SAPジャパン、リアルタイムコンピューティング戦略を日本でも推進

モバイルソリューションの新製品を投入


代表取締役社長のギャレット・イルグ氏

 SAPジャパン株式会社は1日、米国フロリダ州で5月16日~18日に開催したカスタマーイベント「SAPPHIRE NOW 2011」に関してプレスセミナーを開催し、同イベントで発表された最新のビジネス戦略および日本での展開について説明した。また、同社が推進するリアルタイムコンピューティング戦略における新たなモバイルソリューションとして、「Sybase Unwired Platform 2.0」と「SAP NetWeaver Gateway」を発表した。

 「今回のSAPPHIRE NOW 2011には、世界中の顧客やパートナーなど、1万3000人以上が一堂に会し、過去最大規模のカスタマーイベントになった。これは、現在当社がフォーカスしているインメモリコンピューティング、モビリティ、クラウドという3つのテーマについて、その最新動向に関心が集まっている証拠だ」と代表取締役社長のギャレット・イルグ氏。日本から参加した顧客やパートナーも過去最多人数となり、「基調講演では、インメモリコンピューティングの導入事例として日本の顧客が紹介されるなど、日本市場への注目度がさらに高まっていることを感じた」としている。

 3つのテーマへの取り組みについてイルグ氏は、「インメモリコンピューティングは、IT業界で今最も注目されている領域だ。多くの情報を集約し、高精度かつ高速に処理することで、顧客のビジネス競争力を向上させることができる。モビリティとしては、当社が唯一のプラットフォームプロバイダとしてモバイル向けに特化したテクノロジーを提供している。これにより、顧客のSAPインフラをさまざまな環境やデバイスで幅広く使えるようにする。そして、モバイル環境でこそ、クラウドのメリットが最大限に発揮される。クラウドによって、膨大な量のコンテンツをモバイル環境でリアルタイムに扱うことができる」と説明。「この3つのテーマには、テクノロジーのさまざまなイノベーションが集約されている。これを世界だけでなく日本市場のビジネス戦略にも組み込んでいく」との考えを述べた。

リアルタイムコンピューティング推進本部長の馬場渉氏

 続いて、リアルタイムコンピューティング推進本部長の馬場渉氏が、「SAPPHIRE NOW 2011」で発表された新たな戦略と日本市場への取り組みを説明した。

 「昨年のSAPPHIRE NOWでは、『2015年までにユーザー数を10億人にする』という大きな目標を掲げたが、今回は、それから1年間たった進ちょく状況に注目が集まった。発表当時は遠い目標のように思えたが、今年のSAPPHIRE NOWでは、目標に向けた具体的なビジョンが示され、顧客やパートナーからの理解を得られるようになった。特に、ビッグデータの取り扱いについて、他社と決定的に異なる点としてリアルタイム性への取り組みがアピールされた」(馬場氏)と、リアルタイムコンピューティング戦略が今回のイベントの大きなトピックになったという。

 具体的には、アプリケーション間をリアルタイム統合した次の段階として、インメモリデータベース「SAP HANA」を展開し、企業内で発生したさまざまなデータを業務部門がリアルタイムに活用できる環境を実現していく考え。「SAP HANAは、今月から一般出荷を迎えるが、全世界的に高い評価を得ている。特に、日本市場では当初計画していた販売量の3倍以上の反応があった」(馬場氏)と、「SAP HANA」への期待を高めている。

SAPが目指すリアルタイムコンピューティングの構成要素リアルタイムコンピューティングを支える2つの新製品

 さらに今回、同社では、「SAP HANA」によるインメモリコンピューティングに加え、モビリティ領域でのソリューションを拡張し、企業内にとどまらず、エンドユーザーまで含めたエンドトゥエンドのデータ活用をリアルタイム化していく戦略を打ち出している。馬場氏は、「この新たなリアルタイムコンピューティング戦略を支えるモバイルソリューションとして、『Sybase Unwired Platform 2.0』と『SAP NetWeaver Gateway』を日本市場に投入する」と、今回発表した新製品の位置づけを説明した。

 「Sybase Unwired Platform 2.0」は、主要なモバイルデバイス・プラットフォームに対応し、ネイティブ/Webアプリケーションのライフサイクル全体を開発・管理できるモバイルソリューションの最新版。本日より提供を開始し、ソフトウェア開発キット(SDK)の拡張版は今秋に提供開始する予定。

 主な機能強化点は、HTML5、JavaScript、CSSなど、業界標準のWebベースアプリケーション開発環境をサポート。これにより、デバイスに依存しないアプリケーションを作成できるため、モバイルアプリケーションの開発生産性、メンテナンス性を大幅に向上する。また、主要モバイルプラットフォーム(iOS、Blackberry、Windows Mobile、Android)の一貫したサポートを実現。Androidは、2011年第2四半期にサポートを開始する予定。このほか、バックエンドシステムとの連携、セキュリティ機能の大幅強化が行われている。

 「SAP NetWeaver Gateway」は、SAPのデータやプロセスを多様なデバイスや多くのUIで容易に利用可能にするモバイルソリューション。6月中に提供開始する予定。

 これによって、顧客はSAPアプリケーションをデスクトップからだけではなく、あらゆる環境、ツール、端末からアクセスすることが可能となる。また、開発者は、最適な開発ツールを使って新たなアプリケーションを作成できる。特に、プログラム言語やモデルを問わずSAPアプリケーションとの接続性を実現するため、SAPの開発言語について知識のない多くの開発者でもRESTサービスやOData/ATOMプロトコルなどの業界標準を使って新しいアプリケーションを作成し、SAPソフトウェアに直接連携させることができるという。

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(唐沢 正和)
2011/6/2 06:00