日本オラクル、データセンターなどでの節電支援を強化

テープ/フラッシュ混在の階層型ストレージ環境を推奨


執行役員 システム事業統括システム営業統括本部長・野々上仁氏

 日本オラクルは、サーバー、ストレージ製品における企業コンピューティング環境の節電および省エネ支援施策への取り組みについて説明を行った。

 首都圏における電力供給の不安が高まる中、企業では節電や事業継続計画(BCP)対策などが喫緊の課題となっている。今回の提案によって同社では、サーバー、ストレージ製品などによる、コンピューティング環境の節電や省エネを支援する考えだ。

 日本オラクル 執行役員 システム事業統括システム営業統括本部長の野々上仁氏は、「データセンターの約7割が東京電力管内にある。IT産業においては、データセンターの電力削減は最も重要な観点になる。最初のステップにおいては、既存のデータセンターでは、サーバーの消費電力削減やストレージ環境の見直しを行うことが必要だ。また、2つ目のステップとして、デスクトップ環境の見直しを行い、シンクライアントによる節電や、仮想デスクトップ環境の導入などにより東京電力管外での使用を促進することがあげられる。そして3つ目には、高密度統合による効率化に取り組む必要があるだろう」とし、サーバーの電力制御、フラッシュ/ディスク/テープによるストレージの階層化、デスクトップの仮想化とシンクライアント化、高性能マシンへの統合、データセンターの冷却効率向上といった観点から電力削減策を提案する。

 特に、階層型ストレージ環境の構築が電力削減には効果的であり、I/O性能で比較した場合、フラッシュの消費電力はHDDの2000分の1、容量で比較した場合には、テープはHDDの100分の1の消費電力で済むという。

 「大量のディスクを使用しているユーザーにとっては、ディスクの節電は頭の痛い問題となっている。3月以降はテープの使用に関する問い合わせも増加している。常にディスクを回しているのではなく、必要なときに電力を使ってデータを取り出すというソリューションが求められているともいえよう。ディスクに保管しているだけでなく、フラッシュやテープとを組み合わせた階層利用とすることで、効率的な電力環境が実現できる」(野々上執行役員)とした。

電力削減へのロードマップ階層型ストレージが電力削減にも効果的

 日本オラクルでは、これらを組み合わせたハイブリッドストレージソリューションの提案を行っており、同社の長年に渡るテープソリューションの実績、「Storage Archive Manager」などソフトウェアによる効率管理により、パフォーマンス経済性やデータ容量経済性の観点からの消費電力の提案を行っていくという。

 また、ある金融機関での導入事例を紹介しながら、「6台のハイエンドUNIXサーバーと3台のストレージの組み合わせから、2台のExadata X2-2に置き換えた結果、70%の消費電力削減が可能になった。高性能マシンへの集約、クラウド化による効率利用などで省電力化が図れる」とした。

 この置き換えでは、1.3倍以上のCPU性能の向上、6.5倍以上のI/O性能の向上、RACの冗長構成も可能になっている。

 そのほか、「Oracle Enterprise Manager Ops Center」を活用することでCPU使用率を制御。必要な時に必要なだけサーバーの電力を使用すること、消費電力の上限を設定することが可能であるといった効果を紹介。「SPARCだけでなく、X86サーバーにも適用できるソリューションであり、短期間ですぐに効果をもたらすことができる」とした。

 加えて、静岡大学で2000台導入したシンクライアントシステムによって、デスクトップのクラウド化によるBCPと省電力を実現している事例を示しなから、デスクトップ環境での消費電力の削減と、在宅勤務などへの応用を示した。

必要な時に必要なだけサーバーの電力を使用

システム事業統括ソリューション統括本部プロダクト&パートナーソリューション本部マスター・プリンシパル・セールスコンサルタントの大曽根明氏

 Sun Ray 3を利用すると、デスクトップPCに比べて約90%の電力削減が可能となり、「シンクライアントの活用は、電力効率が高いソリューションになる」(日本オラクル システム事業統括ソリューション統括本部プロダクト&パートナーソリューション本部マスター・プリンシパル・セールスコンサルタントの大曽根明氏)とした。

 一方、データセンターにおける消費電力削減については、高密度機器が増加していることで、IT機器そのものやそれに伴う冷却に多くの電力が消費されていることに着目。しかも、不均一な熱負荷が生まれており、偏りのない高効率冷却の実施が必要であると指摘する。

 「熱源の近くで熱処理を実施する高効率化と、必要な箇所に必要な冷気を供給する高柔軟性が求められており、POD型冷却方式が効果を発揮する。またオラクルでは、データセンターの節電対策に関して、製品だけに留まらず、コンサルティングによるソリューションを提供している。ACSソリューションとして冷却効率改善アセスメントサービス、エコ冷却効率改善サービス、エコ最適化サービスを用意。またサーバー仮想化やシステム統合などの数々のシステムソリューションも節電に効果をもたらす。現状把握モニタリング、評価・分析、節電対策の実行、効果測定といった対策ステップによって節電を実現する」と語る。

Sun Ray 3とデスクトップPCの消費電力比較データセンターの節電対策ステップ

 すでにいくつかのデータセンターで節電ソリューションを提供。44台の空調機のうち、7台を停止する事例も出ているという。また、アセスメント作業で1カ月、実施作業で2カ月という短期間で成果をあげることができるという。

 「オラクルはサンの買収によって、サーバー、ストレージ、デスクトップ、アプリケーションを一環して提供できるとともに、データセンターに対するアセスメントも提供できる。トータルでの節電ソリューションを提供できる企業である」(日本オラクルの大曽根明氏)と位置づけた。

 今回の会見では、オラクルのデータセンターにおける消費電力への取り組みについても紹介した。

 最新データセンターであるユタに設置しているデータセンターでは、サーバー1台あたりの年間電力コストは163ドルになっており、サンマテオの614ドル、オースティンのデータセンターの276ドルに比べても大幅に削減していることを示した。

 ユタのデータセンターでは、上部冷却の導入のほか、ホット通路による分離、外気を取り込む冷却方法の採用、小区画方式の採用などにより、冷却効率を高めて、消費電力の削減を可能にしているという。

データセンターの節電対策。オラクルが提供するサービス実施例進級データセンター比較
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