マイクロストラテジー、年内にもBIクラウドを開始か?

モバイルBI、Visual Insightの先進性を強調


米MicroStrategyの副会長兼COO サンジュ・バンサル氏
BIにおけるクラウドの利点

 マイクロストラテジー・ジャパン株式会社は、2011年第3四半期(7~9月)にも、同社のBI(ビジネスインテリジェンス)プラットフォームを、クラウドベースで提供する計画があることを明らかにした。MicroStrategy 副会長兼COOのサンジュ・バンサル氏が、16日にマイクロストラテジー・ジャパン本社で開いた記者会見で語ったもの。

 日本でのサービス開始は、「現時点では公式なアナウンスはできないが」と前置きしながらも、2011年第4四半期(2011年10~12月)の可能性が高いとした。

 「まずは北米、欧州でクラウドサービスを開始し、適用状況をみたのちに、日本でのサービス開始時期を公式に発表したい。欧米でサービスを開始する次の四半期の可能性が高い」と語った。

 また、「現在、当社が提供しているオンプレミスのBIのすべてを提供することになる。オンプレミスで利用しているユーザーも、クラウド上で同等の機能を利用できるようになる」とコメント。「完全なBIプラットフォームをソフトウェア、ハードウェアを導入することなく、サービスとして利用できる。また、ユーザーの利用状況によって、ダイナミックに拡張性を実現できる。マイクロストラテジーの専門的な管理ノウハウを利用できることから、設定、最適化、アップグレード、チューニング、テクニカルサポートが一元的に提供されることになる」とした。

 バンサル氏は、「ビジネスインテリジェンスにおけるクラウドの利点は大きい。一日もかからずに使用を開始できるほか、設備投資が不要であり、使用した分だけの支払いで済む。また、セキュリティや拡張性の面でもメリットがある。新たなビジネスを開始する際にも、IT部門に依頼することなく、ビジネスユーザー側が自らの判断で、BIを利用できるようになる。電話一本で、簡単にBIを利用できる」などと語った。

 一方で、マイクロストラテジーにおけるクラウドビジネスの事業規模については、「現時点では明確にすることできない」と明言を避けた。

クラウドベース・インテリジェンス

 

モバイルBIをサポートする「MicroStrategy 9.2」

 MicroStrategyでは、最新版である「MicroStrategy 9.2」を、4月19日付けで発表。同製品に搭載される新機能についても触れた。

 このなかで、バンサル氏は、iPhoneやiPadで利用可能な「モバイルBI」について強調した。

 バンサル氏は、「スマートフォンやタブレット端末で利用することを前提としたモバイルBIに関しては、すでに150のプロジェクトが動いている。次の大きな波はモバイルBIである」と位置づけ、「コンピュータの市場は、メインフレームからミニコン、パソコン、デスクトップインターネットの世界を経て、モバイルインターネットの世界に進展しており、それにあわせてユーザー数を急激に増やしている。モバイルインターネットでは、全世界で50億のユーザーが利用している。また、iPhoneには7年前のPCと同じ機能が搭載されているのが実態だ」と、モバイルBIの環境が整い始めていることを語った。

 MicroStrategyが提供するモバイルBIでは、iPadやiPhoneにおいても、デスクトップ環境と同じ「分析機能」、「トランザクション機能」、「情報表示機能」を提供することが可能であり、「デスクトップと同様のグラフィックス表示をモバイルデバイス上で行うことができ、データベースへの書き込み、新規データの作成といったトランザクションの実行、動画や音声などのマルチメディアコンテンツの配信も可能になる」とした。

 iPhoneやiPadで利用可能なアプリケーションは、現在、AppStoreを通じて無償で提供しており、今年中には、Android対応のソフトウェアも提供する予定だという。

 「競合他社もモバイルBIを意識した展開を始めているが、MicroStrategyは、2年前からモバイルBIに投資を行っている。また、モバイルユーザーは、パフォーマンスを求め、それに対して敏感だが、その点でも他社以上のものを提供するための研究開発を行ってきた自負がある。さらに、アプリケーションを単一のプラットフォームで提供していることから、ダッシュボードにおいても、PC上とiPad、iPhone上で同じものが表示できるというのも他社にない強みだ」とした。

モバイルBIに対応したアプリケーション開発ツールも提供
Visual Insightによる表示例

 さらに、モバイルデバイス向けのアプリケーション開発のために、ポータブルアプリケーションページやテンプレート、デザインパレットを提供。テンプレートから数回クリックするだけで簡単なダッシュボードが開発できるほか、コーディング不要で、モバイルデバイスに最適化したインタラクティブなアプリケーションの開発が可能になるとしている。

 加えて、MicroStrategy 9.2に新たに搭載した機能として、Visual Insightを紹介した。
 従来のBIでは、データから洞察、発見するまで約1カ月を有していたものでも、30分程度で完了できるのが特徴だという。

 ビジュアライゼーションのタイプを選択したのちに、分析項目を選択。選択条件エリアから項目をドラッグ&ドロップし、フィルタで絞り込めば即座に結果が表示されるという仕組みだ。

 「分析項目をドラッグして追加した時点で、リアルタイムで結果が集計されることから、直感的な表示が可能になり、異常値も早期に発見できるほか、ユーザーの使い勝手にあわせたダッシュボードを作ることができるため、同じデータや同じ条件でも、エンドユーザー自身が必要に応じて表示形式を変更したり、自由にデータをドリルダウンし、表示することもできる」という。

 一方、同社では、Facebookに対応した無料アプリケーションであるWisdom.comについても触れた。

 同アプリケーションは、マイクロストラテジーが提供するもので、Facebookにおけるコンテンツを整理し、掲載内容とコンテンツを迅速に分析し、発掘することが可能。これを利用して、個人のコンテンツを分類したり、分析したりすることができる。

 「Facebookは、世界で5億人のユーザーが利用しており、一日に100TBずつデータが増加している。利用者は、すぐに10億人になるだろうともいわれている。CRMの観点からみて、Facebookの情報は非常に有益なものであり、当社も100人のエンジニアがかかわり、いかにこれに対応していくかを考えてきた。コンシューマが洞察できるものとして、無償で提供していく」とした。

関連情報
(大河原 克行)
2011/5/17 06:00