NEC、2012年度第1四半期決算は前年同期比100億円改善も赤字に


 日本電気株式会社(以下、NEC)は7月31日、2012年度第1四半期(20121年4月~6月)の連結業績を発表した。

 売上高は、前年比5.6%減の6315億円、営業損失は前年同期から116億円改善したもののマイナス78億円の赤字、経常損失は前年同期から175億円改善のマイナス121億円の赤字、当期純損失は118億円改善のマイナス178億円の赤字となった。

 NECの川島勇取締役執行役員兼CFOは、「売上高は、個人向けPC事業や液晶事業の非連結化の影響もあり減収となったが、事業の非連結化の影響を除くと約1%の増収となっている。また、営業損益、経常損益では計画を100億円以上上回る改善となっている」としたほか、「緊急施策による給与の削減などによって、セグメントごとに数億円から数10億円改善している」などと語った。


川島勇取締役執行役員兼CFO2012年度第一四半期の概況

 

セグメント別の業績

セグメント別 第一四半期実績のポイント

 セグメント別業績は、ITソリューション事業の売上高は前年比5.0%増の249億円、営業損失は70億円改善のマイナス58億円の赤字。ITサービスが通信業や製造業向けなどで堅調に推移したこと、プラットフォームが大型案件により、ハードウェアや企業向けネットワークなどで売り上げが増加したという。営業損益については、ほぼ想定通りとした。

 ITソリューション事業のうち、ITサービスの売上高は前年同期比5.3%増の1659億円、プラットフォームの売上高は4.3%増の833億円。「ITサービスでは30億円強の赤字、プラットフォームでは20億円強の赤字になった」という。

 「ITソリューション事業は、国内の通信、流通、製造業において好調であり、受注でみれば前年同期比10%増。受注動向ではそれほど悪くはない。収益率についても悪くなく、収益も対前年比プラスになっている。構造改革効果も含めて、収益性を高めていく」などと語った。

 キャリアネットワーク事業の売上高は10.9%増の1413億円、営業利益は88億円増の112億円。国内のスマートフォンの普及により、データトラフィックの増加に伴うインフラ投資の前倒し需要の取り込みに成功。「営業利益は、計画を50億円強上回っている」という。


ITソリューション事業の実績キャリアネットワーク事業の実績

 社会インフラ事業の売上高は0.8%増の592億円、営業利益は10億円増の14億円。社会システム分野や航空宇宙・防衛システム分野がいずれも堅調。原価低減活動の効果も増益に貢献したという。

 パーソナルソリューション事業の売上高は27.8%減の1325億円、営業損失は43億円悪化のマイナス30億円の赤字。前年度第2四半期から個人向けパソコン事業を非連結化した影響に加え、携帯電話の出荷台数の減少により減収。またモバイルターミナルの売り上げの減少が減益につながった。

 モバイルターミナルは売上高が27.8%減の574億円、PCその他が27.8%減の751億円。PCその他は非連結の影響を除くと前年同期比10%増となる。

 「営業損益は想定を40億円程度上回った。PCその他が10億円の黒字、モバイルターミナルが40億円の赤字」となった。

 その他事業においては、液晶事業の非連結化や電子部品事業の減少などが影響し、売上高は20.4%減の493億円、営業損失は1億円悪化のマイナス14億円の赤字となった。


社会インフラ事業の実績パーソナルソリューション事業の実績

 

上期・通期の業績見通しは変更なし

 なお、2012年度通期および上期の業績見通しについては据え置いた。

 「第1四半期は、想定を上回る利益となったが、上方修正するのではなく、業績の進ちょくをみながら、これを最低水準として確実に達成し、さらに上積みをしていきたい」などとしたほか、「9月末までの1万人の人員削減は計画通りに進んでおり、これらの構造改革を完遂していく。構造改革の具体的な成果は第3四半期以降に出て行くことになる」などとした。

 川島取締役執行役員は、「マクロ環境、事業環境の急回復が見込めないなか、現状の売上高レベルでも安定的な収益をあげる効率的な事業運営を進める考えであり、構造改革の断行、注力分野への集中投資によって成長基盤を構築していく」と語った。


NECの経営方針2012年度上期業績予想

 上期見通しは、売上高で前年同期比3.0%減の1兆4000億円、営業利益は前年同期比58億円減の10億円、経常利益は同56億円減のマイナス160億円の赤字、当期純利益は同130億円減のマイナス240億円の赤字を計画しており、「ITサービスやプラットフォームが好調なITソリューションは、売上高が前年同期比で333億円増加。キャリアネットワーク事業は、コンバージス社のBSS事業の連結化や国内事業の増加によって、315億円増加するとみている。だが、パーソナルソリューション事業は、非連結化によって893億円のマイナスが見込まれる」としているが、「これらの非連結化を除くと、売上高は前年並みになる」などとした。


セグメント別の上期業績予想上期業績予想のポイント

 上期のITソリューション事業においては、売上高が前年同期比6.2%増の5700億円、営業利益は132億円増の140億円を見込んでいる。

 「ITサービスは製造業、流通サービス業において、一時的に止まっていた案件で投資の再開が始まっており、引き続き堅調な通信事業者などで増収を見込んでいる。クラウドサービスにおいても、具体的な数字は開示していないが増えてきている。一方、プラットフォームでは、引き続き、大型案件を中心にしたハードウェア、企業ネットワークによる増収を見込んでいる。また、上期の営業利益については、ITサービスは約140億円の営業利益を見込んでおり、プラットフォームはブレイクイーブンを想定している」などと語った。

 一方、ルネサスへの支援に関しても言及。「当社のルネサスに対する支援のスタンスは、重要なビジネスパートナーであり、ルネサスが実行しようとしている構造改革を成し遂げ、きちっとした製品を、われわれに安定して供給してもらうためのもの。あくまでもビジネスパートナーとしての支援であり、10月1日をめどに175億円を保証金として差し出す。これは出資ではなく、返済されるものという理解である」などとした。


ITソリューション事業の業績予想4本柱における注力分野
関連情報
(大河原 克行)
2012/8/1 00:00