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横河電機と富士通、次世代の光通信システムで提携

横河製化合物半導体活用し共同開発

横河電機 内田勲社長(左)と富士通 伊東千秋専務
 横河電機株式会社と富士通株式会社は3月1日、高速光電子デバイス技術を中心としたシステム要素技術およびキーコンポーネントの共同開発を行う、パートナーシップを締結した。

 今回の提携で、横河電機の高速化合物半導体デバイス技術と、富士通の光システム開発技術をベースに、次世代の光伝送システム「超高速光伝送システム用キーコンポーネント」を共同開発する。

 この次世代光伝送システムとは、おおよそ10年後頃に実用となるものを指す。コンシューマ用通信分野では10Gシステムの次のもの。エンタープライズ用ネットワークシステムとしては、10Gビットイーサシステムの次のものを想定している。

 その実現のために両社は、1)次世代システム開発ロードマップの共有化、2)ビジネスプランの共同策定、を実施する。

 両社の提携によって、富士通では超高速電送装置の開発・製造を他社に先駆けて手がけることで、国内外での光伝送システム分野におけるシェアの拡大を狙う。


今回の提携により実現する両社のメリット

 横河電機では、市場ニーズに即した製品の開発ができる環境を作ることで、現在は10億円程度の光通信向けの化合物半導体ビジネスを早期拡大することを狙う。

 横河電機が研究・開発している化合物半導体とは、現在のシリコン半導体の原料がシリコンというひとつの元素でできているのに対し、インジウム・リンなどの複数の元素を混ぜた半導体である。高速・高周波動作という特徴をもっていることから、発光、受光といった光応用に適した機能を実現できる。

 横河電機では昨年6月、神奈川県相模原市に250億円の費用をかけて、光通信向けに化合物半導体の開発・生産を行う拠点「相模原事業所」を新設すると発表している。今回の提携においても、相模原事業所を活用し、「開発から生産まで一貫して提供できる生産拠点の構築によって、社会インフラとなっていく光伝送システム向け化合物半導体を、長期的に安定して提供できる体制を構築する」(横河電機・フォトニクスデバイス事業センター長・三浦明氏)方針だ。


横河電機の化合物半導体へのこれまでの取り組み 横河電機の化合物半導体技術 新設する相模原事業所の概要

横河電機の内田勲社長

富士通の伊東千秋・取締役専務
 横河電機の内田勲社長は、「当社は化合物半導体の可能性を信じ、およそ23年間、研究・開発を続けてきた。最近になり、光パケットネットワークへの利用の実証実験にも成功した実績をもつ。2010年までに1000億円規模のビジネスに育て、計測器、制御システムに続く3番目のビジネスの柱とするという目標を立てている。その実現に向けて、今回の提携は意味あるものと考えている」と説明している。

 富士通の伊東千秋・取締役専務は、「富士通は光伝送ネットワークシステムにおいて、日本、アメリカの両国でトップシェアの地位を獲得している。特に米国は急速にブロードバンド化が進展しており、光伝送システムの活用が急速に進んでいる。ネットワークシステムは社会インフラとなりつつあるため、米国市場で日本のベンダーの採用に対して厳しい面があるが、当社では市場開拓のために、最先端技術であるという点を強みとしている。最先端技術の提供という点で、今回の提携は大きな意味がある」とした。

 また、現行ビジネスにおいても、「現行の光伝送システムビジネスを行うにあたっても、特に米国では次世代ネットワークにどう移行していくのかを問われることが多く、今回の提携によってその点はきちんと対応していると顧客に対して示すことができる。次世代ビジネスだけでなく、現行のビジネスにおいても、今回の提携がプラスに作用するのではないか」(富士通・経営執行役・フォトニクス事業本部長・近間輝美氏)

 化合物半導体は、富士通自身でも研究・開発を手がけた時期もあったが、現在では住友電工と富士通が合弁で設立したユーディナ デバイスに事業を移管している。「当社自身が手がけるデバイス事業は、シリコンベースのものに絞り込むという選択をすでに行っている。化合物半導体については、今回の光伝送システムは横河さんがベストパートナーであると判断した。今後、おのおのの得意な分野をよく見極めて、複数の企業とおつきあいしていきたい」(富士通・伊東専務)というスタンスでのぞむ。


富士通の光伝送ネットワーク事業での現状 富士通と横河電機のこれまでの取り組み


URL
  横河電機株式会社
  http://www.yokogawa.co.jp/
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/
  プレスリリース
  http://www.yokogawa.co.jp/pr/Corporate/News/2006/pr-press-2006-0301-ja.htm


( 三浦 優子 )
2006/03/01 16:15

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