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IT経営キャラバン隊は、日本全国になにを残したのか


 IT経営キャラバン隊が、3月22日、最終訪問地となる沖縄でイベントを開催し、1年4カ月にわたる活動に幕を閉じた。

 IT経営キャラバン隊の役割は、中小企業やシニアのIT利活用のための基盤を、日本全国を巡回し、確立すること。マイクロソフトから寄贈されたキャラバンバスを使い、全国120カ所を訪問。日本商工会議所などの呼びかけにより、数多くの中小企業経営者が、このイベントに参加した。


2006年11月に行われた贈呈式で、米Microsoftのスティーブ・バルマーCEOからキーを手渡されるITコーディネータ協会の関隆明会長 関係者とキャラバン号 沖縄の浦添商工会議所で開かれた最後のITキャラバン隊のイベントの入口

業務執行役員Plan-j推進本部・秋本則政本部長
 マイクロソフトの業務執行役員Plan-j推進本部・秋本則政本部長は、「IT経営キャラバン隊が目的としたICT利活用の促進という観点では、大きな成果をあげたと判断している。また、キャラバン隊の遺伝子を、全国に残すことができたのが大きな成果だといえる」と語る。

 実は、IT経営キャラバン隊では、ICT利活用促進に向けた啓発活動とともに、これが地域に根ざし、継続される基盤をつくることを目指してきた。

 この背景には、5年前にマイクロソフトが取り組んだ全国キャラバンでの反省がある。

 「5年前のキャラバンでは、e-JAPAN推進計画にあわせて、中小企業の経営にITを生かす必要性などを訴えた。全国をキャラバンすることで、ITをどう活用するのか、ITによってどう経営を変えるのか、といったことは訴求できた。だが、イベントを開催した時には盛り上がるのだが、結果として、その時だけの活動だけで終わってしまい、継続的な活動が行われることがなかった。今回のIT経営キャラバン隊の活動では、むしろ、キャラバン隊が帰った後に、いかに活動を継続するかに焦点をおいた」と、秋本本部長は語る。

 一時的な盛り上げを狙うのではなく、着実に継続されるためにはどうすべきかといったこともイベント企画のなかに盛り込んだという。

 全国各地にいるITコーディネータや、地域に密着したITベンダー、SIerとの連携を図るとともに、商工会議所の経営指導員に対しても、ITに関するスキルを植え付けることで、継続活動ができる地盤と、連携体制を構築することに力を注いだのである。


 具体的には、期間中、マイクロソフトが地元のITベンダーや商工会議所関係者などに対して、イベント開催ノウハウを伝授する時間を取るともに、セミナー向けコンテンツの提供や、商工会議所などに無線LANの接続が可能なフリースポットの配置により、ITを利活用しやすい環境の整備などにも取り組んだ。

 実際、いくつかの地域で、継続的に啓もう活動を行うための基盤を構築できたという成果があがっている。

 関係者が「福井モデル」と呼ぶ福井での事例では、地元ベンダーとITコーディネータが連動して、中小企業のIT導入支援を行うという仕組みが確立した。

 業界内では、経営の観点からのコンサルティングを重視しするITコーディネータに対して、機器販売で導入を急ぎたいベンダーとの間に、考え方やスタンスに違いがあるとの指摘もある。だが、福井モデルでは、ITコーディネータの経営改善提案の力を生かし、それにのっとってITベンダーが導入を行い、両社が連携しながら中小企業のIT導入を、効果的にまた安定的に提案できる仕組みが出来上がったという。

 福井市内における中小企業向けセミナーなどでも、この協業関係をベースとして、継続的に活動が行える仕組みが構築できている。

 こうしたいくつかの事例が、キャラバン後に誕生している。そして、マイクロソフトが持つ全国の支店との連携も、継続活動の基盤のひとつになっているという。


デジタルライフスタイルチャネルマーケティング部・白水公康部長
 一方、IT経営キャラバン隊のもうひとつの成果としてあげられるのが、ITコーディネータとの連携が強化され、ITコーディネータの活動の場が、さらに創出されたことだ。

 ITコーディネータは、全国に約7000人が認定されている「ITと経営に強いコンサルタント」。ITを活用した経営改革の推進役を果たす。

 マイクロソフトのデジタルライフスタイルチャネルマーケティング部・白水公康部長は、「どこに、どんな優秀なITコーディネータがいるのかということが、業界内でもとらえることができていなかった。だが、今回のキャラバンを通じて、全国各地にいる優秀なITコーディネータを発掘することができた。これが、このキャラバン隊のもうひとつの大きな成果だったといえる。今後、こうしたITコーディネータとベンダーとが連携を取ることによって、活動を継続的に行える地盤にもつながる」と語る。

 IT経営キャラバン隊は、2006年12月13日の福岡県行橋市でのイベントを皮切りに、全国各地を巡回し、イベント開催日数は150日、参加者数は2万2032人、キャラバンバスの全走行距離は地球の約1週半にあたる約6万kmに達した。

 IT経営キャラバン隊会長であり、特定非営利活動法人ITコーディネータ協会会長の関隆明氏は、「これまでのキャラバン活動は、多くの方々によって支えられ、成果をあげた。だが、ITの経営への利活用をさらに浸透させるため、また、さらになる成果に結びつけるには、これからの活動の方がもっと大切である。われわれの活動はこれで終わりではなく、むしろ、これからがスタートになる」と語る。

 IT経営キャラバン隊が残してきた遺伝子を、どう活発化させるかが、それぞれの地域での課題といえよう。


 一方、マイクロソフトによって寄贈させたキャラバンバス「チャレンジ号」は、その役割を終えることになるが、実は、今後もIT利活用の普及、啓もう活動において、新たな役割が与えられることになっている。こちらも、これからが新たなスタートというわけだ。

 今後、チャレンジ号は、株式会社うぶすなに寄贈され、外観のチャレンジ号のデザインはそのままに、新たな場面で活用されることになる。

 白水部長は、「一カ所に置かれて、そのまま放置されてしまうというのではなく、チャレンジ号の新たな役割を担い、活用していただける団体などに寄贈したいと考えていた。そうしたなかで、うぶすなさんからご提案をいただいた。検討した結果、この提案ならば、チャレンジ号が放置されずに、有効活用していだたけると判断した」と語る。


うぶすなの代表取締役・吉井靖氏
 うぶすなは、佐渡において、「佐渡お笑い島計画」を推進。民間主導型で観光来島者を増やす取り組みなどで実績を持つ。この施策では、お笑い芸人の若井ぼんさんをお笑い親善大使に起用し、インターネットメディアを使ったプロモーションなどに取り組んできた。

 うぶすなの代表取締役・吉井靖氏は、「キャラバン号を地域活性化のために活用したいと考えている。6〜7月においては、ユビキタス特区となった島根県松江で、MediaFLOの実証実験を行う予定であり、その体験の場として、キャラバン号を活用する。また、その後は、横浜・みなとみらいで、インターネットによる情報発信や地域情報の映像化の拠点として活用することになる」という。

 チャレンジ号も新たな役割のなかで、地域のIT利活用のために貢献することになりそうだ。


 IT経営キャラバン隊の残した成果は、遺伝子となって、あらゆる方面で花を開くことになりそうだ。

 マイクロソフトやITコーディネータ協会が、またキャラバン隊を組んで、全国を巡回するという具体的な計画はないが、それがなくても、地域ごとにIT利活用が促進される地盤が整いつつあるといえよう。

 どんな形で、花を開かせることがことができるか。ちょうどいま、満開になった都心の桜のような開花を期待したい。


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( 大河原 克行 )
2008/03/28 17:30

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