日本IBM、HPC技術を活用したテクニカル・コンピューティング製品群を企業向けに展開


日本IBM システム製品事業 マーケティング&ソリューション 理事の星野裕氏

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は6月12日、同社が提唱する次世代ITインフラのビジョン「スマーター・コンピューティング」の実現に向けて、「テクニカル・コンピューティング」分野のビジネス展開を強化し、買収したPlatform Computing社のソフトウェアをはじめとする製品群を「IBM Technical Computing」として6月15日より順次出荷開始すると発表した。

 今回発表する「IBM Technical Computing」製品群は、従来のIBMハードウェアとソフトウェアをベースに、今年1月に買収完了したPlatform Computing社のソフトウェアと、ハイ・パフォーマンス・コンピューティング(以下、HPC)技術の機能を拡張したもの。この製品群を包括的に提供することで、複雑な計算処理を高速に行うための最適なシステム環境を構築することができ、さらにコンピュータ資源を効率的に活用できるため、ハードウェアの性能を最大限利用することが可能となる。これにより、企業はハードウェアの増設、設置スペース、消費電力などを抑えることができる。

企業インフラに求められる要件の変化「IBM Technical Computing」の概要

 日本IBM システム製品事業 マーケティング&ソリューション 理事の星野裕氏は、「IBM Technical Computing」製品群を投入する背景について、「現在、企業の経営層とITリーダーは、データの爆発的増加や複雑性を増すIT、非効率なIT基盤といった課題に直面している。こうした中で、企業インフラにおいても、ビッグデータの解析に対応できる高度な演算処理性能が求められるようになってきた」と、HPC技術の活用エリアが従来の専門的特殊エリアから一般企業のアプリケーションにまで広がってきていると指摘。「そこで今回、テクニカル・コンピューティングの新たなポートフォリオとして“パワフル、包括的、直感的”をコンセプトにした、『IBM Technical Computing』を発表することで、HPCの価値を幅広いビジネス分野まで拡大し、顧客の企業競争力向上を支援していく」との考えを述べた。

プラットフォームコンピューティング(IBMカンパニー)代表取締役社長 ヴァイスプレジデント アジアパシフィックのヴェニュ・サテラジュ氏

 また、「IBM Technical Computing」製品群に統合されるPlatform Computing社のソフトウェアについて、プラットフォームコンピューティング(IBMカンパニー)代表取締役社長 ヴァイスプレジデント アジアパシフィックのヴェニュ・サテラジュ氏は、「Platform Computing社の製品ポートフォリオは、大きく4つのソフトウェアで構成される。まず1つめが、ミッションクリティカルな異種混在環境向けのスケーラブルで包括的なワークロード管理スイート製品『Platform LSF Family』。次に、HPCクラスタ管理を簡素化するソフトウェア『Platform HPC』。そして、高スループット、低レイテンシーな計算およびデータ集約型分析アプリケーション『Platform Symphony Family』。4つめが、HPCクラスタのプロビジョニングと管理機能『Platform Cluster Manager』である」と説明。「これらの製品群を活用することで、金融サービスから製造、ライフサイエンス、エレクトロニクス、政府機関、エネルギー、石油/ガス、教育、小売に至るまで、あらゆる分野でテクニカル・コンピューティングを容易に利用することが可能になる」と、そのメリットを強調している。

 今回発表した「IBM Technical Computing」製品群の主な特徴としては、「IBM Platform LSF」は、複雑なアプリケーションのワークロードを管理するソフトウェア。高い演算能力を必要とする半導体、自動車、宇宙航空、ライフサイエンス、研究開発など、要求の厳しいミッションクリティカルな業務で、処理すべき業務の優先度に応じて、コンピュータ資源を適切かつ迅速に割り当てながら処理を実行する。

 「IBM Platform Symphony」は、多数のコンピュータを接続して分散処理を行うグリッド環境において、高速処理を実現するソフトウェア。ビッグデータにも対応できるHadoopを採用して機能を拡張した。また、新たにMapReduceフレームワークを統合することで、分析とビッグデータのワークロードを単一グリッド環境で処理可能となった。

 「IBM Platform Cluster Manager」は、HPC環境におけるクラスタの管理をするソフトウェア。短時間にクラスタ環境に資源を配備することができ、物理および仮想資源で構成された環境の動的な管理が可能。容易な操作で、HPCクラスタ構築のために必要な、導入と管理を実現できる。

 「IBM System x iDataPlex dx360 M4」は、1台のラックに稼動可能なサーバーの集積率が高く、極めて高速な演算処理を可能にする技術「GPGPU」を搭載できるサーバー。GPGPUの搭載により処理能力あたりの消費電力を低減でき、また、高度な冷却技術によって、従来モデルよりもエネルギー効率を最大40%向上した。大量の業務処理と消費電力の低減を両立したシステム環境を実現できる。概算価格(税別)は、1ノードが42万円、84ノード1ラック構成で3897万円。

 「IBM Intelligent Cluster」は、膨大な演算や複雑な処理を実行するために、サーバー、ストレージ、ネットワークおよびソフトウェアなどを統合したシステム。今回、これに「IBM Platform HPC」ソフトウェアを統合した。これにより、短時間でのクラスタ構築が可能となり、管理の複雑さを軽減する。また、比較的小規模なスペースにシステム集約できるため、設置スペースや消費電力を抑えることが可能となっている。


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(唐沢 正和)
2012/6/13 06:00