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【 2012/11/30 】

【 2012/11/29 】

【 2012/11/28 】

カーネル2.6を採用した唯一の企業向けLinux OS「SLES9」

〜IBM Linuxコンファレンス 講演

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)が9月7日・8日の2日間にわたって開催している「IBM Linuxコンファレンス〜秋のLinux祭り」において、「SLES9 - SUSE LINUX最新版テクニカル・オーバービュー」と題し、ノベル株式会社 岡本剛和氏が8月5日に発売されたエンタープライズ向けの最新Linux OS「Novell SUSE LINUX Enterprise Server 9(以下、SLES9)」を紹介した。

 SUSE LINUXは、1993年に最初のLinuxディストリビューターとして独ニュールンベルグに設立され、2004年1月に米Novellにより買収されている。現在でもヨーロッパではトップ、世界でもRed Hatに続き第2位のシェアを占めるほか、いち早く64ビット環境をサポートするなどハイエンド分野でも強く、IBM eServer zSeries/S390での稼働は8割を、またiSeries/pSeriesでも5割を超えるシステムで採用されている。


ノベル株式会社 岡本剛和氏

エンタープライズ、コンシューマの2つの製品ラインが、異なるサイクルでリリースされる

SUSE LINUXの開発プロセス
 SUSE LINUXの製品ラインは、コンシューマー向けの「SUSE LINUX Professional」とSLESに分かれており、Proが約6カ月ごとにリリースされるのに比べ、「エンタープライズでの利用を想定するSLESは、12〜18カ月間隔でリリースされ、5年間のサポートを提供している」という。

 SUSE LINUXの開発プロセスで特徴的なのはAuto Buildだ。同社では、ばらばらに開発されたLinuxカーネルやパッチ、そしてパッケージに同梱するオープンソースソフトウェア(OSS)のコミュニティでの成果を、「エンタープライズに利用可能な時点でフリーズする」。その後、これを共通コードベースとしてまとめ上げる。そしてAuto Buildの仕組みにより、ひとつのコードをもとにして、x86のほか、64ビット環境となるEM64T、AMD64、Itanium 2、またIBM eServer iSeries/pSeries/zSeries/S390といった対応プラットフォーム別にコンパイルする。

 Auto Buildによるメリットとしては、「すべて同じコードから生成されるため、ISVによるアプリケーションは、基本的にリコンパイルするだけでポーティングできる」点のほか、「Auto Buildにはテスティングのプロセスも含まれるため、同梱RPMの動作を確認した後、すばやくビルドできる。各プラットフォームに対して同時にパッチを提供でき、オペレーションミスも発生しない」利点もあるという。

 SLES9は、エンタープライズ向けのLinuxディストリビューションとしては初めてカーネル2.6を採用したLinux OS。カーネル2.6では主にスケーラビリティとパフォーマンスが向上しており、こうした機能拡張の恩恵を受け、さらにサポートも提供されるLinux OSは現時点でSLES9しかない。

 ディスク書き込みを制御するI/Oスケジューラでは、並列動作するアプリケーション間で処理を均等に割り振る「CFQ」のほか、処理時間を指定する「Deadline」、予測を行う「Anticipatory」、そして「NOOP」のうちひとつをニーズにより選択でき、「DB2を利用した場合、Deadlineを利用するとパフォーマンスが改善される」という。このほかI/Oでの特徴として、ファイルシステムを経由せず書き込みを行うRaw I/Oや、非同期I/Oなど主にデータベースなどで利用される方式や、ストレージへの書き込みに複数チャネルを用いることで、帯域幅と冗長性を確保するマルチパスI/Oなども利用可能となっている。

 このほか、これまでプロセス単位で割り当てられていたスレッドを細分化し、処理効率を向上する「Native POSIX Thread Library(NPTL)」や、SMP環境でのメモリアクセスを効率化する「NUMA(Non-Uniform Memory Architecture)」、またハイパースレッディングにも対応している。


 これらカーネル2.6で提供される機能のほかにも、SLES9には2ノード間でActive-Standby構成でき、「サービスを割り振って処理を効率化することも可能な」OSSクラスタ「heartbeat」、サーバー間のロードバランス機能を提供する「Linux Virtual Server」なども同梱され、自動フェイルオーバーや、ネットワーク越しにミラーリングを行える「Distributed Replicated Block Device(DRBD)」の機能も備える。またサーバーのクラスタリングにおける相互接続などに用いられ、ネットワークのI/Oを高速化させるアーキテクチャ「InfiniBand」にも対応している。

 さらにクラッシュダンプやファストリブート、ネットワークからのコンソールアクセスといったRAS機能や、クラスタボリューム管理機能も備えることでダウンタイムも最小限となっており、OSDL内のワークグループにより策定された通信業界向けの業界標準であるCarrier Grade Linux(CGL)や、同じくデータセンター向けのData Center Linux(DCL)といった仕様にも対応している。

 このほかサーバー内に複数のLinux仮想環境を稼働できるUser Mode Linux、eSeries/iSeries/zSeriesの各サーバーの機能であるCPUのLPAR(Logical Partition)にも対応する。IBMと共同開発したCKRM(Class-base Kernel Resource Management)では、メモリやネットワーク帯域といったリソースの割り振り上限をプロセスに対して指定できるとのことだ。


WindowsコントロールパネルをイメージするGUIの環境設定ツール「YaST」

分野別に導入パッケージの一覧を確認できる
 管理面では、Windowsのコントロールパネルをイメージさせる「YaST(Yet Another! Setup Tools)」により、OS・サービスの設定やソフトウェアのインストールやセキュリティパッチの自動適用などがGUIで行える。ISVにはSDKも提供され、YaSTをカスタマイズして自社ソフトウェアに対応させることも可能だ。

 パッチの適用では安定性の観点から「同梱のOSSも含め、運用環境での自動メジャーバージョンアップはしない」という。例えばパッケージに含まれるOSSのバージョンが古く、新たな脆弱性パッチがOSSの最新バージョンに対してのみ配布されている場合には、「SUSEが自社でバックポーティングしてパッチを提供する」という。

 YaSTはシステム管理ツールとの標準インターフェイス仕様であるCMI(Common Information Model)にも標準で対応しており、モジュールを導入せずにTivoliやOpenViewなどと連携したシステム管理が可能となっている。

 また対象サーバーの環境に応じて、配布パッケージをPush配信できる「ZENworks Linux Management(ZLM)」との連携にも対応している。ZLMは他のLinux環境にも対応しており、インベントリ管理や配信後のロールバック機能も備えるという。




URL
  IBM Linux コンファレンス
  http://www.ibm.com/jp/linux/event/2004/matsuri/
  ノベル株式会社
  http://www.novell.co.jp/
  Novell SUSE LINUX Enterprise Server 9
  http://www.novell.co.jp/products/linux/suse/server/sles9/

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( 岩崎 宰守 )
2004/09/08 00:00

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