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日立、2014年度連結決算は増収増益、情報・通信システム部門など8部門が前期を上回り過去最高益を達成

日立 執行役副社長兼CFOの中村豊明氏

 株式会社日立製作所(以下、日立)は14日、2014年度(2014年4月~2015年3月)の連結業績を発表した。

 売上高は前年同期比2.1%増の9兆7619億円、営業利益は同11.6%増の6004億円、継続事業税引前当期純利益は同6.6%減の5356億円、当期純利益は同0.3%減の3627億円となった。なお今回、ASC205-20「財務諸表の表示-非継続事業」に従い、三菱重工との火力発電システム事業統合の際に三菱日立パワーシステムズへ継承せず、日立および連結子会社自身が運営主体となった火力発電システム事業の一部に関する損益は、非継続事業とした。これにともない、2014年度で非継続となった事業について、前年度の数値を一部組み替えて比較している。

2014年度の連結業績
2014年度の営業利益の増減要因

 売上高については、火力発電システム事業を三菱日立パワーシステムズに統合したことなどの事業再編の影響はあったものの、社会・産業システムや高機能材料、情報・通信システム部門などが前期実績を上回った。営業利益では、社会・産業システム、高機能材料、電子装置システム、情報・通信システム部門など8部門が前期実績を上回り、過去最高益を更新した。

 営業利益の増減要因について、日立 執行役副社長兼CFOの中村豊明氏は、「事業再編の影響による210億円のマイナス、事業開発投資による300億円のマイナスを、Hitachi Smart Transformation Projectによる1000億円の効果でカバー。成長のための人件費および償却費増加による750億円のマイナスは、M&Aの効果も含めた事業規模拡大による900億円のプラスで回収した。また、為替影響による300億円のプラス、大規模プロジェクトのコストアップ影響が収束したことによる160億円のプラスが出たが、電力・通信・建設機械部門での480億円のマイナスで相殺された。この結果、前年同期比621億円の増益となった」と説明した。

2014年度の国内・海外売上高
2014年度の事業部門別の業績

 国内売上高は前年同期比2%減の5兆1724億円、海外売上高は前年同期比8%増の4兆5895億円。海外についてはアジア、北米、欧州のビジネスが好調に推移し、海外売上高比率は47%となった。

 事業部門別の売上高では情報・通信システムの売上高が、前年同期比5%増の2兆321億円、営業利益は前年同期から96億円増の1162億円、EBITは同26億円減の936億円となった。

 また、情報・通信システム事業部門のうち、システムソリューションの売上高は前年同期比5%増の1兆1997億円、営業利益が同44%増の683億円。プラットフォームの売上高が同8%増の8905億円、営業利益が同6%増の551億円。通信ネットワークの売上高が同77%減の1667億円、営業損失が前年の69億円の黒字から、75億円の赤字となった。ストレージソリューション事業は、売上高が前年同期比10%増の4850億円となった。

 通信ネットワーク事業が減収となったものの、公共システムや金融システムを中心としたシステムソリューション事業が好調に推移したことや、2014年3月にインドのプリズムペイメントサービス社および日立システムズパワーサービスを子会社化した影響に加え、ストレージソリューション事業が為替影響により増収になったことなどにより、部門全体では増収となった。「公共システムについては、マイナンバー関連の案件が事業をけん引した。金融システムは、メーカーや保険関連企業における戦略的IT投資が増加した」(中村氏)としている。

 電力システムの売上高は前年同期比45%減の4726億円、営業損失は前年同期から283億円減の61億円の赤字。社会・産業システムは売上高が前年同期比10%増の1兆6468億円、営業利益は前年同期から256億円増の847億円。電子装置・システムは売上高が前年同期比1%増の1兆1323億円、営業利益は前年同期から103億円増の694億円。建設機械は売上高が前年同期比2%増の7799億円、営業利益は前年同期から191億円減の547億円。高機能材料は売上高が前年同期比10%増の1兆5045億円、営業利益は前年同期から212億円増の1230億円。

 オートモーティブシステムの売上高は前年同期比5%増の9369億円、営業利益は前年から87億円増の561億円。生活・エコシステムは売上高が前年同期比5%増の7801億円、営業利益は前年同期から81億円増の279億円。その他(物流・サービス他)は売上高が前年同期比13%減の1兆2107億円、営業利益は前年同期から96億円増の404億円。金融サービスは売上高が前年同期比5%増の3555億円、営業利益は前年から49億円増の380億円となった。

 一方、事業グループ別の業績は、情報・通信システムの売上高が前年同期比6%増の2兆6988億円、営業利益が前年同期から149億円増の1379億円。インフラシステムの売上高は前年同期比6%増の3兆5593億円、営業利益は前年同期から440億円増の1820億円だった。

2015年度の連結業績予想

 2015年度(2015年4月~2016年3月)の連結業績予想については、売上収益が9兆9500億円、調整後営業利益は6800億円、EBITは6200億円、継続事業税引前当期利益は6000億円、継続事業当期利益は4540億円、当期利益は4500億円とした。なお、同社は2015年度からIFRSを任意適用するため、業績予想もIFRSで開示している。

 事業部門別の業績予想は、情報・通信システムは売上収益が2兆1000億円、営業利益は1580億円。社会・産業システムは売上収益が2兆1400億円、営業利益は1310億円。電子装置・システムは売上収益が1兆1800億円、営業利益は760億円。建設機械は売上収益が8000億円、営業利益は500億円。高機能材料は売上収益が1兆6700億円、営業利益は1460億円。

 オートモーティブシステムは売上収益が1兆円、営業利益は680億円。生活・エコシステムは売上収益が6500億円、営業利益は180億円。その他(物流・サービス他)は売上収益が1兆2200億円、営業利益は430億円。金融サービスは売上収益が3700億円、営業利益は410億円とした。

 2015年度の経済環境について中村氏は、「資源・原油国を中心とした経済成長鈍化のリスクなど、不透明な状態が継続する」との見解を述べ、「その中で、社会イノベーション事業を軸としたグローバル市場での成長拡大を図るとともに、経営基盤強化に向けた改革を推進し、さらなる成長を目指す。事業部門別では、中国市場の低迷が続く建設機械、空調事業再編の影響が出る生活・エコシステム、その他(物流・サービス)の3部門が減収減益となるが、全体では増収増益を見込んでいる」との見通しを示した。

唐沢 正和