DCの仮想化と自動化が次世代のクラウドを作り、ビジネスを変える~vForum基調講演


VMware vCloud Suite

 「すべてのビジネスレイヤにおいて大きな変化が起こっている。いまはまさに変革のとき。そしてVMwareは仮想化とクラウドの力でビジネスの変革を支援する」――久々の来日を果たしたVMwareのCEO パット・ゲルシンガー氏は11月6日、都内で開催された「vForum 2012」の基調講演で聴衆に向けてこう語った。

 VMwareは現在、仮想化市場で圧倒的なシェアを誇る「vSphere」を主要コンポーネントに据えたクラウドインフラソリューション「VMware vCloud Suite(以下、vCloud)」を前面に押し出している。その目的はデータセンター全体の仮想化、特にSoftware Defined Network(SDN)による自動化の推進だ。ゲルシンガー氏はこれを「Software Defined Datacenter」と呼んでいるが、その名のとおり、ソフトウェアによってデータセンターのあらゆるレイヤが自動化されることで、クラウドは新たなフェーズを迎えるというのがVMwareの主張だ。

 本稿ではvForum 2012の基調講演での内容をもとに、VMwareが描く新しいクラウドコンピューティングの世界に触れてみたい。


ソフトバンクとの提携で国内企業のBYODを推進

三木泰雄氏

 最初にヴイエムウェア 代表取締役社長の三木泰雄氏が登壇、vForum 2012のテーマである“Right Here, Right Now”について、「クラウドの準備はもうここにできている。あとはいますぐ使うだけ、という意味が込められている」と語り、「日本でもクラウドコンピューティングはずいぶん普及してきたが、米国などに比べるとまだ導入率は高いといえない。成長する企業、業績の良い企業ほど、クラウドを活用している。ビジネスを拡げる手段として、ぜひ積極的に検討してほしい」と訴えた。

 また、クラウドと並んで企業が避けて通れないITトレンドとしてスマートフォンをはじめとするモバイルを挙げ、「モバイルをビジネスで使うにはセキュリティが問題となっているのはよくわかる。だが、これからのビジネスにモバイルを使わない手はない。セキュリティの改善を図りながら、モバイルを活用する方向を探っていくべき」とBYOD(Bring Your Own Deveice)を企業が推進していく必要性を強調している。

 VMwareは国内企業のモバイル活用を推進するため、この基調講演においてソフトバンクテレコムおよびソフトバンクモバイルとの協業を発表している。VMwareの仮想化ソフトウェア「VMware Horizon Mobile」をベースにしたスマートフォン向けのセキュリティソリューションをソフトバンクテレコムがVPN経由で提供し、ソフトバンクモバイルが貸し出すAndroid搭載スマートフォン「Motorola RAZR M SoftBank 201M」からアクセスが可能になるというサービスで、12月10日から無料トライアルサービスの受付を開始する。

宮内謙氏

 このサービスの紹介のために登壇したソフトバンクモバイル 代表取締役副社長の宮内謙氏は「VMwareの革新性には個人的に非常に感銘を受けており、サンフランシスコで開催されるvForumには毎年足を運んでいる。日本はBYODの分野で大きく遅れを取っており、自由なワークスタイルを獲得するためにもVMwareのテクノロジでもって、企業におけるモバイル活用の流れを作っていきたい。日本企業もそろそろ破壊的なトレンドを受け入れる準備をすべき」と語っている。なお、近い将来はどんな端末からでもアクセスできるようにするが、とりあえずはもMotorola RAZR Mでのみトライアルを行う方針としている。


自動化されたデータセンターがクラウドを変え、ビジネスを変える

パット・ゲルシンガー氏

 三木氏につづいて、「VMwreのCEOになってからは初めての来日ですごく楽しみにしていた」というパット・ゲルシンガー氏が登壇した。

 IntelからVMwareに、ハードの世界からソフトの世界へと移ってきたゲルシンガーCEOは「ソフトウェアの世界からハードウェアの世界を眺めるというのはいままで経験がなかったので非常に新鮮」と語り、特に注目すべき重要な概念として“Software Defined Datacenter”を挙げている。データセンターをソフトウェアでもって完全に仮想化/自動化し、コントロールすることを指しており、その実現を果たす存在がvCloudになる。

 ゲルシンガーCEOは「昨年、我々は“来年の今ごろは新しいvCloudを皆さんにお見せできるようにする”と約束した。vCloudは管理やオーケストレーション、ハイブリッドクラウドなどヘテロな環境の混在なども解決するスイートとして生まれ変わった。その約束が果たせてうれしい」としており、特に今年7月に約12億ドルで買収を発表したネットワーク仮想化技術のNiciraのテクノロジが、SDNにおいて重要な役割を担っていると語っている。インテリジェントなインフラで構築されたデータセンターの完全仮想化を実現するにはネットワークの仮想化は避けて通れないハードルであり、Niciraがなければ実現は難しかったといえる。

「パフォーマンスは高く、オーバーヘッドは低く、信頼性は高く」それが新しくなったvCloudの特徴だとゲルシンガーCEO。VMwareがデータセンターの自動化にこれほど徹底してこだわるのは、インフラの自動化/仮想化が企業の生産性向上に大きく貢献するという実績にもとづく確証があるからである。「vCloudには仮想化がむずかしいと言われたVoIPなどのアプリケーションも遅延のない状態で仮想化できるほどのキャパシティがある。トレンドとなっているビッグデータに関しても、Hadoopを仮想環境で動かしている例が数多く現れてきた。どんなにテクノロジが進化しようとも、我々もまたキャパシティを上げ、新しいマーケットに取り組んでいく」とするVMware。ありとあらゆるビジネスレイヤを仮想化することで、クラウドコンピューティングを次のフェーズへとリードしているかのようだ。クラウドが進化すればビジネスも大きく変わる。多くの日本企業もまた、その変化の潮目に立たされており、否応なく巻き込まれていくのは間違いない。

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