KDDIと3LM、Android向けセキュリティサービスで提携


握手するKDDIの石川氏(左)と3LMのモス氏

 KDDIと米Three Laws of Mobility(3LM)は、Android向けセキュリティサービスの提供に関し、提携することで合意した。3月1日には都内で記者会見が開催され、 KDDI取締役執行役員常務の石川 雄三氏やソリューション商品企画本部モバイル商品企画部長の中島 昭浩氏のほか、来日中の3LM CEOであるTom Moss氏から説明が行われた。


提携の概要

企業における課題

 今回の合意内容は、3LMが開発したAndroid搭載機器向けセキュアプラットフォームを用いた、セキュリティ管理サービスをKDDIが提供する、というもの。

 外出するスタッフに対して、ノートパソコンやスマートフォンを活用する企業においては、情報漏洩を防ぐ手段や、端末そのものに余計なアプリを追加しないなどのデバイス管理手段が求められる。こうした点で、BlackBerryやWindows Mobileは既に多くの実績があり、企業側にとっても導入を検討しやすい素地が整っている一方、登場から間もないAndroidはセキュリティ面での懸念が強い。

 KDDIでは、3LMが提供する技術を用いることで、デバイス管理、イントラネットへの安全な通信環境、端末内データの流出対策が実現できるとして、さらにKDDIの法人向けクラウドソリューションと組み合わせて、Android端末の法人利用を促進する考え。

 3LMのソリューションの一部は、アプリとして追加されるのではなく、Android Application Frameworkと呼ばれる部分に機能を追加するものの、Androidの互換性テストはクリアし、もともとのAndroidとの互換性を保っている。現時点で対応デバイスは存在せず、メーカーと3LMの方針により、3LMのソリューションは端末にプリセットされたり、通信経由で追加されたりする。 KDDIの夏モデルには、対応機種が含まれるという。


端末利用の管理、イントラネットへのアクセス、端末の紛失・盗難などがリスクそれらリスクへの対応策

 まずは8月からトライアルサービスが提供され、10月にも商用化される予定。法人向けの取り組みではあるが、ゆくゆくはコンシューマー向けの提供も検討していくとのこと。利用料についても、現時点では未定で、詳細は別途案内される。これまで提供されてきた法人向けの遠隔ロック、データ削除などのソリューションは、将来的に今回のソリューションへ統合される。

 説明を行った石川氏は「法人のスマートフォン市場については、2010年で176万台だが、2015年には548万台になると見られている。法人ユーザーが安心して使うには、セキュリティ面での課題を解決する必要がある。3LMは、Androidにおいて世界有数の技術力を持っている企業。KDDIのデバイスと3LMのセキュアプラットフォームで最強の組み合わせができると考えている」と述べた。

 さらに今回の提携によって、法人ユーザーが安心してAndroid端末を使ってビジネスを加速できる環境を提供したいと語る石川氏は、提携が生み出す価値として、Android端末を導入しやすい環境を整えること、KDDIのサービスと連携できること、Androidのソフトウェアプラットフォームレベルでセキュアにすることを挙げた。

法人市場の成長予測データ提携がもたらす3つの価値

両社の提携でAndroidにおけるセキュアな環境構築を目指す今後のスケジュール



鍵は3LM提供のソリューション

3LMのモス氏

 今回、KDDIが提携する3LMは、米モトローラ・モビリティの100%子会社。昨年7月に設立されたばかりだが、設立に携わったCEOのTom Moss(トム・モス)氏は、前職がGoogleで、アジア太平洋地域におけるAndroid事業を担当していた人物。日本へ1年半留学し、Google 時代は東京オフィスに勤務したとのことで、日本語も堪能だ。

 昨年設立された3LMは、設立直後にモトローラにアプローチされ、その子会社に。しかし「社内のITシステムも違うし、モトローラからは資金だけ提供され、3LMの事業は独立している」とモス氏は語る。Androidというオープンプラットフォームを全面的に採用するモトローラにとっては、Androidの用途が広がることが現時点で最も重要なミッションの1つであり、法人用途を拡大させる3LMは魅力的な存在。そうした背景もあり、 3LMは、モトローラだけではなく、HTC、ソニー・エリクソン、シャープ、パンテックとも提携パートナー契約を締結しており、さらに5つのメーカーが提携パートナーに加わるとしている。

 「Androidは、オープンだからこそ、モバイル向けプラットフォームの中でも最もセキュアだ。他のプラットフォームでは制限があり、アプリスペースでしか動けない。Androidはコードを直接インストールできる」と語るモス氏は、全てがオープンソースとなっているからこそ、3LMが提供するようなソリューションが実現し得ると説明する。


社名の由来は同社が掲げる「モバイル三原則」。顧客を守ること、導入企業自身を守ること。その上でユーザーが自由にモバイル端末を利用できること、だという同社のソリューションで実現できる点

 Androidのやや深い部分にタッチすることで、特定のアプリだけではなくそのデバイス上のアプリ全てのデータが暗号される、というソリューションを実現しているのは、現在のところ3LMのみ、とモス氏は指摘。こうしたソリューションが実現できた背景として、囲み取材に答える形で「いつかグーグルが実装するのではないか、と他社は手を付けず、グーグル側はいつかサードパーティがソリューションを提供するのではと考えていたと思う。(Android Compatibility Test Suiteによる)互換性確保が一番難しい部分。弊社は元グーグルのスタッフも多くいて、Androidの知識が多くある、ということも影響しているかもしれない」と説明。この点についてKDDI側は「前職の知見というよりも元グーグルのエンジニアということで、その高い能力で今回のソリューションを実現できたのではないか」としている。

 Linuxカーネルの上にあるDalvik VMと同じレベルのAndroid Application Frameworkに手を入れる、という仕組みが、端末のパフォーマンスに影響を与える可能性について、モス氏やKDDIは「3LMのソリューションでは、影響は一切ない」と断言した。また、Androidそのものが今後バージョンアップする場合は速やかに対応するとのことで、実際にAndroid 2.2から2.3への対応は、3日で完了した。さらにAndroid側でセキュリティを対応させるAPIなどが新たに取り入れられた場合、「それが企業のニーズを充分満たすものであれば、その機能を使うことになるだろう」(モス氏)とした。

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