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SNWレポート ~Expo会場に展示された注目製品~ [前編]


 4月12日から15日までの4日間、米アリゾナ州のフェニックスでストレージネットワーキング関連の技術カンファレンス「Computerworld Storage Networking World America, Spring 2005」が開催された。SNW Americaは、ストレージ関連製品の開発者やストレージを実際に運用するITプロフェッショナル向けのセッションと協賛企業による最新製品の展示(Expo)から構成されている。

 アメリカに先駆け、日本でも1月に「Storage Networking World/Tokyo 2005」が開催されたが、そのオリジナル版にあたるのがSNW Americaである。SNW Tokyoは日本の企業もしくは海外ベンダの日本法人が主導する形で開催されるが、SNW Americaは大手ベンダに加え、日本ではなじみの薄い新興企業もかなり参加している。まさに最新のストレージ事情を知るには絶好に機会だ。今回は、新興企業を中心にExpo会場に展示されていた注目の最新製品を2回に分けてレポートする。



多数のストレージ製品が一堂に集まったInteroperability & Solition Demo

 Expo会場に併設されたInteroperability & Solition Demoでは、33社のストレージ製品が一堂に集まり、究極のヘテロジニアス環境で相互接続性検証が行われた。ただし、やみくもに機器を接続しているわけではない。ストレージ仮想化、IPストレージ、データ保護、データ管理、法規制への対応などといった現実的なソリューションをそれぞれのクラウドの中で構成しつつ、これらのクラウドを相互に接続する形がとられている。

 当然、ここではベンダ単独のデモではまず見られない機器構成もとられている。例えば、ストレージ仮想化のセグメントでは、Network Appliance(以下、NetApp)の仮想化アプライアンス「NetApp Vシリーズ」で競合他社のストレージ機器のストレージ仮想化が行われていた。その中にはEMCの製品も含まれている。NetAppはEMCの牙城を切り崩すためにIBMとの協業を4月6日に発表している(発表資料)。こうした絡みから、NetApp VシリーズでEMC製品のストレージ仮想化を行うデモは、NetAppにとって“してやったり”といったところか。NetApp自身も、4月12日付で本件に関するプレスリリースを発行しているほどだ(発表資料)。


多種多様なSANスイッチが収まっているラック群
 さらに、スイッチ環境も多彩だ。スイッチベンダとしては、Brocade Communications Systems、McData、Cisco Systems、QLogic、CNTに加え、新興企業のImperative Networks(2003年設立)やMaranti(2000年設立)も参加している。異なるベンダの機種間には2G ISL、Brocadeのスイッチ間には2G Routed Linkが用いられている。また、Qlogic SANbox 5600とBrocade SilkWorm 4100間は4G ISL、CNT UltraNet Multi-service Director N16とQLogic SANbox 5600もしくはMcData Intrepid 10K間は10G ISLで接続されているという。今回の構成を見る限り、異なるベンダのスイッチ間で発生していた、かつての相互接続性の問題はおおむね解消されていると感じた。Fibre Channel、IPネットワークともにSANを構築するためのネットワーク機器はようやく揃ったと考えてよさそうだ。

 筆者の率直な印象だが、これだけ数多くのベンダ製品が相互に接続されている様子はまさに圧巻であり、実に見応えのある風景だった。サイト全体の写真撮影を試みてみたものの、あまりに規模が大きすぎて筆者の安価なデジタルカメラでは収まりきらなかったほどだ。今回のように究極的なレベルで相互接続性検証を行えるのも、大手企業から新興企業までが一堂に集まれるSNW Americaならではの特典といえよう。


各社のディスクサブシステムが並ぶラック群 ビデオストリーミングを実現するシステム構成。各社のディスクストレージにまたがるデータのミラーリング、レプリケーション、アーカイビングが行われていた

新興企業が大手ベンダに挑むミッドレンジ向けのSANスイッチ製品

 Brocade、McData、Ciscoといった大手ベンダがSANスイッチの大半を占める中、その牙城を切り崩そうとしている新興企業も登場している。もともとSANは大企業向けのソリューションとして展開されてきたが、Fibre Channel機器の価格下落やIPストレージの登場に伴い、中小企業でもSANを導入する動きが見られるようになってきた。そこで、これらの新興企業は、最もコスト要求の強いミッドレンジ向けの中小型SANスイッチで大手ベンダに挑む作戦に出ている。その際のキーワードは、マルチプロトコルのサポートとプロプライエタリ技術に依存しない形でのインテリジェント化の2つである。


ミッドレンジ向けのインテリジェントSANスイッチ「Maranti CoreSTOR 2000」
 例えば、Marantiは、各種ストレージサービスをスイッチ側で行うインテリジェントSANスイッチを発売している。同社のブースでは、ミッドレンジ向けのSANスイッチ「Maranti CoreSTOR 2000」が展示されていた。CoreSTOR 2000は、モジュール型のラインカードによって2G Fibre ChannelポートとiSCSIポート(Gigabit Ethernetベース)を合計16ポート搭載できる。ラインカードには、8個のFibre Channelポートを持つFCラインカードと6個のFibre Channelポートと2個のiSCSIポートを持つFC/GbEラインカードの2種類があり、これらを自由に組み合わせてポートを構成できるようになっている。

 CoreSTOR 2000が提供するストレージサービスは、インバンド方式のストレージ仮想化、ミラーリング、レプリケーション、スナップショット、ボリュームコピーである。これらのサービスはスイッチ本体に標準で搭載されているため、ストレージサービス専用の拡張カードを追加する必要はない。また、2台のスイッチを使用したアクティブ-アクティブ方式のフェイルオーバ構成もサポートする。すべてのストレージサービスはスイッチ内部で完結する仕組みとなっており、スイッチとストレージ間にストレージサービスための特別なプロトコルを必要としない。つまり、接続するストレージの機種に依存することなく、ストレージサービスを利用できるところが大きなポイントだ。


 MaXXan Systemsも、各種ストレージサービスを提供するインテリジェントSANスイッチを発売している。同社のブースには、ミッドレンジ向けの新製品「MXV250」が展示されていた。MXV250は、16ポートのインテリジェントラインカードを増設(4枚まで)することで最大64個のFibre Channelポートを搭載できる。4G/10G Fibre ChannelやIPストレージ向けの10Gbit Ethernetなどは、将来登場する新型のラインカードでサポートされる見込みだ。

 MXV250は、アプリケーションコントロールカードを増設することで“インテリジェント”なSANスイッチになる。このアプリケーションコントロールカードには、2個のXeonプロセッサ、2台のHDD、4本のPCI-Xバス、8個ずつのFibre ChannelおよびGigabit Ethernetポートが搭載され、HDDには各種ストレージアプリケーションがプリインストール済みだ。アプリケーションコントロールカードは用途に応じて3種類用意されており、ディザスタリカバリとストレージ統合を行うカードにはFalconStor IPStorとVeritas NetBackup、NASゲートウェイのカードにはWindows Storage Server 2003、ディスクベースのデータ保護を行うカードにはFalconStor Virtual Tape Libraryがインストールされている。

 さらに、既存のFibre ChannelとiSCSIの融合に力を入れているスイッチベンダもある。その代表がImperative Networksだ。Imperative Networksのブースには、12ポートのiSCSI/2G Fibre Channelスイッチ「Imperative 1202i」が展示されていた。Imperative 1202iは、独自のSmart Matrix Technologyにより、0.6msの低レイテンシとワイヤ速度の処理を実現している。ポートアグリゲーションを行った場合には、iSCSIのみのアグリゲーションで8Gbps、Fibre ChannelとiSCSIのアグリケーションで40Gbpsの帯域幅が得られる。Imperative Networksのスタッフによれば、本製品は従来のFibre Channelスイッチ+iSCSIゲートウェイ構成を置き換えるものとしてプッシュしているとのこと。


ミッドレンジ向けのインテリジェントSANスイッチ「MaXXan MXV250」
12ポートのiSCSI/2G Fibre Channelスイッチ「Imperative 1202i」。iSCSIポートを8ポーに増やした合計16ポートの「Imperative 1602i」も発売されている

4G Fibre Channel製品をいち早く投入したATTO Technology

 ストレージのコネクティビティとインフラストラクチャのソリューションを提供するATTO Technologyのブースでは、最新の4G Fibre Channelに加え、iSCSIおよびパラレルSCSI関連の製品が展示されていた。

 最も注目したい製品が、4個の4G Fibre Channelポートを搭載したPCI ExpressベースのFibre Channel HBA「Celerity FC-44ES」である。同社は昨年10月に1ポートのHBAで4G Fibre Channel規格を業界初でサポートしたが、これに高性能なマルチポート製品が追加された形となる。Fibre Channelポート全体の帯域幅は全二重通信で3.2GB/sec(=800MB/sec×4チャネル)に達するため、8レーンのPCI Express(帯域幅4GB/sec)でホスト間との通信をカバーしている。

 複数のストレージインターフェイス間を結ぶブリッジ製品もなかなか興味深い。主な製品としては、Fibre ChannelとiSCSI間のブリッジ「iPBridge 2700」、Fibre ChannelとパラレルSCSI間のブリッジ「FibreBridge 2400」、iSCSIとパラレルSCSI間のブリッジ「iPBridge 1500」などがある。

 遠距離のFibre Channel SAN同士をIPネットワークで接続したり、既存のFibre Channel製品をiSCSI SANで使用するときにはiPBridge 2700、DAS用として使っていた既存のパラレルSCSI機器をFibre Channel SANやiSCSI SAN向けに流用するときにはFibreBridge 2400やiPBridge 1500が用いられる。特にiPBridge 1500は1000ドル以下というリーズナブルな価格に設定されており、これまでパラレルSCSIを使用してきた中小企業がiSCSIによる安価なSANに移行する際に役立ちそうだ。


4個の4G Fibre Channelポートを搭載したPCI ExpressベースのFibre Channel HBA「Celerity FC-44ES」
iSCSIとパラレルSCSI間のブリッジ「iPBridge 1500」
Fibre Channel、iSCSI、パラレルSCSIなど、複数のストレージインターフェイス間を結ぶブリッジ製品群

1台の筐体内でILMを実現する多機能型ストレージ「iStoRA G3シリーズ」

 Breece Hillのブースには、サーバー、ディスク、オートローダを1台の筐体に収めた多機能型ストレージ「iStoRA G3シリーズ」が展示されていた。iStoRAは、Information Storage and Retrieval Architectureの略で、多種多様なデータストレージおよびサーバーアプリケーションに適したデータの保管場所を柔軟かつ高性能な形で提供する同社独自のアーキテクチャを指す。今日、多くのベンダによって複数のストレージにデータを最適配置するILM(Information Lifecycle Management)が叫ばれているが、これを1台の筐体の中で完結してしまおうというものだ。

 iStoRA G3シリーズには、8台のSATA HDDと1台のテープドライブ、10本のテープカートリッジが搭載されている。HDDは250GBまたは400GBのものが選べる(後述する上位モデルは400GBに固定)。RAIDレベルはRAID 5が標準だが、オプションとしてRAID 0、1、10、50も選択できる。ディスクの実質的な記憶容量(RAID 5で構成)は、250GB HDD搭載時で1.75TB、400GB HDD搭載時で2.8TBとなる。テープドライブにはLTO-3とSony SAIT-1が用意されており、バックアップ速度を重視する用途ではLTO-3を、バックアップ容量を重視する用途ではSAIT-1を選択すればよい。

 その他の仕様はモデルによって異なっている。基本的にはスタンダード版のG3Sと拡張版のG3Xに分かれており、G3Xには総じて高性能なコンポーネントが搭載される形となっている。例えば、CPUはG3SがPentium 4/3GHzなのに対し、G3XはXeon/3.6GHzのデュアルプロセッサ構成を採用している。メモリの標準搭載容量はどちらも2GBだが、チップセットの違いによって最大容量はG3Sが4GB、G3Xが16GBと大きく異なる。

 Breece Hillのスタッフは、このiStoRA G3シリーズをSMB市場向けの簡易なILMソリューションとして展開していきたいと話す。


Breece Hillの多機能型ストレージ「iStoRA」


URL
  Computerworld Storage Networking World, Spring 2005
  http://www.snwusa.com/


( 伊勢 雅英 )
2005/04/18 00:00

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