらします。あるモジュールに外部からの侵入を許してしまったとしても、別のモジュールへ侵入を拡げていくのは容易ではないからです。同様に、新しい機能の拡張・追加の面でも有利ですね。モノリシックOSと比べて新しい機能を容易に統合できますから。


―それでは、他社のOSと比べてJUNOSはどのくらい先を行っているのでしょう?

コロン氏
 JUNOSは、Juniperが会社として設立される前の1995年から開発が進められてきました。言うなれば、それ以降教室でずっと学び続けてきたのです。教室とは当初インターネットでしたし、その次は企業ネットワーク、今はNGNとなっていまして、全体としてポジティブな経験を積み上げていくことができました。これからも時間をかけてそういった経験を生かしていきたいですね。また、企業買収からも大きな経験を得ました。Peribitの買収によって、アプリケーションアクセラレーションを一から勉強する必要がなくなりましたし、ネットワークセキュリティでもっとも優れた製品を持つNetScreenの買収はさらに重要だったと思います。

 9~10カ月ほど前に、エンタープライズ向けにJUNOSへ機能を統合するという方向を発表しましたが、JUNOSの基本的な能力に加えて、企業が求めるさまざまな高機能モジュールを追加することは、顧客のニーズを満たすための大きな力になります。現在はそれらの統合を急ピッチで図っているところでして、今後、JUNOS関連で大きな発表をすることになるのは間違いないでしょう。JUNOSが基本機能として持っているパフォーマンスやアベイラビリティは、HPN企業が本当に求めていることだという点を強調しておきます。そこにさらに新機能を統合することによって、さらに当社の価値提案は魅力的になっていくことでしょう。


―買収製品の統合ということでは、昨年リリースされたSSGシリーズは、ルータの機能とセキュリティ製品の機能を統合した、これまでにないタイプの製品だと思います。製品の統合をこれからも積極的に進めていくのですか?

コロン氏
 当社では確かにそういった方向性をとっていますが、同じ筐体に新しい機能を追加する際には、処理能力の面など考えなくてはいけない課題もあります。1つの筐体にあらゆるソリューションをまとめたものがベストでしょうが、今日の厳しいネットワーク要件の中では、そうしたものはすぐにできないでしょう。その中で当社では、ソフトウェア自体の最適化や、より高度な処理能力を持つ汎用プロセッサの採用などでニーズに応えようとしています。


―製品を統合していく上では、管理コンソールの統合も課題ですね。

コロン氏
 その点は当社でも考慮しています。Juniperにはすでに統合されたセキュリティ管理プラットフォームが存在しますが、今後それが拡大されて、当社のすべての製品をカバーできるようになるのかどうかは、とても関心のあるところでしょうね。具体的なタイムラインは申し上げられませんが、管理の統合については、そのうちに新しい施策をお話しできるでしょう。


―こうした流れの中で、日本特有の要件に対応するためのリソースとしては、どのくらいが割かれているのでしょうか?

コロン氏
 日本の顧客へのサービス提供に特化した50名近いエンジニアがおり、また私の直属の部下3名が、特に日本市場向けのプロダクトラインマネージメントにかかわっています。例えばその中の1人は日本におり、日本市場にフォーカスしたR&Dサポートのディレクターという役割を担っています。日本の顧客の技術的な要件が、世界中の研究開発に反映されるような仕事をしていて、全世界的に調整を行っているんですよ。


―日本固有の要件かどうかはわかりませんが、現在のデータセンターにおいては電力消費がトレンドの1つになっているようです。Juniperでもそれに対する取り組みは行っていますでしょうか?

コロン氏
 電力を抑えるニーズについてアピールしている企業の1社は当社なんです。自分が覚えている昔にさかのぼっても、常に省エネルギーと熱の分散・低減については重視しています。例えばInterop Tokyo 2007では、T1600と競合製品に同じ負荷をかけた場合に、消費電力が競合製品よりも4割も少ないという結果を提示していました。実は、こういった省エネルギーと熱の低減という課題は、ユーザーにとってだけではなく、当社にとっても重要なテーマなんです。シャーシの中での熱の低減は大きな課題ですので、ルータ自身のメリットのために行うことがユーザーのメリットにもなり、データセンターの課題克服にもなる、というようにつながっています。



URL
  ジュニパーネットワークス株式会社
  http://juniper.co.jp/

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( 石井 一志 )
2007/07/04 11:01

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