F5ジャパン、ミッドレンジ向けのシャーシ型アプリスイッチ「VIPRION 2400」

アプリスイッチを仮想化し複数の環境を収容する「vCMP」機能も


VIPRION 2400
シニアプロダクトマーケティングマネージャ、帆士敏博氏
ブレードを追加するだけで、容易に性能を拡張できる

 F5ネットワークジャパン株式会社(以下、F5ジャパン)は2日、シャーシ型アプリケーションスイッチ「VIPRIONシリーズ」のラインアップに、ミッドレンジ向けの「VIPRION 2400」を追加すると発表した。またVIPRIONシリーズ向けの仮想化機能「vCMP」を、8月をめどに提供することも明らかにしている。

 VIPRIONは、ブレードを挿入することで必要に応じて性能を拡張できる、シャーシ型のアプリケーションスイッチ。CPUのコアをクラスタ化する同社独自のCMP技術によって、ブレードを追加すれば直線的に性能が増加するほか、ブレードを複数搭載することにより、1枚のブレードが故障したとしても、ほかのブレードへ処理を引き継ぐことでサービスの中断を防止することができる、高い可用性を備えている。また拡張に際してもブレードを挿すだけの簡単さで、サービスの中断は必要ない。

 2008年の2月に発表された最初のVIPRIONである「VIPRION 4400」では、このような高い拡張性と可用性を備え、最大36Gbpsのレイヤ7スループット(当時)を提供できたことから、同社のハイエンド製品に位置付けられ、サービスプロバイダやソーシャルネットワーク事業者などで利用されている。

 しかし今回発表された「VIPRION 2400」は、「オンデマンドに性能を拡張できる、業界で初めてのミッドレンジ向け製品」(シニアプロダクトマーケティングマネージャ、帆士敏博氏)として製品化された。

 それはVIPRIONの特性が、企業内で進みつつあるサーバー統合やデータセンター統合、ひいてはプライベートクラウド構築において大きな武器になるからだという。例えば、企業内で利用するWebアプリケーションへのアクセスが増え、サーバーを増強しようとした場合は、サーバーとその前に置くアプリケーションスイッチを増設し、アクセスを分散させていたが、キャパシティプランニングが難しかったり、サーバー、ネットワーク、管理といった複数の担当者間の調整で時間がかかったりと、さまざまな課題を抱えているのが現実。しかも、そうして場当たり的に拡張されたシステムは複雑になりがちで、管理ポイントも増えるため、管理コストも増大してしまう。

 これに対してVIPRION 2400では、必要に応じてブレードを挿していくだけなので、迅速に拡張でき、ケーブリングや設定の変更が不要なほか、アプリケーションスイッチ間のDNS変更も不要。

 性能的にも、ブレード1枚搭載時で40Gbpsのレイヤ4スループット、18Gbpsのレイヤ7スループットを備えるほか、ブレードを4枚搭載すれば、160Gbpsのレイヤ4スループット、72Gbpsのレイヤ7スループットを実現可能。「1Gbpsあたりのレイヤ4スループットに必要なコストは、BIG-IP 1600の1/10、初代VIPRIONと比べても1/4以下で、非常に高いコストパフォーマンスを提供できる」(帆士氏)上、個々にアプリケーションスイッチを増設する場合と異なり、ブレードを増やしてもデバイスが増えないため、管理コストも変わらず、その面でもメリットを提供できるのだという。

 このほか、電源はアプリケーションスイッチで初めて、80Plus Gold認定を取得した電源を搭載。「消費電力を削減するとともに、余分な発熱がないことから、故障率の低減にも寄与するだろう」(帆士氏)とした。

 VIPRION 2400の価格は、シャーシ本体が170万円、ブレードが1020万円。7月の提供開始を予定する。


VIPRION 2400のスペック高いコストパフォーマンスも特徴だ
vCMPの特徴

 一方のvCMPは、VIPRIONシリーズ向けの仮想化機能で、1つのVIPRIONを仮想的に分割し、最大16のインスタンスとして利用できるようにするもの。

 帆士氏によれば、企業内のインフラ統合が進んだことで、1つのアプリケーションスイッチを用いて、複数のサーバーへのアクセスをコントロールしようとするケースが増えてきたというが、「アプリケーションスイッチを共有しても、業務が異なれば求めるサービスレベルは違うし、障害の波及範囲が大きくなったり、特定の業務がリソースを食いつぶしてしまったり、多くの課題がある」のだという。

 vCMPでは、仮想的なアプリケーションスイッチを1つのVIPRION内に構築できるようにすることで、こうした課題を解決可能。それぞれの仮想環境は独立しているので、1つの環境で障害が起きてもほかの環境には影響を与えないし、ハードウェアリソースも確保され、きちんと処理能力を担保できるとのこと。さらに、異なるバージョンのBIG-IPを動作させることも可能なため、それぞれの業務の要件にあわせて、適切な環境を提供できるとした。

 予定価格は、4インスタンスまで利用できるライセンスが170万円、16インスタンスまで利用できるライセンスが340万円。VIPRION 2400のほか、「Performance Blade 200」を搭載したVIPRION 4400でも利用できる。


vCMPを用いて、1つのVIPRIONを複数のインスタンスで使えるようにすれば、統合によるメリットを最大限に受けられるという
長崎忠雄社長

 なお、F5ジャパンの長崎忠雄社長は、「従来、投資が部分最適で行われていたため、日本のITシステムは柔軟性に欠けたものになってしまった。当社では、ネットワークを戦略的なコントロールポイントと位置付けており、そのために、低コストで、再利用でき、可用性も高いシステムを実現するための製品を提供していく」と話し、クラウド・仮想化の時代に対応したネットワーク製品を提供していくとの意思を、あらためて示していた。

 今回発表された製品、機能については、6月8日から幕張メッセで展示会が開催される「Interop Tokyo 2011」にも出展される予定だ。


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