日本IBM、企業のビッグデータ活用を支援するソフト2製品~多様で膨大なデータを高速分析


理事 ソフトウェア事業 インフォメーション・マネージメント事業部長の俵雄一氏

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は23日、多様化かつ頻発する膨大な量の企業データ「ビッグデータ」の活用を支援するソフトウェア新製品として、「IBM InfoSphere BigInsights Enterprise Edition V1.1」(以下、BigInsights)と「IBM InfoSphere Streams V2.0」(以下、Streams V2.0)を順次出荷開始すると発表した。

 新製品の発表にあたり、理事 ソフトウェア事業 インフォメーション・マネージメント事業部長の俵雄一氏が、同社のビッグデータへの取り組みを説明。「ビッグデータは、今後ZB(ゼタバイト)規模の量に拡大するとともに、これまでにない高頻度でデータが発生し続ける。また、非構造化データが大半を占め、データの多様性がさらに増すことになる。当社では、こうしたビッグデータを単に分析するだけでなく、企業情報のライフサイクル全体の中に位置づけ、他のインフォメーション・マネジメント製品とも連携した包括的なアプローチによって、ビッグデータの企業活用を支援していく」と述べた。

ビッグデータに対する包括的なアプローチIBMのビッグデータアーキテクチャ構想

 今回発売する2つの製品は、同社の進めるビッグデータ戦略を支えるもので、ビッグデータアーキテクチャ構想における“エンタープライズエンジン”を担う製品となる。まず、「BigInsights」は、構造化の有無にかかわらず大量データを分析できる新製品。大規模データを効率的に分散処理・管理するためのオープンソースソフトウェア「Apache Hadoop」の技術をベースとして、IBMリサーチの研究者200人以上による4年にわたる研究の結果、企業で活用するために必要な機能を提供する。

ビッグデータ戦略を支える2つの製品

 具体的には、大規模なクラスター環境を容易に構成・運用するための統合インストーラーや管理コンソール、Hadoopとのデータのやりとりを容易にするクエリー言語Jaql、既存のInfoSphere WarehouseやDB2との連携を容易に行うためのデータ統合機能など、IBMがインフォメーション・マネージメント分野で培ってきた技術を適用した独自機能を豊富に備えている。

 一方、「Streams」は、大量データをリアルタイムに処理するストリーム・コンピューティングを実現するミドルウェア。データを蓄積せずにリアルタイムで処理できるため、証券フロント・オフィスにおけるトレーディングなど、発生頻度が高いデータをより高速に分析することが求められる業務に適している。

 今回の新バージョンでは、大幅なパフォーマンス向上を実現しており、従来比3.5倍の速度で分析処理を可能にしている。同社の実証実験では、1秒あたり1000万件以上の通信ログを処理することに成功。また、東芝ソリューションによる稼働テストでは、証券業のアルゴリズム・トレーディングという複雑な処理でも、1秒あたり平均6~7万件の処理を実現したという。

 このほかにも、開発言語「Streams Processing Language」の大幅な機能拡張、Netezza TwinFinやMicrosoft SQL Server、MySQLを含む新しいデータベースのサポート、ストリーミングデータに対してリアルタイムでのマイニングが可能なマイニング・ツールキットの提供、金融業向けアプリケーション開発をサポートするツールキットの提供などの機能強化を行っている。

 価格は、「BigInsights Enterprise Edition」の使用料金が285万円(税別)/1TBから。5月27日より提供開始する。また、10TBまでの利用に限り、「BigInsights」を無料で利用できる「BigInsights Basic Edition V1.1」もあわせて提供する。「Streams V2.0」の使用料金は464万円(税別)/コアから。5月24日より提供開始する。このほか、開発者向けライセンスも38万3100円(税別)/許可ユーザーで用意している。

 俵氏は、これら2製品の販売施策についても触れ、「ソフトウェア事業、コンサルタント、基礎研究所の研究者でビッグデータ向けソリューションのチームを編成して、積極的に拡販に取り組んでいく。ビッグデータを活用した顧客企業の成長戦略を立案し、最先端の技術を活用しながら、そのIT基盤を実現するという包括的な支援体制を整えていく」との考えを示した。

 また、普及・啓発活動として、機能を限定した「BigInsights Basic Edition」の利用拡大を図るとともに、6月からは月2回の頻度でビッグデータ関連のセミナーを開催する予定。さらに、ビッグデータソリューションを扱うビジネスパートナーを拡大するため、スキルアップを支援するハンズオン・トレーニングなどを月1回程度実施していく計画だ。

関連情報
(唐沢 正和)
2011/5/24 06:00