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キヤノンITS、西東京DCを活用した付加価値型クラウドサービス「SOLTAGE」

 キヤノンITソリューションズ株式会社(以下、キヤノンITS)は、同社の西東京データセンターを活用したパブリッククラウドサービス「SOLTAGE」を、9月30日から提供開始する。また同時に、SOLTAGEの基盤を活用したプライベートクラウドの外販も開始する。

 これまでキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)向けの内需用サービスとして活用し、ノウハウを蓄積してきた「SOLTAGE」を、いよいよ外販することになり、キヤノンMJグループとしてのクラウドビジネスが本格化することになる。

 同社では、まずはIaaSとしてのサービスを提供するが、2016年7月以降は、SaaSおよびPaaSにも乗り出す予定も明らかにした。今後3年間で100社以上への導入を図る計画だ。

西東京データセンターを活用、付加価値を前面に打ち出すクラウド

 キヤノンITSでは、これまでにも、ホスティングサービスの「ホスティングSelect」や「ホスティングPro」を提供。さらに、2015年2月からは、Amazon Web Services(AWS)を活用したクラウドシステム構築サービスを提供してきた経緯がある。一方で、キヤノンMJグループ全体では、Salesforce.comやMicrosoft Office 365などのクラウドサービスを再販する、といった取り組みを行っている。

キヤノンITSのクラウドサービスの全体像

 今回発表したパブリッククラウドサービス「SOLTAGE」は、同社が持つ西東京データセンターを活用した新たなサービスで、付加価値を前面に打ち出した提案が特徴となる。

 西東京データセンターは、2012年10月に稼働。最高水準となるTier4の水準を達成しており、災害リスクやセキュリティリスクに対しても、万全の体制を整えている。これまで、キヤノンMJグループの基幹系・情報系システムを運用。2011年にリリースした「SOALTAGE GP」を基盤に、内需向けクラウドサービスを稼働するとともに、2015年4月には、これを「SOLTAGE GPC」や「SOLTAGE GSA」として進化させ、クラウドサービス運用のノウハウを蓄積してきた。

西東京データセンター(イメージ)
付加価値を前面に打ち出す

 「パブリッククラウドサービスとしての提供開始時期は、当初の計画よりは遅れたが、この間、データセンターとしての活用や、キヤノンMJグループ向けのクラウドサービスの運用により、クラウドアプリケーション開発、システム運用などに関する経験を蓄積してきた。運用費用の削減や、システムの安定稼働に対する知見も活用して、新たなサービスとして、パブリッククラウドを外販していくことになる」(キヤノンITS ITサービス事業本部 ITサービスマネジメント事業部 ITサービス事業企画部の中本浩二部長)とする。

キヤノンITS ITサービス事業本部 ITサービスマネジメント事業部 ITサービス事業企画部の中本浩二部長

 「SOLTAGE」では、インターネット接続回線、ネットワーク機器、仮想サーバー、ファイアウォールをセットで提供。ウイルス対策を重視し、仮想サーバーには、2003年から同社が国内総販売代理店として提供しているウイルス対策ソフト「ESET File Security for Linux / Windows Server」を標準装備した。

 また、ロードバランサー、ファイアウォール、スイッチを二重化構成としたほか、IPS(侵入防止システム)/IDS(侵入検知システム)は、オプションで対応できる。また、ストレージのインターフェイスとしてFC SANを採用し、パフォーマンス低下を抑制しているとのこと。

 さらに、西東京データセンター内のハウジングサービス、物理ホスティングサービス環境と、構内接続によるハイブリッド化を可能にしたほか、AWSとの連携も可能にしており、「インターネットを経由しないキャリア閉域網経由により、キャリアが提供するAmazon Direct Connect 接続サービスの利用が可能になる」という。

SOLTAGEの全体像

 「SOLTAGE」はプライベートクラウドとしても利用することが可能であり、「システム構築にあたり資産は持ちたくないが、クラウドサービスには懸念があるといったユーザーに対しても、パブリッククラウドとプライベートクラウド環境のハイブリッドな構築を可能にしたり、ハウジングサービスとクラウドサービスとを組み合わせた利用も可能になる。IT 部門の要員やスキルが不足しており、ベンダーに任せたいという場合にも、導入支援からシステム開発、運用、保守までをワンストップで対応できる」点も特徴だ。

 データのバックアップについては、同社の沖縄データセンターと連動。物理サーバー障害時のオートフェイルオーバー機能を標準装備することで可用性を向上させ、99.99%の高品質を実現しているという。

 「西東京データセンターの堅牢性と信頼性を生かすことで、金融分野やサービス、物流分野などにも積極的に提案していきたい。定期的なシステム監査が必要な市場領域においても、都心から一時間という西東京の立地を生かすことができる」(中本部長)。

 「SOLTAGE」では、基本パッケージとして、2コア(1GHz)のCPU、4GBメモリ、50GBのHDDによる仮想サーバーと、仮想サーバー向けウイルス対策ソフト、100Mbpsのベストエフォート共有インターネット接続回線、共有ファイアウォールの構成で提供。価格はオープンだが、参考価格として、初期費用3万円から、月額2万6100円から(いずれも税別)としている。なお、リソース追加オプション、機能拡張オプション、監視・運用オプションを用意。専用回線への対応も行う。

基本パッケージ

 販売は、キヤノンITSによる直販営業のほか、キヤノンMJが大手企業や中堅企業を対象に、またキヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)が中小企業を対象に、それぞれ営業活動を展開。キヤノンS&Sでは、全国200カ所の営業拠点に配置したクラウド担当者を活用した提案を行っていくという。

販売体制

 まずは、IaaSによるサービス提供となるが、2016年7月以降は、SaaSおよびPaaSにも乗り出す。

 「今回のIaaSの提供によって、開発環境を提供するとともに、システムパートナーが持つアプリケーションをSOLTAGEに乗せるための支援なども行っていきたい。これによって、システムパートナーとともに、SaaSへと取り組む体制を構築していくことになる」(中本部長)と、段階的にサービスを拡張していく姿勢をみせた。

 大手企業から中小企業まで幅広い販路を持つキヤノンMJグループが、自社のインフラを活用したクラウドサービスに本格参入することで、市場への影響が注目される。

大河原 克行