デスクトップ仮想化のコスト削減効果は5年で3800万円、ITRが試算


 株式会社アイ・ティ・アール(ITR)は27日、デスクトップ仮想化導入によるコスト削減試算結果をまとめ、ホワイトペーパーとして公開した。デスクトップ仮想化は5年間で約3800万円、マネージド・クライアントサービスは5年間で約1100万円の削減効果という。

 クライアントPC関連業務の効率化、モバイル端末の台頭、そして東日本大震災の影響を受けて、業務継続計画(BCP)の一環としてデスクトップ仮想化への注目が高まっている。しかし、その導入には、ソフトウェアのライセンスコストだけでなく、MicrosoftのSA契約をしていない企業の場合、仮想Windows OS(Microsoft VDA)のライセンスも必要となり、初期導入コストの高さから導入をあきらめるケース、あるいはマネージド・クライアントの導入に検討を切り替える企業も存在するという。

 そこでITRは、仮想企業(国内に7拠点を有しPCユーザー数1000名の製造業)を想定し、デスクトップ仮想化およびマネージド・クライアントの導入がTCOに与える影響の算出を試みた。

 その結果、クライアント環境の集中管理による運用管理業務の効率化、およびクライアント環境にデータを保存できないといったセキュリティ向上による機会損失コストの削減が、TCO削減に大きく寄与することが分かったという。

 具体的に、通常のPCを継続するモデル(モデルFC)に比べ、デスクトップ仮想化を導入したモデル(モデルVDI)は5年間の「運用管理コスト」を約6000万円、マネージド・クライアントを導入したモデル(モデルMC)は約2300万円削減でき、機会損失コストに関しても、モデルVDIで約8500万円、モデルMCで約4900万円削減できることが判明した。

 モデルVDI・モデルMCともに初期導入コストは大きくなるものの、4年目には3モデルともTCOはほぼ横並びとなり、5年間のトータルではモデルFCに比べ、モデルVDIが約3800万円、モデルMCが約1100万円の削減が可能という結果となった。

 ITRでは「今回のコスト試算は、運用管理コストの削減とセキュリティの向上をもたらす効果を定量的に示したものといえる。しかし、デスクトップ仮想化の導入効果はこの2大要素だけでなく、ワークスタイル変革による生産性向上も認識されつつある。今回の試算では、その効果によるROIを含めていないが、東日本大震災をきっかけにBCPの策定や在宅勤務の促進などオフィスの節電対策に活用しようという動きも出ている。これらのソリューションに関しては、初期導入コストだけでなく5年間のTCOと、安全にどこからでも個々のデスクトップ環境を利用できるメリットも念頭に置いて、新しいクライアント戦略を検討することが望まれる」としている。

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(川島 弘之)
2011/5/27 14:53