日本オラクル、中堅向けERPのクラウドサービスを提供~パートナーと共同で


 日本オラクル株式会社は11日、中堅企業向けERPソフト「JD Edwards EnterpriseOne」(以下、JDE)に関するクラウド施策を発表した。年商100億円以上の企業に対しては、米Oracleのクラウドサービス「Oracle On Demand」を活用したサービスを提供するほか、年商100億円以下の企業向けには、パートナーよりSaaS型のサービスを順次提供していくという。

 日本オラクルの代表執行役社長、遠藤隆雄氏は、「企業が成長する、あるいは生き残るために、グローバル視点の経営が求められている中で、中堅企業向けにグローバルERPの必要性が高まっている。また、早期立ち上げが求められる状況では、いちいちシステムを作っている場合ではなく、パッケージが必要だし、スタート時のハードルを下げられるSaaSが前提になるだろう」と述べ、JDEにおけるクラウド活用の重要さを強調した。


代表執行役社長の遠藤隆雄氏JDEの特徴
常務執行役員 ソフトウェアライセンス事業 製品事業統括 アプリケーション事業統括本部長の鈴木登志夫氏

 実際のサービスとしては、企業規模に応じて大きく2つの形態が用意される。1つ目は、年商100億円以上の企業に向けた「JDE On Demand@Oracle」。Oracle On Demandとは、顧客企業がJDEのライセンスを購入した上で、Oracleのデータセンターにおいて同社のアプリケーションを稼働させるクラウドサービスで、Oracleの専門技術者が運用・保守をアウトソーシングする。今回、このサービスがJDEが対応したことで、自社導入と比べてシステムの構築・展開スピードが向上するとともに、運用管理コストの平準化も実現するという。

 また導入では、パートナー企業が開発した業種・業務向けのテンプレートを活用することにより、さらなる期間短縮が見込めるとのこと。加えて、「日本からデータを出したくないお客さまに対しては、パートナー企業のクラウドサービスを利用いただく、@Partnerも用意されている」(常務執行役員 ソフトウェアライセンス事業 製品事業統括 アプリケーション事業統括本部長の鈴木登志夫氏)とした。

 価格は、ライセンス費用・保守費用を含まず、年間1300万円程度から。


JDE On Demand@Oracleの概要参画パートナーと活動内容
常務執行役員 ソフトウェアライセンス事業 製品事業統括 アプリケーション事業統括本部長の鈴木登志夫氏

 一方、年商100億円未満の企業に向けては、SaaS型サービスがパートナー企業から提供される。日本オラクルでは、「JDE BPOプログラム」によって保守料込みでライセンスをパートナーへ提供し、パートナーは自社のサービスを加えた上で、自社のデータセンターから、SaaS型のJDEを顧客企業に提供する仕組み。SaaSによる従量課金で提供されることから、初期費用を抑えつつ、グローバルERPを活用できるのがメリットとなる。

 日本オラクルによれば、いわゆる“リーマンショック”前は、100億円未満の企業がJDEの顧客のうち10%程度を占めていたというが、それ以後は投資の落ち込みなどによって“買いたいけど買えない”状態になり、比率が落ちていたという。今回、SaaS型での提供によって、こうした企業の取り込みを図りたい考えで、過去と同水準への復帰を見込んでいる。

 パートナーとしては、現在、ジェクシードコンサルティングによるプロフェッショナルサービス、卸業向けの会計を中心としたERPサービスの提供が予定されており、順次こうしたパートナーを増やしていくとのこと。

 なお、パートナーからの提供になるため価格はそれぞれ異なるが、あるパートナーは1ユーザーあたり月額10万円で提供できないか、試算を進めているとした。JDE BPOプログラムで提供されるSaaSは、Oracle On Demandとは異なり、ライセンスを別途購入する必要はない。

 

JDEと連携する2つのアプリケーションも訴求を図る

 これらのクラウドサービスに加え、今回はさらに2つの施策が発表された。

 その1つが、中堅企業におけるJDEの価値訴求で、そのためにERP導入効果を促進する「Oracle BI Applications」との連携による価値を紹介。「Oracle BI ApplicationsはKPIがプリセットされているため、使いやすく、導入期間も短縮できる。BIでもTCOが優れているとの評価をいただけるのではないか」(鈴木氏)と、その効果を強調する。

 またもう1つが、SaaS型CRMサービス「Oracle CRM On Demand」のお試し同梱パッケージ「キックスタートプログラム」の提供。ERPなどのビジネスアプリケーションに、1ユーザーあたり月額8152円で提供されているOracle CRM On Demandの1年分(10ユーザー)のライセンスを無償バンドルする。

 鈴木氏はこれについて、「Oracle CRM On Demandは、他社のCRMサービスとは異なり、組み込み型のBIが含まれている点なども評価が高く、また日本では営業、サービス業務以外にマーケティングも要望が高いので、3機能を無償提供する」と述べている。


Oracle BI Applicationsの価値訴求キックスタートプログラムの概要
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