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SAPジャパンの福田譲新社長が所信表明、「社会を変える存在に」

代表取締役社長に就任した福田譲氏

 SAPジャパン株式会社は18日、代表取締役社長に福田譲氏が就任(7月28日付け)したことを受けて記者会見を行った。

 福田社長は「変革を目指す、すべての方々のパートナーであり続け、さらに、会社を変え、社会も変える」と宣言。また「日本のお客さまが経営や業務を変革する上で重視しているのは、グローバライゼーション、トランスフォーメーション、イノベーション。この3つの取り組みに貢献できるプロの集団になりたい。本気で世界で勝ちたいと考えている企業、ワールドクラスの競争力を身につけたい企業を支援したい。また、日本企業の得意科目は改善だが、改善のレベルを超えたトランスフォーメーション、イノベーションは不得意な分野。SAPはこれを解決できる能力を身につけて、日本の企業に貢献していきたい」と語った。

 さらに「これまでのSAPは、会社を変えるという企業に対してお手伝いをしてきた。これはいままでと変わらない。だが、今後は社会を変えるというところにまで乗り出したい。よりよい社会の実現に貢献できる、あるいは居てもらわなくてはならない企業になりたい」と述べた。

 具体的な施策については、「グローバルインダストリービジネスユニット」、「クラウド」、「SAPジャパンのグローカリゼーション」、「ERPへの再フォーカス」、「プラットフォーム/テクノロジー」の5つの観点から説明した。

5つの施策・フォーカス

 SAPジャパンのグローカリゼーションでは、「お客さまからは、SAPジャパンは日本市場における販社であり、われわれはSAP本社と付き合っていると言われることがある。しかし、この考え方を根底から変えたい。その取り組みのひとつとして、グローバルのタレントを日本に転勤させる。また、日本人社員を積極的に海外に出していく。これまでは、日本法人における外国人の採用は、マネジメントや技術サポート部門に限られていた。営業部門、営業技術部門、実装を行うコンサルティング部門にも外国人を登用し、海外の先進事例を積極的に日本に導入する」とした。

 グローバルインダストリービジネスユニットの実現に関しては、「グローバルの知見を最大限活用したいという業界がある。中でも、公益、自動車、保険が重点業界。海外からの人材の招聘を行い、本社の開発部門と連携し、グローバルインダストリービジネスユニットを構成したい。公益ではすでに外国人の招聘が進んでおり、自動車では、ドイツから数人を呼び寄せる考えである。保険は検討に入っているところであり、これ以外の業種についても考えている。グローバルでも、日本は重要な市場という認識であり、グローバル人材の確保には優位である。これにより、従来以上に提案力を強化し、実装力をあげていく」と語る。

 ERPへの再フォーカスについては、「SAPのERPを導入していないユーザーにとっては、なにが導入の障害になっているのかをあらためて洗い直しているところである。ここはパートナーとともにアプローチを行っていく。日本におけるSAP HANAのデータセンターを活用し、これまでとは違ったアプローチにより、新たなEPRの提案を行いたい」と述べた。

 さらに、プラットフォーム/テクノロジーでは、ERP関連市場への展開に加えて、パートナーとも連携を強化。「スタートアップ企業との連携を含めて、共同開発なども行っていく」とした。

 クラウドへの取り組みでは、一つ目の例として、既存のオンプレミスERP環境をクラウド化することをあげ、「情報システムを動かすことそのものに体力と費用を費やしているお客さまに対して、クラウドをきっかけにアプリケーションレベルまで見直しをかけて、全体を身軽にし、目の前の仕事から解放させ、本来期待されている機能に力を振り分けることができる提案をしたい」と語った。もう一つは、SaaSへの取り組み強化だとする。「スピード感と柔軟性を持ったクラウドの特徴を、日本の企業の経営に生かしていきたい。また、クラウドによってビジネスをシンプルにできると考えている。すでにクラウド化している領域では、人事、調達、デジタルマーケティング、営業、中小企業向けERPなどがある。これらの取り組みの上で、サブスクリプションモデルも用意していく。クラウドは来年度以降の投資計画にも反映していきたい」と語った。

Run Simple.=Cloud+SAP HANA

 SAP本社では、クラウドへの移行に伴って、中期経営計画の売上高達成時期を後倒しにすることを明らかにしており、「自らの意志で、クラウド化を進めようと考えている」とした。

 さらに、「これらの5つのテーマはすべてが絡み合っている。日本の会社にとって必要とされる会社になりたい」としたほか、「社員に対しては、『思いを形に』というメッセージを送った。今後、思いを形にしたものを報告できるようにしていく」と述べた。

 今後の事業成長については、「現時点で具体的な数字を出すことはできないが、SAPジャパンが影響力を維持するには、グローバルを上回る成長を遂げていく必要がある」とした。

福田氏の略歴

 福田氏は、1975年1月、千葉県柏市出身の39歳。1997年3月早稲田大学教育学部社会学科卒、2006年10月にINSEAD Regional Management Development Program修了、2012年8月には慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應大学ビジネススクール)高等経営学講座修了。

 1997年4月にSAPジャパンに新入社員として入社。「同期入社の100人のうち、営業に配属された5人のうちの1人。当時はUNIXで基幹システムが動くのかといわれた時代だった」と振り返る。

 2002年4月以降、化学/石油業界大手顧客担当、中堅/中小顧客担当、食品/消費財/医薬/小売り大手顧客担当の各営業部長を歴任。「2、3年波風を立てずに退任できればいいという大手企業の経営者が多いなか、次世代に向けてERPに対して投資を行うという、本気で変革に取り組む経営者に学ぶことができ、それがいまの私の物事の考え方につながっている」などと語る。

 中堅・中小企業向けには、業界ごとのテンプレートの品ぞろえに取り組み、さらにテンプレートにとどまらずに、フレームワーク全体で提案し、短期間での導入を図るといった取り組みを行ったほか、小売業界を担当した際には、ドイツ本社の担当者とスーパーの店頭に立ち、日本の消費者が毎日店に通って食料を購入するという習慣があり、そのために特売という仕組みがあることを理解させ、日本市場向けのタグモジュールの開発を行ったという経緯もあった。

 2007年にはプラットフォーム製品事業を統括するバイスプレジデントに就任し、ミドルウェア、BI、経営管理ソリューション事業や、SAPが買収したビジネスオブジェクツの日本法人の統合を指揮した。2011年からは特定戦略顧客、流通・サービス業、通信・メディア業などの営業部門長を歴任し、2014年1月には、プロセス営業統括本部長に就任していた。

 「まっすぐという言葉が好きであり、3人の子供の名前にもそれをつけている。社長としてもそのその姿勢を貫きたい」とした。

 また、新入社員からの生え抜き社長であることについては、「私はマスオさんではない。他人の家にお世話になっているのではなく、SAPジャパンが私のホーム。これまで通り、遠慮なく、主義、主張を通していきたい。周りに気をつかうことなく、やりたいようにやる。それがよい点である」と語った。

大河原 克行