「PostgreSQL エンタープライズ・コンソーシアム」が設立、基幹業務への普及促進目指す


PostgreSQL エンタープライズ・コンソーシアム発足の目的
NTT 研究企画部門 OSSチーフプロデューサーの木ノ原誠司氏
PostgreSQL エンタープライズ・コンソーシアムのロゴ

 エンタープライズ領域へのPostgreSQLの普及促進を目指して、「PostgreSQL エンタープライズ・コンソーシアム」が4月11日に設立された。SRA OSS、NEC、NTT、日立、日本HP、富士通、アシスト、NECソフト、日立ソリューションズ、富士通SSLの10社が共同発起人で、エンタープライズでの利用にフォーカスして、PostgreSQLに関する情報発信や共同検証などを行っていくという。

 1970年代初めから開発されてきたIngresに端を発するオープンソースデータベースのPostgreSQLは、すでに40年近い運用実績があり、「特にバージョン8.3でのAutovacuumや、9.1での同期レプリケーションによる信頼性の向上などにより、エンタープライズデータベースとしての機能は整ってきている」(同コンソーシアムの理事長で、NTT 研究企画部門 OSSチーフプロデューサーの木ノ原誠司氏)。

 しかしながら、まだまだエンタープライズ領域でのPostgreSQLの歴史は新しく、「各種ツールやPostgreSQL本体に対する技術情報、例えば検証結果や性能評価、ノウハウが必要」なのが現状で、それを打開するために集まったのが、今回結成された「PostgreSQL エンタープライズ・コンソーシアム」なのだという。

 活動方針としては、完全に“エンタープライズ”への普及活動に焦点を絞っており、金融、鉄道などライフライン系の基幹システムへの適用を目指すとのこと。こうしたところでは、まだまだ商用データベースソフトに頼っているケースが多く、そのためにも大規模、高性能、高可用に着目した情報を整理するとした。

 また、現状ではどの領域までPostgreSQLが適用できるのか、といった判断に役立つ情報も発信する方針。同時に、バックアップやディザスタリカバリ、パフォーマンスチューニングといった、PostgreSQL本体に必要とされる周辺ツールの情報も整備するほか、参加各社でも、まだ商用製品との組みあわせでシステムを構築している現状を受け、そうした各製品との連携情報などもまとめていく。

 こうしてまとめられた情報は、同コンソーシアムのWebサイトを中心として、基本的にはすべて外部に公開する考えで、セミナーについても開催を予定する。

 さらに、「情報を集めるといっても、エンタープライズ領域でのPostgreSQLの歴史は新しいため、不足している情報がある。それを各社が共同で実証し、そういった情報も提供していきたい」(木ノ原氏)とのことで、不足する情報に対しては、リソースを持ち寄っての共同検証も行い、情報を充実させていく考えを示した。

 情報収集と検証以外では、各社の検証などで明らかになってきた機能改善項目を、開発コミュニティに積極的にフィードバックする。ただし、ソースコードレベルの提案までは視野に入れておらず、その部分は会員各社の活動に任せる。

 なお会員には、総会での議決権を持つ正会員と、議決権を持たない一般会員の両種別を設けるが、「いろんなテーマを、責任を持って推進しただけるような方」(事務局長で、米SRA OSS 日本支社 取締役支社長の石井達夫氏)を正会員とする意向だ。

 「エンタープライズ領域での機能拡張・検証が(コンソーシアム設立の)趣旨だが、人的・金銭的にも、企業の枠を超えてより効率的に行っていくことがPostgreSQLの推進には重要。(オープンソースでは)証券会社のシステムなどでも、旬な技術としてLinuxが増えている。それと呼応する形で、ミドルウェアとしてのデータベースの活用も増やしていきたい」(木ノ原氏)。


PostgreSQL エンタープライズ・コンソーシアムの組織図。正会員、一般会員ともに入会金・会費などは特に設定しないという発起人となった10社の代表による記念撮影も行われた
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