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日本IBM、チームコラボレーティブなソフト開発を実現するRational新製品

アジャイル開発を大規模環境でも

ソフトウェア事業 ラショナル事業部長の渡辺公成氏
 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は2月23日、ソフト開発ツールの新製品「Rational Team Concert V.10.1.1(以下、Team Concert)」「Rational Requirements Composer V1.0(以下、Requirements Composer)」「Rational Quality Manager V1.0(以下、Quality Manager)」の日本語版を発表した。3月1日より順次販売開始する。

 新製品は、2006年6月から日本IBMが策定に取り組む、次世代ソフト開発技術基盤「Jazz」に準拠した開発ツール。Jazzプロジェクトは、ソフト開発というコラボレーティブな仕事をサポートするために、どのようにソフト開発ツールが統合されるべきかを定めたビジョン。オープンアーキテクチャが用意されており、各ベンダーをまたぐコラボレーションの標準環境として利用することができる。

 具体的には、「Jazz Team Server」というアーキテクチャの上で、今回の新製品など各ソフトが稼働。土台となる「Open Lifecycle Service Integrations」というプラットフォームは、Jazzプロジェクトが開始された当初からAPIが公開されており、すでに多くの他社製品が簡単にプラグインできる状況にあるという。また「Jazz.net」というコミュニティサイトも、2月23日より日本語版が開設しており、コミュニティ開発の場が提供されているのも特徴。

 Jazzで目指していることについてソフトウェア事業 ラショナル事業部長の渡辺氏は、「Rationalではミドルウェアやパッケージアプリケーションなど優れた製品を提供しているが、どちらかというと、設計者の生産性向上にフォーカスしてきた。Jazzでいまやろうとしていることは、コラボレーションとアセットの再利用(SOA)に焦点を当てて、組織横断的なプロセス管理を実現すること」と説明。これにより、「ソフトの要求定義から開発、実装、運用管理までのライフサイクル一元化と、開発者だけでなく、プロジェクトマネージャーや経営者層も含めたチームコラボレーションが実現する」としている。


ビジネス視点のソフト開発を目指した日本IBMの基本戦略 Jazzの概要

ソフトウェア事業 ラショナル・テクニカル・セールス&サービス エバンジェリストの玉川憲氏
 Team Concertは、作業管理、構成管理、ビルド管理が一体となったコラボレーションソフト。プロジェクトの進ちょくやメンバー状況などを開発者が意識することなく、自動でデータを収集し、ダッシュボードにリアルタイムに表示。Wikiやチャットなどでコミュニケーションが図れる。

 これらの機能を利用した上で、「ワークアイテム」を軸にコラボレーションを実現する。ワークアイテムとは、「タスク」「バグ修正」「機能拡張」などのことで、人員割り振りなどを行う「リーダー」、コーディングを行う「開発者」、ビルドを作成する「ビルド担当者」の間で分断されていた作業をタスクごとに統合。人員の割り当ても、何を開発するかも、すべてこのワークアイテム単位で行えるため、チームの状況がリアルタイムに可視化され、結果、品質向上やコスト削減に寄与するという。

 「Team Concertでは、ワークフローまで自動化・共通化されるので、成果物のトレーサビリティが確保できない、誰が何をやっているか分からない、そのため作業の重複など不整合が生じてしまう、といった問題が解消できる」とソフトウェア事業 ラショナル・テクニカル・セールス&サービス エバンジェリストの玉川憲氏は語る。

 「これまでソフト開発というと、明確に決められた手順を厳格に守らせることで品質を確保するウォーターフォールモデルなどが主流だった。これはこれで一定の成果をあげてきたが、形式主義に陥りがちで、ともすると個人の持つ能力を発揮する自由度、創造性を破壊することも少なくなかった。これに対して、Jazzが目指すのは、ジャズバンドのようなスタイル。メンバー各自が能力を発揮し、相互に刺激し合いながらも、支離滅裂にならず、チームとしてシステムの完成度を高めるものだ」(同氏)。

 これは一般的にアジャイル開発と呼ばれるモデルである。特に中小企業などで注目されているのだが、「一方で少人数向けの技法というイメージがマーケットに定着している」という。Jazzアーキテクチャを含む今回の新製品群は、このアジャイル開発を大規模なプロジェクトに適用するために、ツール技術として何を支援できるかというコンセプトを形にしたもので、「アジャイル開発そのものを目指さないユーザーも、これまでのやり方の中に、チームコラボレーションを取り込めるのがメリット」(同氏)。

 ラインアップは、大規模向けの「Standard Edition」と中規模向けの「Express Edition」など。前者の価格は、サーバーライセンス(3ユーザーライセンス付き)が715万円、1ユーザーライセンスが55万7700円。後者は、それぞれ85万円、17万1600円。


これまでの開発現場では、情報が分散しているため、各作業のトレーサビリティが確保できなかった ワークアイテムを軸に開発ワークフローを自動化。すべての成果物が一元管理される Team Concertの概要

ワークアイテムの作成画面 ワークアイテムごとに変更したソースが自動的にひも付く。またそのタスク履歴もすべて記録される 反復計画もワークアイテムベースで作成し、アサイン状況を可視化できる

 Requirements Composerは、ソフト開発の要求定義を支援するソフト。発注者のまだ明確化されていないアイデアや要求をソフトに盛り込むべき具体的な要件に落とし込む前に、要求ドキュメントを管理し、イメージで視覚化してくれる。こちらは大規模向けの「Standard Edition」のみ。価格は、サーバーライセンス(3ユーザーライセンス付き)が500万5000円、1ユーザーライセンスが78万6500円。

 最後のQuality Managerは、ソフト開発における各テスト工程を管理するソフト。機能・性能・セキュリティの各テスト結果の一元ビューをWebベースで提供し、テスト結果の追跡、問題解決への優先順位付けなどを可能にする。「これにより、すべてのテストを俯瞰(ふかん)した形で要求を満たしているかが確認可能になる」(渡辺氏)。ラインアップは、大規模向けの「Standard Edition」と中規模向けの「Express Edition」を用意。前者の価格は、サーバーライセンス(3ユーザーライセンス付き)が286万円、1ユーザーライセンスが71万5000円。後者は、それぞれ100万1000円、71万5000円。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  プレスリリース
  http://www-06.ibm.com/jp/press/2009/02/2301.html

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( 川島 弘之 )
2009/02/23 17:28

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