日本HP、7年ぶりにハイエンドテープライブラリを大幅刷新

「HP ESL G3 テープライブラリ」を発売


 日本ヒューレット・パッカード株式会社は、ハイエンドバックアップストレージの新世代モデルとして「HP ESL G3 テープライブラリ」を発売した。ハイエンドテープライブラリの全面刷新は7年ぶりとなる。

 新製品発売の背景を、エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 HPストレージ事業本部の飯尾光國事業本部長は次のように説明した。「大容量データバックアップストレージは、大容量データバックアップやアーカイビング需要の拡大により、好評で売り上げも順調に増加している。バックアップストレージにはディスクとテープがあるが、共にアドバンテージ、ディスアドバンテージが存在する。ITの総合ベンダーとして商品をそろえ、お客さまの要望に応じて最適な商品を提供する」。


エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 HPストレージ事業本部の飯尾光國事業本部長新製品のHP ESL G3テープライブラリの概要
HP ESL G3 テープライブラリ

 新製品「HP ESL G3 テープライブラリ」は、テープバックの中でも最上位に位置する。爆発的なデータ増大、セキュリティ要件の高まり、データに関するリスクの増大などを背景に、情報管理、情報保護への投資に対応する。

 「ディスクバックアップは適用範囲の拡大により、市場が拡大している。しかし、市場全体を考えるとテープの割合が圧倒的に大きい。3月以降、IT製品をとりまくニーズも大きく変わり、バックアップ製品もデータ保護、災害対策ニーズが増大していることが、われわれが行ったユーザー調査で明らかになった、データ増加への対応、情報セキュリティの強化、バックアップ&リストアの改善という3点のニーズが高いことが明らかになった」(エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 HPストレージ事業本部 ストレージ製品本部 製品マーケティング部、諏訪英一郎担当マネージャー)。

 新製品は、LTOドライブを搭載したテープライブラリ製品の最上位機種で、最大5322スロットまでの拡張性を持っているが、最小100スロットからのスモールスタートが可能となっている。仮想パーティションやメディアのプール機能を新たに備え、データ量の増加に合わせてライブラリを段階的に拡張していくことができる。筐体も、標準19インチ幅ラックを採用したことで、データセンター内での配置も容易となった。


新製品の特徴とメリットエンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 HPストレージ事業本部 ストレージ製品本部 製品マーケティング部、諏訪英一郎担当マネージャー

 特徴の第1点目は、容量増に適応する柔軟で高い拡張性。最小100スロットからのスモールスタートで、容量増加のペースにあわせ100スロット単位で拡張できる。ライブラリシステムの停止なく最大5322カートリッジ、最大15PB、最大96テープドライブ(LTO-5またはLTO-4 Ultrium)まで拡張可能。

 自動メディアプール機能「Automated Media Pool」により、仮想的なメディアプールをパーティション間で共有し、必要時に割り当てを行う。


新製品の特徴である拡張性の詳細新製品の特徴である仮想パーティションとプールの詳細

 特徴の第2点目は、継続的なデータ保護を可能にする高可用性。ライブラリシステムの連続稼働を支える冗長電源と冗長アクセスパス(コントロールパスおよびドライブパス)を持ち、テープドライブとの接続を二重化する「HPデータ・パス・フェイルオーバー」機能、および複数テープドライブを接続しライブラリ間を冗長化する「HPコントロール・パス・フェイルオーバー」機能を実装している。

 2012年には、メディア交換機構を冗長化し可用性を向上するデュアル・ロボティクスを提供することも予定している。MSBF(平均故障間スワップ回数)は、業界最高レベルの300万時間。

 特徴の第3点目は、工数、コストの削減に貢献する優れた管理性。HP Command View TLソフトウェアにより、複数のライブラリを単一画面から一括で管理できるGUIを搭載し、リモートにおける管理、診断、構成が可能。HPが独自に開発したツールである「TapeAssure 」を搭載し、高度なレポート機能によってテープライブラリの運用を強力に支援する。すべてのテープドライブとメディアに関するステータス、性能、使用率、健全度をHP Command View TLの管理インターフェイスを通して、容易に把握することができる。

 LTO-5およびLTO-4 Ultrium テープドライブに組み込み済みのAES 256ビットtハードウェア暗号化により容易なデータセキュリティが実装できる。統合暗号キー管理ソリューションEnterprise Secure Key Manager(ESKM9とともに、輸送時および外部保管時のデータ漏えいリスクを低減する。


新製品の特徴である可用性の詳細HPが独自開発した管理ツール

 価格は最小構成で1705万2000円から。大容量アーカイブソリューションを利用する新たなマーケットを獲得する方針で、キャリア、放送局、官公庁などの利用を想定している。

HP ESL G3 テープライブラリの内部HP ESL G3 テープライブラリの全面にある管理画面
管理画面のパーティション管理画面HP ESL G3 テープライブラリのテープ交換装置

 今回、テープドライブによるバックアップ改善としてフジテレビの事例が紹介された。「従来、フジテレビではLTO-5ベースのLTFS(LinerTapesFileSystem)ではない製品を利用していたため、CGデータの保存の際、現場のCGデザイナーではなく、システムエンジニア経由でバックアップを行っていた。そのため余分な工数がかかり、コスト、利用したい時にデータバックアップができないという問題を抱えていた。新たにLTFSを導入後は、CGデザインチームが作業をスクリプト化し、自分たちでバックアップを行い、内部のデータを自分たちで取り出すことができるようになった。デザイナーはコマンドを打つことなく、アイコンを自作して自由にデータバックアップを行うようになった」(エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 エンタープライズサーバー・ストレージ技術第一本部 インダストリスタンダードサーバー技術部、稲葉洋幸ITスペシャリスト)と大幅に利用状況が変わったという。


事例として紹介されたフジテレビの従来のテープライブラリ利用状況フジテレビのバックアップサーバーのデスクトップ画面フジテレビの新しいテープライブラリ利用状況
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(三浦 優子)
2011/7/8 06:00