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IoT世界市場、2030年に14兆ドル規模の可能性!~Accenture調査

 Accentureは21日(スイス時間)、IIoT(Industrial Internet of Things)に関する最新調査結果を発表した。これによると、IIoTは2030年までに世界で14兆2000億ドルの市場になりうることが明らかになった。しかし、企業や政府は新たなデジタル技術を活用するための十分な対策を講じていないため、IIoTの持つ潜在的な利益を喪失する恐れがあると指摘している。

2030年に14兆ドル市場の可能性

 同社の最新調査「IIoTによる成功(Winning with the Industrial Internet of Things)」で報告されたもの。IIoTは端末や機器が知能的につながることで新たなデジタルサービスやビジネスモデルを可能にするものであり、特に成熟市場の経済に大きな成長をもたらすと期待されている。

 IIoTへの資本投資とそれに伴う生産性の向上によって、米国では2030年までのGDP(国内総生産)の累計値は6兆1000億ドル分増加する見込み。仮に米国がIIoT技術に対して50%多くの投資を行い、IIoTを実現させるためのスキルやブロードバンドネットワークなどを強化させた場合は、この数字が7兆1000億ドルに跳ね上がる可能性もあるという。

 日本も同様に2030年までのGDPが9600億ドル増加する見込みで、追加施策により1兆1000億ドルとなり、日本のGDP予測を1.8%増加させる可能性がある。追加施策を前提にした場合、ドイツでは7000億ドル、イギリスでは5310億ドル、中国では1兆8000億ドルの増加となる。

IIoTがGDPの累積値に与える効果(日本)

経済的潜在力を発揮するために

 これらにより、「IIoTは2030年までに14兆2000億ドルの世界市場になりうる」という。ただし、あくまでも追加施策ありきの試算で、実際には世界の1400人以上の経営幹部に調査した結果、73%の企業はIIoTを活用する具体的な計画を作成しておらず、包括的な投資戦略を持つ企業も7%に過ぎないなど、追加施策によってもたらされる経済成長が危ぶまれているのが現状という。

 IIoTへの取り組みが進まない大きな理由は、「新たな収益源を生み出す難しさ」にあると判明。半数以上(57%)の経営幹部が「IIoTの魅力は新たな収益機会の創出である」と述べているのにもかかわらず、「IIoTを活用して実際に収益を上げる見込みがある」と回答した経営幹部は、1/7(13%)だった。「収益を上げる見込みがある」と回答した企業も、IIoTで効率を上げることに重点を置いており、「従業員の生産性向上」(46%)や「運営コストの削減」(44%)が、IIoTの活用による最も実現性の高いメリットと考えているようだった。

 Accenture CTOのポール・ドーアティ氏は「IIoTは生産性向上とコスト削減にとどまっているが、企業が新たな市場や収益源を創造するためにデータの価値を引き出せれば、IIoTの経済的潜在力を完全に発揮できる。ビジネスは根底から変わり、たとえば競合企業との協力、異業種との提携、組織構造の再設計、新たなスキル・人材への投資といった変革起こる」と述べている。

主要20カ国のIIoT整備状況

 調査では主要20カ国の経済を分析し、国別にIIoTの整備状況も報告されている。先進的な国は米国、スイス、北欧諸国、オランダとする一方、多くの国でIIoTの活用を迅速に進めるための環境整備が不十分と指摘し、スペイン、イタリア、ロシア、インド、ブラジルが最も不十分と指摘した。

IIoTを実現する要因の国別ランキング(指数)

企業が着目すべき3つの分野

 また、IIoT活用を促すために企業が着目すべき分野として「業界モデルの再考」「データ価値の活用」「新しい働き方への対応」の3点を挙げる。業界モデルの再考では、たとえば農薬メーカーならば、ソフトベンダー、気象データ提供企業、衛星運営企業と協力し、特定の地域および条件下の作物の収量を増加させるといった取り組みが求められる。製造業ならば、3Dプリント技術によって顧客に近いところで製造できるため、業務を分散させる必要が生じるという。「新しい働き方への対応」としては、データアクセス増加に伴い、現場労働者の意志決定を支援するための分散型作業環境が求められ、創造的な協働を可能にするため、新たな組織構造が求められるとしている。

川島 弘之