日本IBM、電力見える化や、節電ソリューションを短期間導入へ

今年夏に向けた震災復興向けサービスへの取り組みを説明


日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業コンサルティング&SI統括の椎木茂専務執行役員

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は17日、節電対策を中心とした震災復興に向けたサービス事業への取り組みについて説明した。

 同社では、節電対策のほかにも、震災後から危機管理・災害対策を支援するソリューション群を発表。危機管理の強化、企業の事業継続性の確保など、コンサルティングから計画の実行までを一貫して支援する体制を構築し、震災後から多岐にわたる顧客ニーズへの対応を図ってきた。

 具体的には、事業所(店舗、工場、オフィス)とデータセンターの節電対策支援による「節電」、危機管理、事業継続のための計画策定および実行支援、IT災害対策計画および実行支援による「事業継続・回復」、日本IBMの10年にわたるe-work制度の経験を活用し精度設計からインフラ導入までの包括的なサービスによる「在宅勤務支援」、テキスト言語の解析ツールを活用し、Twitterなどのネットメディアでの自社や事業に関する風評を分析し、その対策立案とアクションを支援する「グローバル風評分析」の4つのソリューションを提供してきたという。

 特に、今年夏においては、節電対策、BCP(事業継続)、働き方改革の3つの観点からの取り組む必要があるとする。

 中でも節電対策としては、電力削減のための考慮事項を挙げ、「消費電力の削減では会社に来なくても仕事ができる仕組み、オフィスのクローズ、省電力機器への切り替え、照明、PC、空調、エレベータなどの節約があるが、これだけでは、全体での25%の電力削減には到達しない。電力消費のシフトとしては、昼から夜や早朝勤務、あるいは平日から週末での勤務、夏場の勤務を減らして別の月への勤務体制の変更、東京電力圏からの西日本シフトや海外シフトといったこともあるだろう」(日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業コンサルティング&SI統括の椎木茂専務執行役員)と指摘。

 また、「だが、その一方で、これらを実行するにはさまざまな課題もある。本社機能の集中から最適化した仕組みへと変更すること、e-workにおいても単にネットがつながるだけではなく、データベースの共有や機密情報共有におけるセキュリティ強化、ビジネスでも対応できるネットミーティングの仕組みの導入、それを実行するための社内のカルチャーの変革、就業規則の変更や労働組合との話し合い、サプライヤーと連動した仕組みの変更などがある」とした。


日本IBMが提供する危機管理・災害対策を支援するソリューション日本IBMが提供する電力削減ソリューションの概要今年夏に向けて提案する節電ソリューション

 

ユーザー企業での節電対策における課題

 一方、日本IBMでは、ユーザー企業の間には、節電対策として、3つの課題があるとする。

 ひとつは「個別の電力削減施策はあがってくるが、25%電力削減全体計画を策定できていない」という点。2つめには、「エネルギー削減に向けて大胆な施策を考えているがビジネスへの影響が見えない」という点。そして最後に、「施策を実行したものの、本当に効果が継続できているかを把握することができていない」という点だとする。また、これらの課題解決に向けたプランを、この1~2カ月という短期間に、どこまでまとめることができるかといったことも課題だとしている。

 日本IBMでは、それらを解決する支援サービスを提供することが可能だと自信をみせる。

 「企業で使用しているエネルギーは、空調電力、照明電力、事業設備電力、OA機器などのコンセント電力による電源電力の4つに分類できる。用途、場所ごとの電力を把握することにより、大胆にエネルギー削減の方向性を決定することが必要」と前置きし、「25%のエネルギー削減をしながらも売り上げは7%減で抑えられるというプランが必要。これは、ビジネスインパクトと従業員満足度のバランスをとることともいえ、ビジネスインパクトの大きい領域での節電対策を最小限に抑えることが必要となる。まずはエネルギー消費の見える化が必要になる。さらに、見える化をしただけでなく、それを課題解決のためのサイクルとして回すことが必要」とした。

 なおIBMでは、1970年比60%減のエネルギー削減を行ってきた実績を背景に、節電に対する提案を行っていく姿勢を示す。

 「当社自身が40年間をかけて蓄積したノウハウを活用することができ、必要とされる改善策を提案できる」とし、「日本IBMでは、エネルギー削減施策のテンプレートを用意しており、これをもとに、1~2週間でオファリングを作ることができるほか、エネルギー削減想定効果を測定するシミュレーションツールも用意しており、実現性の検証を行い、経営トップへの働きかけを可能とし、実行計画を策定できる。事前準備から含めると2週間から4週間で策定できるものになる」とした。

 さらに、エネルギー削減効果の測定についても、短期間で導入できる仕組みを提案していくとする。

日本IBMが取り組んでいるEPD(Energy Management)

 日本IBMでは、EPD(Energy Management)と呼ばれる仕組みを導入。さらに、3年前からGreen Sigmaと呼ばれるダッシュボードを利用し、各国の拠点ごとのエネルギー使用量の見える化を実施。建屋ごとに、各部門、各フロアごとにどれぐらい削減できるのかといった取り組みを開始している。

 「エネルギー消費量を30分ごとに測定し、消費量が大きいフロアや部門については、関係者にアラートを出して、ウェブ会議を通じて問題の仮説を立てて検証し、解決策を出す仕組みとしている。これらは、Cognosを利用して開発したものであり、ユーザー企業がこの夏までに導入できるものでもある」とした。


Green Sigmaと呼ばれるダッシュボードウェブ会議を通じて課題解決を議論する

 なお、椎木専務執行役員は、「東日本大震災の影響として、3月の貿易統計によると貿易黒字が前年同月比で8割減となっており、さらに夏場の3カ月に20%の電力制約による生産活動の抑制が発生する場合、GDP水準は1.6%押し下げられ、結果として、26万人の雇用が減少することで税収が減少。国策も打ちにくくなるという状況が出てくる恐れがある。サプライチェーンの寸断や生産の遅れなどにより、需要に対して供給が追いつかない状況となっており、日本の経済環境はこれまでの需要を拡大するという環境から大きく変化した。デフレ傾向からインフレ傾向に転じる可能性もある」などと指摘した。

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(大河原 克行)
2011/5/17 16:52