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シマンテックのWindows向けデータ保護ソリューション「Backup Exec 10d」


ベリタスソフトウェア株式会社 シマンテックコーポレーション マーケティング本部 ソリューションマーケティング部 ソリューションマーケティングマネージャーの大畑正典氏
 以前、本連載ではベリタスソフトウェア(現シマンテック)が持つ幅広いストレージ・アプリケーションについて詳しく取り上げてきたが、多くのユーザーにとって身近なデータ保護ソリューション「Symantec Backup Exec」には触れていなかった。

 今回は、ベリタスソフトウェア株式会社 シマンテックコーポレーション マーケティング本部 ソリューションマーケティング部 ソリューションマーケティングマネージャーの大畑正典氏に、Windowsプラットフォーム向けにD2D2T(Disk to Disk to Tape)による堅固なデータ保護ソリューションを提供する「Symantec Backup Exec 10d for Windows Server」(以下、Backup Exec)についてお話を伺った。


マイクロソフトのDPMをD2D2Tへと拡張するDPMエージェント

Data Protection Managerエージェントを通じて、Backup Exec環境にDPM環境を取り込むことができる。これにより、D2D2Tの強固なバックアップ体制を構築可能だ(出典:ベリタスソフトウェア株式会社、以下同様)。
 10月31日の連載「マイクロソフトのデータ保護ソリューション「Microsoft System Center Data Protection Manager 2006」」では、Backup Exec向けにMicrosoft Data Protection Managerエージェント(以下、DPMエージェント)が追加されたことを述べた。マイクロソフトのDPMは、Windowsファイルサーバー向けに開発されたD2Dデータ保護ソリューションだが、シマンテックのDPMエージェントを通じてBackup ExecとDPMを連携させることにより、複数のDPM環境のバックアップ統合を図ったり、DPM単体では不可能だったD2D2Tによるデータ保護が実現される。

 D2DのみをサポートするDPM環境でいいのか、それともBackup Exec環境にDPMを取り込んでD2D2Tを実現すべきなのかは、結局のところユーザーがどこまでの障害を想定するかに依存している。DPMが想定する基本的なシナリオは、誤ってファイルを消去したり、上書きしてしまったようなときに、管理者のみならずユーザー自身もDPMサーバーからそのファイルを迅速に復元できるというものだ。

 しかし、DPMサーバー自体に障害が発生した場合には少々やっかいだ。DPMサーバーには、DPM自体が管理しているバックアップ対象のユーザーデータに加え、それを管理するSQLサーバーとそのデータベース、さらにはDPMサーバーの基盤となるOS(Windows Server)そのものも含まれている。DPMサーバーを復元するには、これらをすべて元通りに戻さなければならないが、DPM単体ではそれが非常に難しいのだ。

 もちろん、DPMサーバーに障害が発生しても、ファイルサーバーが正常に動作していれば特に大きな問題は発生しない。新しいIAサーバーにWindows ServerとDPMを素早くインストールし、再度ファイルサーバーのバックアップを行えばすむからだ。しかし、DPMサーバーの障害と時を同じくしてファイルサーバーにも障害が発生した場合には完全に無力となってしまう。このようなケースでは、Backup Execを組み合わせたバックアップ二重体制が威力を発揮する。Backup ExecはDPMサーバーの状態を完全に保存できることから、DPMサーバーを元通りに復旧するのも容易だ。また、ファイルサービスを短時間で再開するつもりなら、Backup Execサーバーからファイルサーバーを直接復旧してもよい。


Backup Execの追加によってファイルサーバー以外のデータ保護も可能に

Backup Execを通じて、ファイルサーバーだけでなくExchange ServerやSQL Server、Active Directoryサーバーなども保護対象になる。
 そして、Backup Execを併用すべき理由はもう一つある。それは、ファイルサーバー以外のデータ保護にも対応できることだ。現行のDPMによるバックアップは原則としてファイルサーバーのみを対象としている。しかし、企業の中にはExchange ServerやSQL Serverなど、その他のサービスが動作するサーバーも数多く存在する。しかも、縦割り体制が横行する日本企業では、サーバーごとに異なる管理者が異なるバックアップソフトウェアでデータ保護を行っているケースも多く見受けられる。従って、ひとつのデータ保護ソリューションでこれらを統合する必要があるのだ。

 Backup Execは、こうした全社的なバックアップ統合を図る役割を果たす。DPMエージェントによってDPMサーバーを保護するのはもちろんこと、その他のエージェントを通じてExchange ServerやSQL Server、さらにはOracleやLotus Notes/Domino Serverといったマイクロソフト以外の製品もデータ保護の対象になる。なお、DPMという観点で特に注目すべき点は、Active Directoryサーバーを保護できることだという。

 「DPMは、データアクセス権限の制御にActive Directoryを利用しているため、Active Directoryサーバーが停止するとDPM自体が機能しなくなります。DPMサーバー内のユーザーデータが正常であってもです。このため、全社的なバックアップ統合に限らず、DPMサーバーとActive Directoryサーバーのデータ保護という観点でもBackup Execを導入する意味はあります。DPM自身も次世代バージョンでは機能が拡張される予定ですが、現状のDPM環境をより安全に運用するためにもBackup Execとの併用をおすすめします(大畑氏)」。


単体でD2D2T環境を構築できるBackup Exec 10d Continuous Protection Server

Backup Exec 10d Continuous Protection Serverは、バックアップをとる側のCPSとバックアップをとられる側のCPAによって構成される。CPSはBackup Execメディアサーバーと同一のサーバーにインストールすることも可能だ。
 Backup Execは、DPMとの連携のみならず、単体であっても完全なD2D2Tソリューションを提供する。Backup Execを古くから使用しているユーザーの多くは、D2T(テープに直接バックアップ)をすでに実現しているはずだが、こうしたテープバックアップ環境にD2Dをプラスするのが「Backup Exec 10d Continuous Protection Server」(以下、CPS)だ。Continuous Protectionという名の通り、ディスクベースで継続的にデータを保護できるようにするモジュールである。データ増大が著しい今日、D2Tではバックアップウィンドウの問題が深刻になりがちだが、CPSのD2Dを併用することでこの問題を解消できる。

 CPSは、Backup Execメディアサーバーに共存させる形でインストールするか、スタンドアロンサーバーに独立してインストールするかのどちらかになる。CPSがインストールされたサーバーをProtection Serverと呼び、DPMでいうところのDPMサーバーに相当する。また、CPSでデータ保護を行うサーバーにはCPA(Backup Exec Continuous Protection Agent)をインストールする。このCPAがインストールされたサーバーをBusiness Serverと呼び、DPMでいうところのファイルサーバーに相当する。ただし、CPSはBackup Execがベースにあるので、エージェントの追加によってファイルサーバーだけでなく、Exchange ServerやSQL Serverといったアプリケーションサーバーもデータ保護の対象になる。また、ファイルサーバーとこれらのアプリケーションが共存するBusiness Serverでもデータ保護を行える。

 CPSの仕組みは、DPMとかなり似ている。基本的には、Business Server側のデータ変更をCPAが検知し、その差分をCPSに対してブロック単位で転送する。つまり、ファイルの作成や変更があるたびにその変更が記録されるため、事実上バックアップウィンドウをゼロにできる点はDPMと同じだ。また、VSSスナップショットによる世代管理もサポートしており、好きな時点の好きなファイルを自由に復元できるポイントインタイムリカバリを実現している。さらに、ファイルのアクセス制御にActive Directoryを使用していないことから、Active Directoryを導入していない環境下でも動作可能だ。

 DPMと同様に、ファイルの復元を管理者だけでなくユーザ自身も行える。CPSでは、シンプルなWebインターフェイスを通じてファイルの復元を行う。このとき、DPMはクライアントPC側に特別なモジュールをインストールする必要があるが、CPSはクライアントPCに標準装備のWebブラウザさえあればよい。特別な手順を踏まないという点ではCPSが優れているといえるが、DPMの復元インターフェイスはWindowsの標準インターフェイスと完全に統合されている点が売りなので、モジュールの要・不要が優劣を決めるものではない。どちらの形態がよいかは完全に管理者の好みに左右される。


CPSによるD2D、Backup Execによる2Tを通じて継続的なデータ保護が可能になる。D2Dで素早くデータのバックアップを行い、これをさらに2Tによって業務に影響を与えることなくバックグラウンドでゆっくりとテープに保管すればよい。
CPSのファイル取得インターフェイス。クライアントPCに標準装備のWebブラウザを通じて、ユーザー自身が自分のファイルを復元できる。

シマンテックとマイクロソフトのデータ保護ソリューションは共存共栄の関係

 ファイルサーバー以外のデータ保護にも対応し、単体でD2D2Tを実現しつつ、Active Directoryも不要なCPSは、一見するとDPMに対する最大の競合になるとも考えられる。シマンテックとしては、Backup ExecとDPMエージェントを販売するよりも、Backup ExecとCPSの組み合わせを提供したほうが手っ取り早い。シマンテックは、CPSとDPMをどのように位置付けようとしているのだろうか。大畑氏は次のように回答する。

 「CPSとDPMは決して競合になりません。シマンテックがリーチできなかったバックアップ市場をマイクロソフトが開拓してくれるという点で大いに期待しています。ベリタスはバックアップ市場で長らくビジネスを展開してきましたが、従来のバックアップ市場はホスト世代を経験しているような方が中心となりました。つまり、データのバックアップを行うことは当たり前であると認識しているようなユーザー層です。これに対し、近年のオープン系を管理する方、もっといえばWindows系サーバーを管理する方の中には、バックアップそのものをあまり真剣に考えていない方もかなりいらっしゃいます」。

 「こうした管理者の多くは、いまだにDVDメディアやUSB接続のマスストレージでデータのバックアップを行っているケースが多く見受けられます。もちろん、消えたファイルや上書きしてしまったファイルを戻すだけなら十分かもしれませんが、サーバー自体に障害が発生したときにサーバー復旧を迅速には行えません。特に最近のOSでは、巨大なサービスパックを適用したり、数多くのセキュリティパッチを当てたりしなければなりません。こうした繁雑な作業を想定すると、やはり何らかのデータ保護ソリューションでサーバー自体を保護しておく必要があります」。

 「DPMは、こうしたD2Dバックアップさえ導入していないお客様をファイルサーバーの完全なバックアップへといざなう大きな役割を果たします。ベリタスが何年かかっても獲得できなかった、これらの新しいユーザー層をマイクロソフトのブランド力と営業力によってバックアップ市場に取り込めるようになるのです。この拡大されたDPM市場にDPMエージェントを投入することで、シマンテック自身もビジネスを広げられます」。

 「それと同時に、シマンテックのBackup Execを通じて、テープの必要性にも気づいていただきたいと思います。DPMはあくまでもD2Dのソリューションですが、すべてのお客様がD2Dだけで満足のいくデータ保護を行えるわけではありません。シマンテックは、よりレベルの高いデータ保護を必要としているお客様にとって、DPMのD2Dに加え、Backup Execの2Tも必要であることを啓蒙していきます。このような理由から、シマンテックとマイクロソフトが競合関係になることはありません。むしろこれからのバックアップ市場をさらに活気づける共存共栄の関係となることでしょう」。



URL
  ベリタスソフトウェア株式会社 シマンテックコーポレーション
  http://www.veritas.com/jp/

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  ・ マイクロソフトのデータ保護ソリューション「Microsoft System Center Data Protection Manager 2006」(2005/10/31)


( 伊勢 雅英 )
2005/12/26 00:00

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