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SNWレポート ~Expo会場に展示された注目製品~ [後編]


 4月12日から15日までの4日間、米アリゾナ州のフェニックスでストレージネットワーキング関連の技術カンファレンス「Computerworld Storage Networking World America, Spring 2005」が開催された。後編では、新興企業を中心にExpo会場に展示されていた注目の最新製品を引き続きレポートしていく。


iSCSIやSASに対応した小型のディスクサブシステムが次々と登場

 中小企業を対象とした小型のディスクサブシステムとして、iSCSIやSAS(Serial Attached SCSI)に対応した製品もしくは試作品がいくつか展示されていた。


Promise TechnologyのSATA HDD搭載ディスクサブシステム「VTrak M-class」。外部インターフェイスは2Gbps Fibre ChannelもしくはiSCSI(Gigabit Ethernet)だ
 まず、PC向けの低価格RAIDカードでおなじみのPromise Technologyは、SATA HDDを搭載したディスクサブシステム「VTrak M-class」を展示していた。これは、ドイツのハノーバーで3月に開催されたCeBIT 2005で初めて登場したもので、6月の発売を目指して開発中とのこと。HDDのインターフェイスとして最新のSerial ATA II(SATA II)に対応し、SATA II HDDを選択することでNCQ(Native Command Queuing)や第2世代の帯域幅(3Gbps)を利用できる。NCQによってどれだけパフォーマンスが向上するかは明らかにされていないが、VTrak M-classがマルチユーザー環境で使われることは間違いなく、NCQの恩恵に預かれる確率はかなり高いと考えられる。

 VTrak M-classは、8台、12台、15台のSATA HDDを搭載できる3モデルが用意されており、8台(M200)と12台(M300)のHDDを搭載できるモデルが2Uサイズ、15台(M500)のHDDを搭載できるモデルが3Uサイズである。RAIDレベルは、RAID 0、1、3、5、10、50をサポートし、パフォーマンスは現行製品の2倍に達するという。また、外部インターフェイスとして2G Fibre ChannelとiSCSI(Gigabit Ethernet)の2種類から選択できる。iSCSIモデルはハードウェアベースのiSCSI TOEを内蔵しており、Gigabit Ethernetの転送性能を最大限に引き出せるようになっている。

 Promise Technologyと同じく小型のディスクサブシステムで豊富な実績を持つInfortrendも、2G Fibre ChannelまたはiSCSI(Gigabit Ethernet)を外部インターフェイスに持つSATA HDD搭載ディスクサブシステムを展示していた。HDDの規格としてSATA IIに対応しているため、SATA IIにフル対応したHDDを搭載することでNCQと3Gbpsの高速転送を活用できる。Fibre Channelモデルの「EonStor A24F-R2221」が4Uサイズで24台、iSCSIモデルの「EonStor A12E-G2121」が2Uサイズで12台のHDDを搭載できる。いずれもRAID機能を備えており、RAIDレベルとしてRAID 0、1、0+1、3、5、10、30、50、JBOD、NRAIDをサポートする。

 さらに、nSTORのブースでは、外部インターフェイスにSASを採用したディスクサブシステム「OneStor 5000AA」が展示されていた。HDDとして合計12台のSAS HDD(インターフェイスの帯域幅3Gbps)もしくはSATA/SATA II HDD(1.5Gbps、3Gbps)を搭載できる。これらは自由に混在可能で、転送性能を求めるアプリケーションにはSAS HDDを、ニアラインアプリケーションのような容量重視の用途にはSATA HDDを選択すればよい。また、筐体間のデイジーチェーンを5台までサポートしており、ストレージ容量を48TB(400GBのSATA HDD搭載時)まで段階的に拡張できる。


InfortrendのFibre Channel-SATAディスクサブシステム「EonStor A24F-R2221」
InfortrendのiSCSI-SATAディスクサブシステム「EonStor A24F-R2221」(写真上のディスクサブシステム)
外部インターフェイスにSASを採用したSAS-SAS/SATAディスクサブシステム「OneStor 5000AA」

2.5インチSAS HDDを搭載する高密度のディスクサブシステム

 Advanced Industrial Computer(AIC)のブースでは、同社のラックマウントソリューションの一環として2.5インチのSAS HDDを搭載したストレージサブシステムを展示していた。10台のHDDを搭載できる1Uサイズと24台のHDDを搭載できる2Uサイズがあり、外部インターフェイスはいずれもSASだ。現在、2.5インチのSAS HDDは回転速度が10000rpmのSeagate Savvioと富士通 MAV20xxRCシリーズのみだが、将来的に15000rpmの製品が発売されれば、こちらもそのまま搭載できるという。

 AICは、ラックマウントスペースあたりのデータ転送速度(IOPS/U)が3.5インチHDDよりも高いこと、そしてHDDあたりの消費電力が40%少ないことを2.5インチHDDの採用理由として挙げている。ただし、消費電力についてはそのまま鵜呑みにしない方がよい。というのも、HDDあたりの消費電力が削減されていても、搭載台数が増えれば筐体全体の消費電力は削減されないからだ。例えば、フロントパネルでホットスワップ可能な構成の場合、2Uサイズでは3.5インチHDDが12台、2.5インチHDDが24台搭載できる。このため、フル搭載時には2.5インチHDDのほうが20%増える計算となり、消費電力の面で必ずしもメリットはないのだ。

 また、3.5インチHDDに対する2.5インチHDDの価格、容量面のデメリットも知っておかなければならない。SAS HDDを例にとると、3.5インチは300GBに達しているが、2.5インチは73GBに過ぎない。また、2.5インチSAS HDDは少容量ながらかなり値が張っている。従って、当面は3.5インチSAS HDDが主流を占めるものと予想される。もちろん、HDDの長い歴史をたどれば、そこにはダウンサイジングの流れがある。将来的に2.5インチへと移行する時期が訪れれば、AICのような2.5インチソリューションが断然生きてくる。正直、今すぐに売れる製品かどうかは微妙なのだが、こうした新しいソリューションを他社に先駆けて投入したAICの積極的な姿勢は高く評価しておきたい。


AICのSAS-SAS/SATAディスクサブシステム
ディスクサブシステムに内蔵の2.5インチSAS HDD。現時点ではSeagate Savvioと富士通 MAV20xxRCシリーズくらいしか選択肢がない

NetAppとの提携でメジャー度アップが期待されるSyncsortのBackup Express

 Syncsortのブースでは、さまざまなコンピュータ環境に対応した高性能な企業データ保護ソリューション「Backup Express」が展示されていた。オープン系の環境ではなじみの薄いSyncsortだが、もともとはメインフレーム向けのデータ管理ソフトウェア、データウェアハウス・ソフトウェアを開発していた老舗のソフトウェア会社だ。現在は、メインフレーム、UNIX、Linux、Windowsという幅広いプラットフォームをサポートしていることが大きな強みとなっている。

 Backup Expressの最大の特徴は、ヘテロジニアスな環境においてスナップショット、イメージ、高速リカバリの機能を統合し、一つのSANの中でUNIX、Windows、NetWare、Linux、NDMP/NASを自由に組み合わせられることだ。また、変更データのみをバックアップ用ストレージに転送するNDMPベースの増分バックアップに対応し、各サーバーのデータを単一のストレージに一元保管、管理できる。さらに、カタログとWebブラウザベースのGUIによって管理性も向上している。

 Synsortのスタッフによれば、Backup Expressに関するホットな話題はNetAppとの提携だという。最新版のBackup Express 2.3には、NetApp SnapVaultテクノロジが搭載されており、ディスクベースのバックアップ/リストアが大幅に強化されている。近年、テープレスによるバックアップが注目を浴びているが、こうしたアプローチに対する具体的なソリューションがNetAppのNAS(例えばATA HDDを搭載したNearStoreシリーズ)とBackup Expressの組み合わせというわけだ。


ブロックベースのデータバックアップにより、バックアップ所要時間とCPU負荷が大幅に軽減する 最も基本的なバックアップ、リストアの流れを示したもの。Backup Expressは、NDMPに基づく増分バックアップに対応している

継続データ保護を安価に実現するXOsoftの製品群

プライマリサイトとリモートサイト間をWANSyncで結び、Microsoft Exchange Serverのデータレプリケーションを行ったときのもの。Webブラウザでレポートを閲覧できる
 XOsoftは、ビジネス継続のための継続データ保護製品を開発している新興のソフトウェア企業だ。距離の離れたサイト間でのレプリケーションを実現する「WANSync」、その高可用版にあたる「WANSyncHA」、サイト間でのコンテンツ配信を目的とした「WANSyncCD」、CDP(Continuous Data Protection)を実現する「Enterprise Rewinder」などを発売している。

 なお、WANSyncおよびWANSyncHAシリーズは、ファイルシステムレベルで通常のデータ保護を行うWANSync/WANSyncHA Serverに加え、対象となるアプリケーションによってMicrosoft Exchange Server向けのWANSync/WANSyncHA Exchange、Microsoft SQL Server向けのWANSync/WANSyncHA SQL、Oracle向けのWANSync/WANSyncHA Oracleも用意されている。動作プラットフォームは、Exchange版とSQL版がWindows NT 4.0、2000、2003、Server版とCracle版は前述のWindowsプラットフォームとSun Solaris 5.7/5.8をサポートする。

 XOsoftのスタッフによれば、特に注目して欲しいテクノロジはEnterprise Rewinderにも搭載されているRewind Technologyだという。Rewind Technologyは、データ損失の際の被害を最小限にとどめるXOsoftの独自技術であり、平たくいえばCDPを実現するためのテクノロジだ。具体的には、ファイルの変更を常に監視し、変更されたたびにその変更内容をリアルタイムにロギングする。これにより、データ損失が発生した際には、このログ情報に基づいて好きな地点のデータを復元できるようになる。これが“Rewind”と呼ばれるゆえんだ。



URL
  Computerworld Storage Networking World, Spring 2005
  http://www.snwusa.com/

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  ・ SNWレポート ~Expo会場に展示された注目製品~ [前編](2005/04/18)


( 伊勢 雅英 )
2005/04/19 00:00

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