富士通研、変換効率94.%を実現したサーバー向け2.3kW大容量電源を開発


富士通研究所 取締役 兼 ITシステム研究所 所長 久門耕一氏

 株式会社富士通研究所は、出力電力容量2.3kWでは世界最高となる変換効率94.8%を実現したサーバー用電源を開発したと発表した。2014年のサーバー製品に搭載することを目指している。

 サーバー向けの電源は、外部から供給される200Vの交流電圧を、サーバーの動作に必要な安定した12Vの直流電圧に変換するが、交流電圧から直流電圧に変換する際に変換損失が発生する。この電力損失が電源からの熱発生の原因にもなっている。

 変換による電力損失を減らし、電源の変換効率を高めることがサーバー全体の消費電力節減の上で重要な課題となっているが、サーバーの高性能化により消費電力が増大し、電源も大容量化するとともに電源内部の損失が増大しているという。
 
 スイッチ素子である電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、以下FET)が連携してオンとオフを繰り返すことで電圧の変換を行っているが、このオンオフによるデッドタイム損失とスイッチング損失が、電源が大容量化するにともない増大。変換効率の高い電源を実現するのが難しくなっている。

サーバーの高性能化にともない、消費電力も増大大容量電源の課題

 今回富士通研究所は、デッドタイム損失を低減するデジタル制御技術と、スイッチング損失を低減する新回路技術を開発した。

 デッドタイム損失の低減のため、2つのFETのオンとオフのタイミングを調整するデジタル制御技術を開発。大電流時は、FETのオンオフの切り替え速度が速くなるため、両方のFETのオフ期間が長くなることでデッドタイム損失が増大する。これを防ぐために、FET2をオフにするタイミングを遅らせ、またFET1をオンにするタイミングを速め、これにより両方のFETのオフ期間を省電流時と同じように最小にすることができるという。

 スイッチング損失低減では、FET内部の出力容量にたまったエネルギーを再利用する新回路技術を開発。新回路によって、FETがオンする前に出力容量にたまったエネルギーを抜いて再利用するため、スイッチング損失の低減が可能となった。

 富士通研では、これら2つの新技術を搭載した最大出力2.3kWの電源を試作。出力電力容量2.3kW、出力電圧12Vのサーバー向け大容量電源では、世界最高となる変換効率94.8%を達成。今後は、2014年のサーバー製品への搭載を目指し、さらなら高効率化、信頼性および安定性の検証を進めていくとしている。

デッドタイム損失デッドタイム損失を低減するデジタル制御技術

 

スイッチング損失スイッチング損失を低減する新回路技術

 

試作電源では、変換効率94.8%を実現


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