クラウド基盤を利用したDRサービス~異なる電力エリアのDC事業者が連携


 株式会社BSNアイネットと北陸コンピュータ・サービス株式会社は5日、クラウド環境の災害対策(ディザスタリカバリ:DR)を実現するサービスを発表した。お互いのデータセンター内に設置されたクラウド基盤を接続し、一方のデータセンターが災害などでダメージを受けた場合でも、短時間での復旧を図れるようにする。

 この新サービスの特徴は、BSNアイネットが持つ新潟市内のデータセンターと、北陸コンピュータ・サービスが持つ富山市内のデータセンターという、事業者の異なる2つのデータセンターが連携して、クラウド環境のDRを実現している点。両社とも複数のデータセンターを所有しているが、広域にまたがった大規模災害の場合、同一地区内での対応では十分とはいえず、ユーザーからはより離れたデータセンターによるDRのニーズがあったため、共同でのサービス提供に踏み切ったという。

BSNアイネット 事業推進部の廣井智雄マネージャー
サービス連携の概要

 BSNアイネット 事業推進部の廣井智雄マネージャーは、「複数のクラウド基盤を連携させることで、一方のデータセンターが大規模災害を受けても、もう一方でサービス復旧ができるというコンセプト。データセンターの堅牢性追求には1社では限界があるので、東北電力の新潟と北陸電力の富山という異なる電力エリア、200kmほど離れた距離でのDRを実現した」と、サービスを説明する。

 サービスの対象としては、インターネット経由でアプリケーションを利用している企業、あるいはSaaSなどのクラウドサービスを提供している企業などを想定しており、本番環境側のデータセンターへ置かれたVMware vSphere 5の仮想マシンイメージとアプリケーションデータを、vCenter Service Recovery Managerによってバックアップ側のデータセンターへ保存する仕組み。

 本番環境が災害などで使えなくなった場合に、バックアップ側のデータセンターを利用してシステムを立ち上げるが、本番・バックアップの両環境はF5ジャパンのBIG-IP LTMによって連携しているので、システム復旧後、エンドユーザーからのアクセスはバックアップ側へ振り分けられ、これまで通りサービスを利用できる。

 遠隔地へ複製される仮想マシンやデータは、すべてストレージ「NetApp FAS2240」内に保存され、同ストレージが持つ重複除外機能を適用した上で、SnapMirror/FlexClone機能によって複製される。サービス開始当初、複製は12時間ごとに行われ、災害時などの復旧時間は約30分を見込むが、今後は複製の頻度をさらに上げていきたいとのこと。

 サービスの利用料金は、1vCPU、メモリ1GB、HDD 100GB程度の1仮想マシンあたりでおおよそ4万円/月を想定。両社では、3年間で合計3億円の売り上げを目指すとした。

 なお今後は、「今回の2つの地域では、同じ地域と見られることもあるだろう。さらに広くほかの事業者との連携を進め、異なる電力会社管内すべてと連携できるようにしていきたい」(廣井氏)とのビジョンも示した。

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(石井 一志)
2012/3/6 06:00