特別企画

より手軽に使える無線LAN環境を目指す――、自律型無線LANソリューション「AWC」が目指すこと

 アライドテレシス株式会社の自律型無線LANソリューション「AWC(Autonomous Wave Control)」は、ネットワーク配下の無線LANアクセスポイントがほかのアクセスポイントや外部電波(外来波)の情報を収集することで、配下のアクセスポイントの出力やチャンネルを自律的に最適化する技術だ。

 このAWCの次なる拡張予定について、アライドテレシスの盛永亮氏(グローバルマーケティング本部 Global Product Marketing部 部長)に話を聞いた。

アライドテレシスの盛永亮氏

AWCのコントローラー機能をルーターに搭載

 AWCとは、前述のように、アクセスポイントがほかのアクセスポイントや外来波の情報を収集し、出力やチャンネルを自律的に最適化する技術である。これによって、従来は導入前などに入念に行う必要があったサイトサーベイを簡素化できるほか、運用開始後も、変化する電波状況に応じた設定が自動的に行われる、というのが特長になっている。

 盛永氏によると、AWCの代表的な導入事例には、岐阜県教育委員会や国立大学法人 鳴門教育大学などがあるとのことで、「こうした、アクセスポイントが50~100台、場合によっては1000台といった大きな規模で多く使われています」という。

 このような場合、AWCを管理するためには、ネットワーク統合管理ソフトウェア「Vista Manager EX」をサーバーにインストールし、無線LANコントローラーとして利用することになるが、以前からVista Manager EXで管理しているような大規模なネットワークであれば、有線LANも無線LANも共通の管理を実現できることから、高い利便性を提供可能だ。

AWCとは?
AWCの特長
小規模環境でもAWCの最新テクノロジーを簡単に導入することが可能

 しかし、無線LAN環境は大規模だけで利用されているわけではなく、アクセスポイントが数台からせいぜい10台といった小規模環境において、管理のためだけにわざわざサーバーを構築するのはハードルが高い。

 そこで、AWCを簡単に使えるようにしようと考えたアライドテレシスでは、自社のルーターにコントローラー機能を搭載することにしたのだ。

 対象機種は、ネットワークOS「AlliedWare Plus」を搭載したルーターで、AR2010V、AR2050V、AR3050S、AR4050Sの4機種が該当し、アクセスポイントが5台までの環境において、ライセンスなどを新たに購入することなく、AWCが使えるようになる。最上位製品のAR4050Sのみ、追加ライセンスを購入すると、アクセスポイントが25台までの環境で利用可能になるという。

AWC対応ルーターでコントローラー機能が追加されるルーターの1つ、「AR4050S」

 「現在提供している製品仕様では、Vista Manager EXというソフトウェアを購入いただいて、これをインストールする専用サーバーをご用意いただく必要があります。対してAWC対応ルーターの場合では、機器を追加しなくても、アライドテレシスのルーターとアクセスポイントがあればそのまま使えます。手軽に、かつ低コストに使っていただけるのが強みです」と盛永氏。

 電波干渉を意識して複数のアクセスポイントそれぞれが送信した電波設定を調整するといった作業は、小規模な環境では必要ないと思われるかもしれない。しかし現在の無線LAN環境では、その企業が自ら設置したアクセスポイント以外にも、例えば隣のビルで利用されているアクセスポイントや、スマートフォンによるテザリング、モバイルルーターなどとの干渉を考慮する必要も出てきているという。

AWC対応ルーターを利用すればルーターでアクセスポイントを管理できるため、中小規模のユーザーでもAWCによる無線LAN環境のコントロールが可能になる

 「飲食店や小売店などアクセスポイント2~3台のところでは、AWC対応ルーターを使えば、追加コストをかけずに安定したWi-Fi環境を使っていただけます。アクセスポイント5台までという制限はありますが、5台あれば、かなりの範囲をカバーできるでしょう。また、本社はVista Manager EX、小規模拠点はAWC対応ルーターといった使い分けも可能です」(盛永氏)。

 この機能は対象機種のファームウェア・アップデートで提供することになっており、2018年初頭にも提供開始となる予定とのことだ。

“置いただけ”でアクセスポイントが環境を認識

 このように、 AWC対応ルーターで小規模の無線LAN環境を改善しようとしているアライドテレシスだが、同社ではさらに先を見据え、「Phase 2(仮称)」の開発にも取り組んでいる。

 「有線LANの“島ハブ”として使われるアンマネージドスイッチは、設置場所へ置いてケーブルをつなぐだけで使えます。それに対してアクセスポイントは、事前の設計やサイトサーベイが必要になるのが現実ですが、アクセスポイントもアンマネージドスイッチのように、置くだけで使えるようにしたい、という構想です」と盛永氏。

 また、「小規模のオフィスや小売店などでは、ネットワークに詳しい人が不在であることも多く、無線LANが遅いとかつながらないとかいったトラブルが起こっても、そこにいる人だけで原因を探るのは難しいです。そこで、それほど知識のない人でも、どこに原因があるのかを特定できるような機能を入れていく予定です」(盛永氏)とのこと。

 例えば、自動テストや自動レポーティングといった機能を考えているという。「アクセスポイント自身が簡単な通信テストなどを行って、自分がどのような状況に置かれているかを調べ、何らかの表示をすることを考えています」と盛永氏。表示としては、「設置した結果のマルバツぐらいはわかるようにしたいですし、ヒートマップのような表示をするツールも用意したいですね」と、盛永氏は語った。

 こういったPhase 2のリリース時期は未定だが、「2018年中までにはと思っています」と盛永氏は答えた。

Phase 2で目指すこと

 「AWCは一見分かりづらい機能ではありますが、お客さまにご説明すると、使いたいという声を多くいただけます。今後も、お客さまのニーズに合った適切な製品を提案していきたいと思います」(盛永氏)。

(提供:アライドテレシス)